リテールメディアの登場により、小売業界と広告業界は大きな変化を余儀なくされるワケと、その中での中小企業の勝ち筋とは?

  • 関東
アナグラム

最初に取材させていただいてから6年以上経ち、生成AIの発展やSNSもかなり変化しています。当時は「UGC」という言葉は存在しつつも、マーケティングの一環としてどのように取り組めばいいのか分からず、取り組みも少ない状況がありましたが、今ではその輪郭がはっきりとし、重要な施策のひとつとして当たり前のように取り組むようになってきていますよね。

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最初が2017年ですか、6年も経ったのですね。阿部さんが「マーケティアってメディアをやるから出て欲しい」って言われて、メディアには一切出てなかったのですが、「いいですよ」と二つ返事したのが昨日のことのようです。

UGCって昔からありましたが、すべてをコントロールできるわけではないため、重要だとは分かりつつも後回しにされていたことでした。それをデータの比較からの相関関係と得られた結果の分析をし「UGCを積層させると指名検索が増えて売上に繋がる」と提示したことが反響を呼びました。そして様々なハレーションを生み出し「UGCなんて」ってご批判を沢山頂いたのを覚えています。

私の提案している手法以外でも研究が進み、関連する書籍やサービスも生み出され、宗派の違いみたいな論争は起こりつつも、今では「UGCなんて」っていう人もあまり見かけなくなりましたよね。

検索よりもうひとつ、さらに購買に近い「リテールメディア」

アナグラム

トレンドを追うのが良いか悪いかは置いておいて、UGCのように盛り上がっているトピックのひとつに「リテールメディア」があります。正直なところ、定義もあいまいでどうしてこれほどのホットトピックになっているのかよくわからないという方も少なくないんじゃないでしょうか。

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いまマーケティングの重要トピックを挙げるとすると「リテールメディア」は外せないですね。

アナグラム

それはなぜでしょう?

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マス広告からデジタル広告、サイネージ、AIなど含有することが多いのと業界にもたらすインパクトが大きいからです。

リテールメディアの爆発的な成長は米国では顕著、すでに日本の主たる大手広告代理店は専門とする会社を立ち上げたり、部署を作ったりと始動している。

やはりサイバーエージェントさんはさすがでサツドラさんと提携したのはコロナ禍の2020年2月ごろで、他でも実績として積み上がっています。
参考:サツドラが描く小売の未来―ドラッグストア×AIで店舗のメディア化に向けた第一歩|事例紹介|事業内容|サツドラホールディングス株式会社|SATUDORA HOLDINGS

アナグラム

なるほど、小売店がメディア化することで、販促予算だけでなく広告予算も獲得が可能になるのですね。

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マーケティングと販促は本来違います。

実際、広告予算と販売促進予算の出所が違うことは多々あります。しかし、リテールメディアでその喫水線が曖昧になり、相互に乗り入れることになるでしょう。

小売店がメディア化し広告を扱うようになりますが今までは発注側でメディアとしてのデジタル広告のノウハウがない、一方でデジタル広告代理店にも小売店での販促ノウハウは少ない。

広告費6兆円、販促費15兆円が交わると21兆円規模の融合が始まる。これは広告業界のピンチにもチャンスにもなります。

こうなっても「マーケティングは売り上げを追うものではない」と言えますかね?販促費の方が規模も大きく且つ売り上げを追うものなのですから。

アナグラム

同じ売り上げであれば、販促費の使いどころが変わっていくのは想像しやすいですね。
弊社では売り上げに直結するAmazon広告の運用代行にも取り組んでいますが、Amazon広告もリテールメディアだというのはイメージが湧きにくいかもしれませんね。

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そうかもしれません。リテールメディアは「小売」なのでAmazon(EC)やウォルマート(実店舗)を一緒に捉えるとされています。概念の把握としてはそうなのですが、実運用となるとECと実店舗はオペレーションが違いすぎるので、同じ言葉で捉えるとイメージがしづらいかもしれません。

とは言え、すでに多くの企業がリテールメディアに関連するビジネスをサービス化したり、研究から実践へと動いていますし、専門の書籍もあります。これらがもたらす影響について話していきましょう。

アナグラム

はい、よろしくお願いします!

