ブランディングで売上は伸びるのか?理論と実践を行き来し続けるミルボン竹渕さんの5年間の軌跡

  • 関東

美容室専売の化粧品メーカーとして国内トップシェアを誇り、堅調な成長を続けている株式会社ミルボン。『Aujua』『elujuda』など、美容室にて同社の商品を手にとった経験のある方が多いのではないでしょうか。

今回はそんなミルボン社のブランド戦略グループ統括マネージャー竹渕祥平さんより、約5年間にわたるコーポレートブランディングのプロセスをたっぷり語っていただきました。これからブランディングを強化したいとお考えのみなさま、ぜひご覧ください。

知名度の高さ=ブランドの強さではない

アナグラム

竹渕さん、お時間いただきありがとうございます!本日は「ブランディングは大事なんだろうなぁ……」と思いながらもなかなか行動に移せていない全国のみなさまを代表しまして、私からいろいろと質問させてください!

takebuchi

Marketeerのことは阿部さん(アナグラム代表/Marketeer初代編集長)からよく話を聞いていたので、こうして取材いただけて光栄です。よろしくお願いします。

アナグラム

よろしくお願いいたします!現場でどのようにブランディングを実践されてきたのか、エピソードを中心にお聞きしますね。失敗談なんかも教えていただけると大変嬉しいです。

takebuchi

失敗談、たくさんありますよ。ブランドのガイドラインを整備したときになんでもかんでもダメ出しする“風紀委員モード”に入ってしまい社員から煙たがられたり(笑)、まあまあ予算をかけて作ったアーティスティックなクリエイティブをInstagramに投稿したら全然エンゲージメントがつかなかったり……。ブランディング担当って、ついイケてる感じを出したくなるんですよね(笑)

アナグラム

さっそく失敗経験をシェアいただきありがとうございます!そんなご経験もあったとは……。一気に竹渕さんとの距離が縮まった気がします(笑)

takebuchi

あとは、認知度と知名度のちがいを理解しておらず、あやうく社名をひたすら連呼するような広告を出そうとしたこともあります。認知度と知名度のちがい、ご存じですか?

アナグラム

え……考えたことがなかったです……!(汗)いったいなんでしょうか?

takebuchi

たとえば、日本人であればみな都道府県名は知っていますよね。つまり『知名度』はどの都道府県もほぼ同じ。しかし県名を聞いて具体的なイメージが思い浮かぶ県は限られています。Googleで画像検索してみると、観光地として人気の「京都府」「沖縄県」は美しい景色が並ぶ一方、多くの県は地図しか出てこない。すなわち京都や沖縄よりも『認知度』が低い状況といえます。

中身がないまま知名度を上げ続けてもブランドにはなりません。「京都といえば紅葉とお寺」「沖縄といえば青い海と空」のように、「◯◯といえばこんなイメージ」と頭に思い浮かぶことが大事です。さらに次のフェーズでは「紅葉狩りといえばどこ?→京都」「青い海と空といえばどこ?→沖縄」のように、純粋想起をとっていく。認知と想起の両方をどう作り上げていくのか考えるのがブランド戦略です。

アナグラム

なるほど!つまりブランディングとは会社や商品に対してなにかしらのイメージが紐づいた状態を目指す、ということですね。

takebuchi

これからブランド・ブランディングの話をしていくにあたり、あらかじめ「ブランドとは?」の話をしておきましょうか。コトラーやアーカー、ケラーなどブランド戦略論をまとめた先人の言葉を踏まえたうえで私なりに解釈すると、ブランドとは「人の頭の中で感情的に定着した、モノやサービスの意味と価値の組み合わせのこと」。その商品は何者で、どんな価値を提供してくれるのかが頭の中で連想されなければブランドとは言えません。

また、ブランディングとは 「ブランド自身が “何者か” “何を提供できるのか” を伝えたり、その体験を提供したりする一貫した活動」で、結果として意思決定を単純化させて選ばれる確率を高めることだと私は考えます。

ブランディングで売上は伸びるのか?