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デジタル広告ではリスティング広告やSEOなど検索に関することがここ20年ほどの潮流でした。購買に一番近いところとしてCPA換算など費用対効果を明示し、業界を牽引してきたのです。しかし、リテールメディアの出現で購買に近いところはさらにもう一つ先にあることがわかりました。

コモディティ商品(※)を購買するときに検索してWEBやLPに行くよりも、直接Amazonで検索して買うことは普通なユーザー行動です。

※コモディティ商品(グッズ)…日用品などの生活必需品で、実物を確認せずとも購入の意思決定に大きな支障のない商品。

アナグラム

楽天でもYahooショッピングにも言えることですね。弊社でも検索広告の有効性を考える際に次のような「Action(購買)」との距離で考えることが多いです。

出典:アナグラム株式会社

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そうです。そこで広告誘導することはすでに実施されているのでアナグラムさんの方が詳しいはずです。

アナグラム

はい、獲得効率は当然のように良くなりますね、買いに来ているわけですから。Amazonや店舗の場合は「行ってから探す」となるので、検索よりさらに近いと考えられます。いわゆる「コンバージョン」に近いこと以外にリテールメディアがこれほどまでに注目されている理由はありますか?

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マス広告の影響力の低下とSNSの混乱がまずはあります。

X(旧Twitter)の混乱によって広告主離れが言われていますが、実際問題としてXの代替はありません。拡散を狙い多くのアテンションを効率よく獲得するためにはXが有効打であることに変わりがないのです。

違う理屈ではありますが、YouTubeも代替がありません。TikTokは中間策であるし、成果も出るから取り組む必要性はありますが、XとYouTubeとは役割もリーチできる層も違います。

しかし予算の振り分け先を再検討している企業は多いですね。リテールメディアはSNSを代替するものではありませんが、広告予算の配分先として、コンバージョンに近い有望な手段となっているため大きな注目を集めています。

マーケティングは購買者に近くなればなるほど販促に向かい「即物的」になる

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今回、一番話したいことは、「マーケティングは購買者に近くなればなるほど即物的になる」ということです。

デジタルマーケティングの勃興で、広告予算について「それはCPAにするといくら?」という常套句にソーシャルメディアマーケティングをやる身としては辟易してきました。

あたかも「CPA換算できなければ費用対効果が測れないので無駄である」のように、ECで売られるものと実店舗で売られるものでは流通の仕組みが違うにも関わらずです。

アナグラム

即物的というと?

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実体験で言うと、コンビニでコーヒー買おうと思ったら「お茶と弁当を購入すると50円引きのクーポン出します」みたいな張り紙が冷蔵庫の扉に貼ってありました。僕はコーヒーやめてお茶にして弁当を買いました。その態度変容がこの時代に「張り紙」ですよ?!

お店に来てもらうためのクーポンをデジタル配信したわけではなくて、既に来店しており、クリエイティブなんて無い、A4の紙にワードで書いているだけ。

お店に行ってる場合は「20%オフ」が値札にあったり、スマホでクーポン出して精算したり、「支払う」って前提だから「安い」が効果高い。カート端末やサイネージでクリエイティブを訴求するのはその次の話。

別の例では、大規模小売店などでは目立つ平置きの棚に陳列されるか冷蔵ショーケースに移動されるかで売上が15%から30%減る場合があります。SNSで商品の場所を教えたりするのですが、なかなか訴求しない。実際に売り上げ回復のためにやった施策は「試食」です。棚の目の前で実施すれば売り場が変わったことを直接伝えられますから、売上30%減を回復させました。

リテールメディアではカート端末の広告で「冷蔵ショーケースにあります」って位置を伝えられれば売上のマイナスを補うかもしれません。

でも、これを伝えるのにコンテンツ?クリエイティブは必要?、これらこそAIで生成させれば良いですね。商品こそがコンテンツなので。

支払いに近いところに行けば行くほど即物的になる、最終指標のように言われたCPAすら当たり前に間接指標であり、「それでどのくらい売れるの?」になる可能性があります。

アナグラム

めちゃわかります。

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そもそもデジマのCPAからして即物的とも言えました。これを持ち込まれて変革を余儀なくされるのはマスメディアです。TVCMも費用対効果を明示するようになって数年ですが、さらに変革が求められます。新聞、雑誌などは変革などでは済まなくなりますが。

B2Bは脇に置くとして、メーカーがCMを打つ理由のひとつとして棚割りや仕入れの参考とするというものがあります。

アナグラム

数年前のマーケティアで言及していますね。

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スーパーやコンビニのリテールメディアを述べる際に「デジタルサイネージやカート端末」をメディアとして捉えて、そこへ流すコンテンツや広告運用のマーケティングの話になりがちです。でもお客様はすでに来店頂いているわけですから販促すべきですよね。

アナグラム

たしかに。お客さまがどういう状況にいるかを踏まえるのは広告配信でも基本ですが、「来店している」というのは最も強力なトリガーですね。

マーケティングがより即物的になると……?

アナグラム

店舗をメディアと捉えると成果を測る指標が間接効果などになりがちですが、即物的となると今後どうなるのでしょうか?

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僕も答えを持っているわけではなくて、どうなるのか知りたい(笑)3つくらいに切り分けて考えてみましょう

①棚を確保する際にTVCMを〇〇GRP入れるという慣習
②POSデータでの棚割りの検討
③TVCMの予算とリテールメディアの予算が競合した場合

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①棚を確保する際にTVCMを〇〇GRP入れるという慣習
フィジカルアベイラビリティという難しい言葉を使わなくとも、棚に陳列されていなければ物は売れない。リテールメディアの広告に「棚にない商品」が流れることは付帯サービス(クレジットカードなど)以外では考えにくい。そうなると棚を確保するためのTVCMはどうなると思いますか?

アナグラム

同じ棚の確保ならリテールメディアの方が売り場に近いぶんTVCMより優位ですかね?

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そうですね、下記の記事を読んでみてください。

②POSデータでの棚割りの検討

Walmartのリテールメディアは対前年比40%弱の成長を遂げているのが非常に魅力的だ。もはや本業である小売の売上には、これだけの成長を達成する事業は見当たらないのではないか。リテールメディアが魅力的なのは、広告売上の伸びだけではない。小売企業にとって、本業である小売事業の利益率は通常1-5%と薄利であるが、リテールメディア広告の利益率は60-90%と非常に高い。

引用元:薄利の小売業界で高収益に湧くリテールメディア ~急拡大する市場と店舗内外へと多様化するチャネル~ 北米トレンド | NEC wisdom | ビジネス・テクノロジーの最先端情報メディア

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リテールメディアの収益が小売業での収益を上回る場合、小売業はメディア業にも変わる。つまり業態が既存メディアと競合するわけ。

この場合、POSデータで見る商品売上より広告収益が高い商品はどういう扱いになる?売れないものを置くとも思えないので、商品を代えて且つ広告を出稿する商品を棚に置く?

アナグラム

うーん、難しい判断ですね。

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③TVCMの予算とリテールメディアの予算が競合した場合

CMを実施したから売れたのか
棚にあるから売れたのか

少なくとも棚に無ければ売れないので、あとはCMを実施しないと棚にあっても売れないのか、CMをしなくても棚にあれば売れるのか、このような事態に直面するということです。もちろんTVCMは打たなくても売れ筋なので陳列しないといけない商品は別の話です。

アナグラム

CMを実施しているから棚を割く、というこれまでの常識が変わる可能性もありそうですね。ただ、リテールメディアで利益率のいい商品だけラインナップさせると消費者としては面白みがなくなり、店舗離れにもなりかねないのかなとは思いましたがどうでしょう?

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これにはもう一つ段階があって、むしろ小売よりメディアとしての収益が上回ることで、ユニークなフェアやキャンペーンなど集客の自由度が広がることも期待できます。

アナグラム

なるほど……!逆に店舗体験がより充実してお客さんに還元していけるような流れも考えられるわけですね。小売業がリテールメディアを乱立させるような場合はどうなりますか?

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日本はウォルマートのような巨大小売店があるわけではないので、メディアが増えれば出稿する広告主を集めるのが難しくなります。その場合は広告出稿にメディアレップのようなものが必要になるかもしれません。

アナグラム

ECなどWebだけであれば棚に商品がある必要はないので、Amazonのようなプラットフォームとの連携によって比較的容易にリテールメディアの展開はできそうですが、店舗は事情が大きく変わるので難しさがありそうですね。

つい先日、いくつかのドラッグストアチェーンが手を組んで、小売横断のリテールメディアネットワークの提供を開始するといった動きも出てきてます。

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あとは、どう効果を測るかという課題は大きいですね。即物的になると影響を受けるのはマス広告だけではなく、SNS運用とかインフルエンサーマーケティングとか「それでどのくらい売れるの?」に答えが出にくいものです。

過去、CPAで詰められたときよりさらに状況は厳しくなります、「費用対効果は測りにくいのですが、効果はあります」では納得頂けない事態に直面するかもしれません。データを分析し因果関係は難しくとも相関関係から納得できるレベルの説明が必要になります。

「商品力を高めること」が中小企業にとっては最重要

アナグラム

マーケティアのこの連載は中小企業向けでしたので、今までの観点から考えた場合はどうでしょうか?