アナグラム

「結果として選ばれる確率を高めること」とありますが、竹渕さん、ちょっとここでストレートな質問をしてもよろしいでしょうか。ブランディングで売上は伸びますか……!?

takebuchi

これからブランディングを強化したいみなさんは気になるところですよね。率直に回答しますと、ブランドは長期的に売上を伸ばし続ける経営資産となります。ただし1〜2年の売上で見ればインパクトは大きくないかもしれません。よい商品と強い営業組織があり、チャネルさえ抑えてしまえばブランドなんて意識しなくとも売上を伸ばせることは多いじゃないですか。目の前の売上へダイレクトに影響するのはやっぱりセールスとマーケティングですよね。

しかし、よいマーケティング活動をおこなっていたとしても、マネーゲームで競合他社にチャネルを奪われてしまえば途端に負けてしまう可能性があります。仮に競合他社にすべての商品棚をおさえられても「やっぱりコレがいい」とお客様が探してくれる商品になるためには、ブランドの魅力が必要なんですよね。
また、ブランドは顧客から選ばれる確率を上げてくれるだけでなく、社員のモチベーションUPや協力会社さんとの信頼関係の強化にもつながります。
よって短期的に売上を伸ばしたいなら「どうやって商品を買ってもらうか?」と仕組みを考えるマーケティングに注力すべきですし、中長期的に会社を成長させたいのなら、マーケティングとブランディングを両輪で回していくことが重要だと思います。

アナグラム

竹渕さん、ありがとうございます!なんとなく大事そうだと思っていたブランディングの必要性、しっかり腹落ちしました。……ブランドとはなにかがクリアになったところで、ここからは竹渕さんが実践してきたコーポレートブランディングについてお聞きします!

理論と実践、行き来することで再現性を上げる

アナグラム

もともと竹渕さんがブランドに興味をもった最初のきっかけはなんだったのでしょうか?

takebuchi

私の略歴は2004年新卒入社で営業→商品企画→ブランド戦略なんですが、商品企画を担当していたころ、弊社より小規模の販売体制にもかかわらず急成長した競合製品が現れたんですよ。当時私が担当していたスタイリング剤(写真参照)と激しいシェア争いをしました。「いったい我々とこの会社はなにが違うんだろう?」と調査した結果、商品開発のアプローチが異なることがわかったんです。

ミルボンでは昔から「お客様に支持され繁盛している美容室の美容師さんとタッグを組んで商品を開発する」という独自のスタイルをとっています。トップアスリートと共同でおこなう商品開発に近いですね。一方で競合は、「我々はこういう価値を提供する会社だ」と最初に宣言し、その世界観のなかで商品を作っていました。

アナグラム

(ブ、ブランド意識が高いライバルの出現ッ……!)

takebuchi

「なんか話題になっている。でもどうして顧客に支持されているのかが言葉できちんと説明できない……」と悩んでいたとき、「課題を論理的に整理するにはブランディングについてきちんと勉強したほうがいいんじゃない?」と社会人大学院を勧めてくれた友人がいたんです。こうして大学院への入学を決意しました。そこで恩師となる田中洋先生(日本マーケティング学会 第2代会長)と出会い、2年間働きながらブランド論とマーケティングについて必死で勉強しましたね。これがブランドに興味をもった経緯です。

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働きながら社会人大学院に通っていたんですね……!アカデミックな理論をガッツリ学ばれた結果、仕事にはどのような変化が起きましたか?

takebuchi

いったんは頭でっかち期に入りましたね。「ブランド・エクイティが……」「パーパスな思想でないね」なんて社内で横文字を使いまくるイタい時期がありました(笑)しかし理論を知っているだけでは実践に活かしづらいと感じ、続けてプランニングも学びにいったんです。コピーライターの阿部広太郎さんが開いている『企画メシ』という講座なんですが、ここには非常に長けたプランニングをする20代の若者がたくさんいました。当時35歳だった私はカルチャーショックを受け、ようやく頭でっかち期を抜け出すことに成功します。自分で仮説を立ててフレームワークで整理して、実践して、違うと思ったらまた仮説に戻って……と、理論と実践をある程度行き来できるようになりましたね。

……理論と実践って、よくTwitterでもバトルが起きるじゃないですか。アカデミックな知識を身につけてきた人は理論をちゃんと学べというし、実践寄りの人はそんなことより現場で成果を出せと言う。私は両方とも大事だと思います。というのも、理論と実践を行き来しないと再現性が生まれないんですよね。ブランディングは長期的に続けなければ意味がないので、属人化させずに組織内で再現性をもたせることが重要です。私自身、まだまだ理論の学びが足りていませんし、実践した経験も多くありません。先人から学ぶことがたくさんあると感じています。

アナグラム

竹渕さんがそうおっしゃると重みがありますね。まずはブランディングの理論もしっかり学んでみようと思います!