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中小企業の場合はスーパーやコンビニに納品できるチャンスはそもそも少ない。地方の生協から端を発し、著名人に取り上げられ、情報番組で話題となったブラックサンダーのシンデレラストーリーみたいなのは短期的には難しくなるかもしれません。

小規模のうちにリテールメディアに出稿することなどは出資を受けて勝負するみたいな馬力が必要になります。
短期的と言ったのはリテールメディアに進出する小売業が増えて、さまざまな競争変化が生まれて中長期的には中小企業の優れた商品が陳列される可能性もあるだろうと思います。

それまで、中小企業は自社ECを整備し、独自性のある商品の開発が必須になります。SNSを活用したり、UGCが出るような仕掛けをしたり、「自分で売るチカラ」が問われるでしょう。

アナグラム

中小企業がモールを入り口とせず、自社ECを設けるケースは増えていますよね。

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はい。Amazonや楽天などに商品を出しているとしてもリテールメディア広告の多寡により優勝劣敗が決まるといっても過言ではありません。その他大勢とモール内で広告競争するよりリスティング広告やSNSなど、その他の独自のマーケティングで勝ち残るには自社ECは必要です。

Shopifyなどそれを実現するツールはあるわけなので、あとは「商品力を高めること」が中小企業にとっては重要ですね。

自社ECであれば、モールやプラットフォームのように制約を受けづらいので、より独自の売り方も可能となりますよね。では「商品力を高める」には、具体的にはどのようなことに取り組んでいくのがよさそうでしょうか?

自分で売るチカラのビジネス構成三要素

①どこにもない商品・優れたサービスである、オリジナリティ
②どこよりも安い
③どこにも負けないカスタマーサービス

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また、単純化しすぎと言われそうですが(笑)フレームワークなどは実ビジネスになると使わないことは確かです。しかし、自社の立ち位置をザクっと知るのは大切です。

私が支援に入るとき、初見のお客様の場合はこの3つを事前に調べたり、直接聞いたりして今後の展開の大枠を見極めます。

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大別すると①と②で会社を見る。
例えば次のような場合。

①オリジナリティはないコモディティ商品
②どこより安いわけではない

Amazonで検索すれば価格比較できる場合、ここで買いますか?

①オリジナリティがあって他社比較でも優れている
②価格は他社より高め

機能性や商品性よりも価格で比較するお客様にどう対処するか?生産量からして商品性を理解して頂けるお客様で十分。などなど。

このような形で分類すれば、生産・流通・販促・納品・CSなど「複雑」になるのはここからです。

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①と②が不利であっても状況を覆すのは③のどこにも負けないカスタマーサービス。

身近な例だと、町中華。

①他と比較して美味しいわけではない、②値段も安いわけではない。

これだけだと、普通なら選択肢に入りません。

③おばちゃんの愛想がよくて名前を覚えてくれて心地よい。

でもこれがあるから通っている。こういうことは意外とありません?

アナグラム

ありますあります。たしかに「愛想のいいおばちゃん」は立派なカスタマーサービスのひとつですよね。なぜか居心地のいい店内なども唯一無二だなぁと思いました!

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①と②がダメな場合はカスタマーサービスを充実させるのが1番とは言わないがひとつの手段ではある。

Amazonに出店してもカスタマーサービスはできますが、他店と価格で比較されることが多いので、中小企業は自社ECで優れた顧客体験を提供するのが良いですね。

「商品力を高めること」が中小企業にとっては最重要、②のどこよりも安いは儲からないので選択したくはない。自分で売るチカラを身につけたければ①と③を目指すことです。

めちゃくちゃ強いのは3つ全部揃っている場合。まあ、滅多にないですが近い例もあります

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いわゆる薄利多売が可能な大手企業だといくつか思い浮かびますが、中小企業だと稀ですよね。

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ある地方の企業でオリジナリティがあって、同水準の商品より安い。卸売なのでカスタマーサービスはお店側になるからSNSでアクティブサポートしました。

3拍子揃えられる場合は売上が伸びる可能性は高い。この場合は何から手をつけますか?