企業が提供する価値と、お客様が感じる価値の重なりを見つけていく

アナグラム

理論と実践を行き来できる万全の状態で、いざ実際におこなったブランディング施策はなんでしたか?

takebuchi

まず取り組んだことは2つです。現状把握のためにお客様と社員に対してミルボンのブランド調査をおこないました。いざ結果を見てみると社員↔お客様間には明確にギャップがありましたね。私たちは自社に対して「プロフェッショナル」「洗練された」「品質が高い」といったイメージを持っていたんですが、お客様にとっては「安心感」「信頼」「親近感」といったイメージが強かった。また、自分たちにとっては当たり前だった「ミルボン=美容室のヘアケアブランド」という認知が想定以上に低かったんです。やはりブランドの現在地を客観的に知ることは非常に重要だと感じました。

アナグラム

その後は企業が意図するイメージに寄せていく、のでしょうか?

takebuchi

弊社の場合はどちらか片方に寄せるのではなく、我々が伝えたいブランドのイメージとお客様が持っているイメージの間に橋がかけられる場所を見つけて、適切なバランスを探り続けています。「安心感」「信頼」「親近感」はお客様がすでに価値に感じてくれていることなので資産として活かしますが、決して迎合はしません。企業の理念やミッションのあり方と、お客様の頭の中における感じ方の重なりを作っていくのがブランディングの難しさであり、やり甲斐です。

たとえば冒頭で「アーティスティックなクリエイティブをInstagramに投稿したら全然エンゲージメントがつかなかった」と話しましたが、これはまさに我々が見せたいイメージに寄せ過ぎて失敗した事例です。一方でお客様側に寄せ過ぎると、「おすすめのヘアケア商品10選」といったお役立ち系コンテンツばかりになってしまう。……こんなブランドにあまり魅力を感じられませんよね。

やっぱりビューティーブランドには「安心感」だけではなく「あこがれ」の要素がいると思うんですよ。それはお客様に聞くだけでは作れません。遠すぎず、近すぎず、半歩先の立ち位置を目指せるように試行錯誤しています。

アナグラム

なるほど……!ミルボン社の場合、ブランドはお客様の半歩先、なんですね。

takebuchi

また、2つめはそもそも我々は何者なのかを再定義し、ロゴ・スローガン・コーポレートカラーなどフォントからデザインまでを取りまとめたブランドガイドラインを作りました。ブランディングはブレない一貫性が重要なので、ルールの明文化は欠かせません。こちらは社長自身が発起人であり、当時の上司とともに全社を巻き込んで進めた2年がかりの大型プロジェクトです。

2015年以前のミルボンは「美容室の黒子であれ」「自分たちが表に出るなんておこがましい」という考え方が根強くありました。しかし誰でも情報を受発信できるような時代になったことで、お客様自身が自然と我々のことを直接調べてくれるようになったんです。「Aujuaを取り扱っているからこの美容室は安心してヘアケアの相談ができそう」と思ってくださる方が少しずつ増えてきた。となれば、「ミルボンとはこういう会社です」と表に出て伝えていったほうが美容室にとってもプラスだよね……ということでブランドのあり方を再定義することになりました。

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「全社を巻き込んだ」とのことですが、このブランド強化の波に他の社員のみなさまは無事ついてこれていたのでしょうか……?反発などはありませんでしたか?

takebuchi

反発まではいきませんが、ブランドガイドラインを決めた際に「一貫性ってなに?もっと自由にさせてほしい」と感じた営業メンバーはたくさんいたでしょうね。ミルボンはまさによい商品・強い組織の力でコーポレートブランドを意識しなくとも売上を伸ばしてきた会社です。「私自身がブランドだ!」と言わんばかりの勢いある営業メンバーが多いんですよ(笑)過去の私もまさにそんな営業の一人でした。

しかしミルボンとして一貫性を意識して世の中に情報を発信しはじめた結果、「ミルボンさんが積極的に認知を広げてくれているおかげで、美容室の信頼性が高まって助かっています!」という声が美容師さんを通じて社員に跳ね返ってくるようになったんです。そこでようやく「ブランドって大事なんだな」と社員の意識が変わっていったように感じていますね。

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お客様の声なら営業メンバーの心にもグッと響きそうですね。非常に理想的だと感じました!

情報だけでなく「体験」にブランドらしさを

アナグラム

いま、竹渕さんが注力しているブランディング施策はどんなものですか?

takebuchi

オウンドメディアやSNSアカウントの運用、交通広告などを通じて「ミルボンは美容室を通じて美しい生き方を応援するブランドです」とステークホルダーに想起してもらうコミュニケーションを5年ほど継続してやってきました。「ミルボンといえば○○」「美容室のヘアケアブランドといえばミルボン」を頭の中に定着させるための活動ですね。

たとえば昨年公開した『美容室の帰り道』という動画は、社内や美容師さん、そして美容室のお客様にとても好評でした。「ミルボンらしい企画ですね!」と、コーポレートブランディング冥利に尽きる声をいただいてます。

takebuchi

加えて現在は、「どうしたらミルボン製品を “体験する” ときにブランドらしさを感じてもらえるか?」を考えながら企画を動かしています。

広告・コミュニケーションはもちろん効果があります。しかし頭の中にブランドらしさを想起してもらうには、「情報を届けること」はどこまでいっても「体験すること」「実感すること」に劣ります。広告・コミュニケーションだけでは本質的にブランドを強くすることはできないと、理論と実践を行き来するなかで学びました。

そうして行き着いたのが『milbon:iD』というECの立ち上げでした。ECですがブランド直販ではなく、あくまでミルボンはプラットフォームであり、美容室がオンラインストアを出店する仕組みです。お客様は美容室で登録しないとミルボン商品は購入できません。弊社の商品は決して安い金額ではないので、お客様が自己判断で購入してマッチしなかった場合、商品への信頼が失墜してしまうんですね。それを避けるために、こうした珍しい仕組みを採用することにしました。

このECを利用してくださった方には、「我々ミルボンは “美容師さんを通じて” 美しい生き方を応援します」というメッセージをより強く感じてもらえるのではないかと思っています。商品を “使う体験” ではなく、 “購入する体験” にもブランドらしさを感じてもらおう、という試みですね。

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たしかにこのECを初めて知ったとき、「ミルボンさんは美容室を通じて商品を提供することに徹底的にこだわるのだな……」と強く記憶に残りました。また、ブランド戦略グループなのに新規事業の立ち上げまでやってしまう竹渕さん、パワフル過ぎます!(涙)5年間の奇跡、たっぷり語っていただきありがとうございました!

「うちブランディング弱いっすね」で会社は変わらない

アナグラム

ここから、今後ブランディングを実践していきたい人へいくつかアドバイスをいただきたいと思います。私たちはいざなにからスタートするとよいでしょうか?

takebuchi

自社がたどってきた道ではありますが、やっぱり最初にやるべきはお客様と社員へブランド調査をおこなうことだと思います。そして“我々は何者か”、“どんな価値を提供したいのか”を明文化しましょう。適切な調査は地図のように道しるべとなってくれます。現在地がわかれば適切な仮説をもってブランディング施策を進められますが、むやみに施策を打てば予算のムダにしかなりません。流行っているからブランドムービー作ろうとか話題のイベントとタイアップしようとか、これらは企画担当者が少し楽しいだけで残るのは請求書と虚無だけです。

アナグラム

残るのは請求書と、虚無……!!!(涙)

takebuchi

その後の一手はいろいろと考えられます。プロダクト・サービスを磨くのは前提として、ブランドコミュニケーションを試行錯誤する場所としておすすめなのは交通広告(企業広告)とSNSです。交通広告はマス広告より比較的少ない予算で、社員とお取引先へ「企業のブランド力を高めていく活動を強化します」というメッセージを伝えることができます。ミルボンも交通広告をやってみた結果、一番喜んでくれたのは社員のご両親でした。私も「ミルボンの広告を見たよ」と母からLINEがきましたね。

また、SNSは最も気軽に投稿できますし、リアクションが即時にわかるのでおすすめです。自社が提供したい価値とお客様が求めている価値の最適なバランス感はどこなのかスピード感をもって仮説検証しながら、SNSで得たヒントを別の施策に展開していくのがいいのではないかと思います。

アナグラム

……ちなみに、上記含めブランディング施策には経営者の理解・協力が欠かせないと思うのですが、現時点であまりその気がない場合どのように巻き込んでいくとよいでしょうか?

takebuchi

(ある程度年次が経過しているブランドの前提で)まずはイメージ調査を自分の身の回りで可能な範囲でおこなって、イメージにギャップがあることを経営陣にちゃんと伝えますかね。そうすると「うちの会社の強み、全然伝わっていないじゃないか!」ってなると思うんですよ。こうして健全な危機感を煽ってあげることが大事だと思いますね。

さらにそのギャップに対して自分なりの解決策をきちんと提案すれば、「そこまで考えているならやってみなよ」と背中を押してくれる気がします。実際に私もそうやって一歩ずつ進んできました。一つだけ言えるのは、調査や考察がないまま「社長、ブランド強くしましょうよ」「うちブランディング弱いっすね」みたいな話を飲み会で雑談しても、絶対に会社は動かないということです。こういう口だけの人って正直多いですよね(苦笑)