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フィジカルアベイラビリティで手に取れる範囲を増やすことと、認知向上のマーケティングでしょうか?

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はい、その通りなのですが、中小企業の場合は売り場が増えて認知が向上するとボトルネックは生産背景になります。

ところが、これから支援に入るのに「売上が伸びる前提で生産ライン増やせというのですか?」と必ずなります。

売上があがる前提がないのに生産背景の話はあり得ません。マーケティングをして売るだけなら限界値は生産数の上限までです。そこに達してから増強に動いても遅い。

なので、一番最初は擦り合わせになります。

1. テレビに取り上げられて品切れを起こしたことありますか?
2. 連休などの需要期にお客様を捌けなくなったことは?
3. 需要期と閑散期のギャップをどのように埋めますか?

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などなど質問を重ねて、こちらの事例を元に「売上が上がった場合の想定問答」を繰り返します。

その気になれば次は資金繰りや流通です。

1. キャッシュフローと借入可能額
2. デリバリーの問題
3. 増産できた際の売り先確保、つまり営業

などなど。

売上があがる未来とそれによって起こり得るボトルネックをイメージします。

アナグラム

多岐にわたりますね。

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はい、上の図の3つのように単純化できないですよ、経営は複雑なんです。でも、起点を複雑にしたままでは前に進めませんね。たとえば、戦略予測をあらかじめ次のように考えて実践しました。

1. まずはマーケティング、今の生産数の限界まで伸ばす。残念ながらいきなり投資はしてくれません
2. 売上データと各種KPIをファクトベースで擦り合わせ。進行曲線が相関してきたら次。
3. 設備を3倍生産に増強
4. 売り先確保及び大手小売店用にパッケージ開発
5. 小売店の棚のデザイン変更
6. 2024年問題対応のため運送会社との握りと万が一のためのトラック購入

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結果、次のようになりました。予測が全然ダメです。。。

1. 生産を3倍にしたが、売上が伸びてすでに2.5倍に到達
2. 流通、デリバリーが間に合わず品切れ発生
3. 忙しくて人が足りない
4. 販売希望の小売店からの問い合わせ増加で営業が足りない
5. 需要が多いから利益率が高いECも整備しないと

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こんなもんです。顧客ごとにぜーんぶボトルネックと発生タイミングは違う。
顧客はうれしい悲鳴と言ってくれますし、次のボトルネックが見えてきたとも言えますが、戦略をあらかじめ練るなんて、言うほど簡単じゃない。

ボトルネックを予想するのと出てきたボトルネックに即応する、必要なのは場数と経験値です。

中小企業の皆さんは、そもそもマーケティング戦略は?とか言われて「これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ」ってなりますが、商品力を高めることが一番大事ですよ、その次はお客様を大切にすること、その先は出たとこ勝負です、どんな失敗も経験値になりますから。

アナグラム編集後記

「小売店のメディア化」なんとなく対岸のできごと捉えていたのが恥ずかしくなるほど、広告を”運用”するという立場からすれば、むしろ今の仕事の延長線上にあるトピックということが良く分かりました。

リテールメディアは、従来の広告と販売促進の境界線を曖昧にし、それによって新たなマーケティングの地平を切り開いているといっても過言ではありません。特に、リテールメディアが創出する21兆円という莫大な市場は、広告業界にとっては未知の潜在力を秘めていると感じます。

中小企業がこの変化にどう適応し、それを自身の成長機会に変えていくかが興味深い議題となりました。自社ECサイトの重要性や独自商品の開発、そしてSNSやUGCを駆使したマーケティングの有効性が、これからの中小企業の生き残り戦略の鍵を握っています。

これらの変化は、特に中小企業にとって、革新的な製品やサービスを市場に打ち出し、独自のブランド価値を築く絶好の機会を提供しています。最終的に、この変革の波に乗ることができるかどうかが、今後の競争力を左右すると確信しています。

ジゲンさんの仰る「どんな失敗も経験値になる」というのが、これだけ環境が変化するなかでは、より一層チャレンジが必要となる中小企業にとっては背中を押すとても心強い言葉でした。さまざまな選択肢が増えていくなかで、市場を冷静にみつめて今もっとも大事なことが何かをきちんと把握した上で、失敗を恐れず何事も経験値に変えるられるよう場数を踏んでいきたいですね。

文 :藤澤亮太
編集:阿部圭司