アナグラム

めちゃめちゃ多いと思います(涙)

takebuchi

実は私も入社してすぐは口だけの批評家タイプの人間だったんですよ。「うちの商品デザイン、ここがあまりよくないと思います」なんて偉そうに言っていました。しかし偶然それを聞いていた社長から「課題を感じたのなら解決策を考えるまでが仕事だな」という言葉をもらい、以降は課題提起と解決策の提案はセットでおこなうことを徹底するようになりました。

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社長の一言、グッときますね……!竹渕さんから見て、ブランディングを推進する人に求められるスキルやマインドはなんだと思いますか?

takebuchi

途中でお話しした「理論と実践」は両方大事ですね。ブランドを担う立場なら、先人が書き記してきた概念も最新の情報も学び続けるべきです。あとは、結局必要なのはブランドへの「情熱」ではないかと思っています。私自身はミルボン製品のコアターゲットではありませんが、「お客様にとって絶対に必要な商品だ」という情熱はめちゃめちゃもっているんです。だからこそお客様に憑依して「この人に愛用してもらうためにはなにが足りないんだろう」と頭を振り絞って次の打ち手を考えるのが苦ではありません。情熱がないと、打ち手なんて考えつかないと思うんですよね。

私はどちらかというとドライ寄りな人間ですし、入社の決め手も「昔から美容室が好きだった」「髪の毛が自由でなんだかモテそう」「働いている人が楽しそう」くらいの理由でしたが(笑)、10年15年と美容師さんやお客様の声のシャワーを浴び続けて、「我々が提供している商品が世の中に必要とされるにはどうすればよいか?」という気持ちがどんどん積み上がっていきました。情熱、そして責任を感じますね。

アナグラム

情熱!!!アツいメッセージをありがとうございます!成果が見えづらいなかで長期的に取り組む必要があることを踏まえると、ブランディングは想いがなければ続けられないかもしれませんね。

美容室ともに、社会から必要とされる存在へ

アナグラム

最後に、これから竹渕さんがチャレンジしていきたいことを教えてください!

takebuchi

創業社長である鴻池一郎(元会長)は「つぶれない会社をつくる」ことを信念に、「絶対に会社をつぶしてはいけない。そのために、社会から必要とされる会社になる」とよく話していました。美容室は、素敵な美容師さんに出会うことで人生が変わったり、素敵な美容室があるだけで街の魅力が増したりする、まさに “社会に必要な場所” です。これが、ミルボンがブランドとして大切にしていることです。そんな美容室に携われる仕事はすごくおもしろいですし、まだまだできることがたくさんある。自分のなかにやりきった感はまったくありません。10年20年かけてもっともっと積み上げていきたいですね。

あとは私含め社員もみなミルボンというブランドの一員だと考えています。だからこそ社員も私もどんどん新しいことにチャレンジして、仕事を楽しむ姿を体現していきたいですね。……個人的には、いつか子どもたちから「お父さんはいつも楽しそうに仕事をしているよね。お父さんと同じ会社に入りたい!」なんて言ってもらえたら、それほど嬉しいことはありません。

アナグラム

竹渕さんが仕事を楽しむ気持ち、ビシバシ伝わってきた2時間でした。本日は本当にありがとうございました!

アナグラム編集後記

「社会人大学院にいくと自社分析をたくさんおこなうんですが、分析すればするほどミルボンという会社はすごい仕組みを作っているな……と思いました。中にいると全然気づかなかったんですけどね」

……と竹渕さん自身も取材中におっしゃっていたんですが、そう、本文であまり触れておりませんがミルボン社はとてもすごい会社なのです。業界トップシェア、23期連続増収、営業はほぼ美容室の経営コンサル、トップ美容師と組む商品開発スタイルなどなど。私が知っているだけでもすごいポイントがたくさんあります。

そんな盤石な既存組織に「コーポレートブランド」という新しい概念を取り入れ、変革を起こすというのは、想像を遥かに超えて大変だったのではないかと思います。チャレンジングに、柔軟に、そして愚直に牽引し続けている竹渕さんのすごさ、カッコよさを改めて感じました。

……「あぁ、日々おこなっている情報発信をもっと早くブランド戦略に基づいたものに切り替えられていたらなぁ」なんてついタラレバの妄想をしていますが、ここから気持ちを改めて。情熱をもち、理論を学び、実践して、私もこれからブランドを積み上げていきたいと思います!

取材:賀来重宏/森弘繁/まこりーぬ(ライター)
文 :まこりーぬ(ライター)
編集:賀来重宏
写真:賀来重宏