経営者人生すべてを否定された衝撃。10年かかって気づいた覚悟の重要さとは?|アナグラム株式会社代表取締役 阿部 圭司

  • 関東

プロイセン及びドイツ帝国首相を歴任したビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。そして聖人は経験から悟る」という言葉を残しています。

本来は阿部編集長退任記念インタビューになるはずだった今回の対談。インタビュー後には、自分が経験していないことでも先人の知見、歴史から学び、多くの経験を身に着けることが出来るのではないか?と考えるきっかけになるエピソードが満載。アナグラム設立から、人材採用・新規事業・マネジメント・ファイナンスなど幅広く行ってきた本マーケティアの立ち上げ人&元編集長、アナグラム株式会社 代表取締役、阿部 圭司さんが遂にマーケティア登場です。

数多くの失敗から学んだ「覚悟」とは

アナグラム

マーケティア阿部編集長退任を記念して(!?)有終の美を飾りたいと思ったのですが…阿部さんから「今まですべての事柄において失敗しかなかった」とパワーワードが早速飛び出し聞かずにはいられないのですが…。阿部さんの中でそれらの失敗が今にどのようにつながっているのでしょうか?

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あぁ、はい。自分が立ち上げたメディアに、しかも成功ではなく失敗について話せということで、折角なのでちゃんと話したいなと思います。まず、前提としてどれが失敗かと言われると、ほぼ全部というくらいほとんどが失敗です。特に、新規事業はめちゃくちゃ失敗してるので。都度、凄く傷ついてます。

良くも悪くも当時のぼくの視座や意識、経験の中では全力でやっていたので「もし過去に戻ったら」という話は通用しないと思っていますが、仮に起業する人に最初に「これだけはやっておけ!」を1つ教えてくれと言われたら「覚悟を持て」と伝えますね。そして「覚悟」は法人登記する前に決めておくべきだと、ぼくは思います。

勿論、個人補償で10数億円の借金とか、ファイナンスについての失敗もあるんですが、それよりも「覚悟を持ててなかった地獄」のほうが個人的には破壊力があります。

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10数億円の借金!?というのも気になりますが、もう少し具体的に「覚悟」について聞かせてもらえますか?

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では、お金の話は第二弾で話すとして、ただただぼくが覚悟を決めていなかった、それで絶望を味わった、という話なんですけども。

ぼくの場合、元々個人事業主の延長として法人化をした背景があるんです。1冊目の書籍を出版するときに、肩書はフリーランスよりも代表取締役のほうが箔が付くし、当時の売上規模であれば法人化したほうが税率が低くなるといったアドバイスを受けまして、あまり真っ当な思考で法人化してないんですよね。そもそも当時は人を巻き込んで仕事をしようと思ってなかったんです。ただ、その思考が後から振り返ると、実は尾を引いていたなと思います。

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おお、早速出だしから失敗の雰囲気を感じますね…。

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ぼくの中で「人を雇う時は、仮に明日全ての仕事がなくなったとしても、その人の3年分の年収を払うことができるようになってから」という感覚的な基準があって、最初は「人を雇うためにはもっと売上をあげないといけない」という気持ちだったんですが、気づいたら売上という数字を積み上げていくゲーム性の方が楽しくなってしまい、ビジョンを作ることから逃げていたんです。

多分、世の中の9割近くの経営者は同じ道を通ったことがあると思うのですが、何度か社内からビジョンを作ってほしいという話があがっていたにも関わらず、お恥ずかしい話、当時のぼくは「ビジョンで飯は食えねーよ」と、本気で思っていました。だけど、そのビジョンがいかに自分を支えてくれるものになるかということを後々知ることになります。

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創業者が旗(=ビジョン)を掲げ、そこに人が集まるというのが健全なカタチなんですけど、周囲から作れと言われて作った最初のビジョンは、ぼく自身が腹落ちできていませんでした。だから、単純に頂いた仕事をこなすためにメンバーが集まっている状況は、今思うとお金稼ぎみたいな文脈が強かったと思います。

我々の仕事は運用型広告の広告代理事業がメインになるので、広告費が上がれば上がるほど、手数料も増加しやすい傾向があるという意味においては、クライアントの利益と我々の利益というのは、相反する可能性を常に秘めています。その為、今までアナグラムのメンバーには売上ノルマを課したことは一切ないのですが、経営側には常に達成目標の数字はあり、現場に売上ノルマを課さずにいかにその数字を達成するかが重要になってきますし、それこそがこの事業における経営の力だと思っています。幸いにも10年間、常に目標を上回ってきたので、数字を達成するおもしろみはどこかで感じなくなってきていました。

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目指すべき旗がないとどこを目指したら良いのか迷ってしまう。だから、新卒説明会でも多くの企業が最初にビジョンや経営理念を伝えるんだなと今になってようやくわかりました。阿部さんの中で覚悟を決めた瞬間はこの後ですか?

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そうですね。これに気づいた時、気づかされた時、というのが正解です。海外などでは頻繁に「Get out of Comfort Zone!」なんてことを言いますが、まさにこんな状況が数年続き、このままコンフォートゾーンから出ずに現状維持(※)になってしまうのはまずいな、という気持ち、大きな危機感が自分の中で常にありましたが、具体的に何をしていいのかも解らずに悶えてました。それから、新規事業もやったんですけど盛大に滑ったんですよね。「もう、新規事業はいい」と傷ついたりもして(笑)

試行錯誤しながら、新経団連や創業者のみが集まるクローズドな会などに出入りをして、自身が尊敬する人がいいと言ったイベントや本、体験を片っ端からすべて試してみたりもしました。それでもどこかしっくりくる部分がないなと思っていた時、ある人に出会う機会があって「阿部君、ちょっと気になってるからあえて聞くんだけど、ビジネスとファイナンスを混同していませんか?」と聞かれたんです。

(※)売上は上がり続けるけれど、本人の意識が変革していないという意味においての現状維持

ビジネスとファイナンスの違い

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ビジネスとファイナンスの違いですか…?今聞かれても明確な違いを答えらえないのですが…。

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ぼくも聞かれた時は「一緒でしょう」という感想でした。しかし、ビジネスとファイナンスって違うんだよと言う話を聞いたときはぼくの中でそれはそれは衝撃が走りましたね。「ビジネスは社会貢献で、ファイナンスはお金稼ぎ。ファイナンスは個人で勝手にやるものなので他人を巻き込むんじゃない」ということなんですね。

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要するに、ファイナンスは株取引や、FXなどを代表するような資産運用によってお金を増やすことで、それは1人でやりなさいと。一方で、ビジネスはお金を稼ぐ場ではなく、社会貢献のために行うべき行為で、お金は社会貢献をした結果、後から入ってくるものなんだと。

当時のぼくはビジネスとファイナンスを混同してしまっていて、それに気づいた時はそれまでの経営者人生すべてを否定された衝撃がありました。でも、腹落ちした部分の方が大きく、今までどうも噛み合わないなと思ってる事の全ての原因が解った気がしたんです。

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嚙み合わないとは?

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例えば、人が辞めていくとき、ですかね。アナグラムブログ「離職に向き合う」でも書いているんですけど、ぼくは人が会社を辞めるという行為をマイナスにとらえていないタイプなんですね。だけどある程度のレイヤーの人が辞めるっていうのは何かあるなと自分の中でずっとモヤモヤしていたんです。それはぼくがファイナンスとしてビジネスを見ていることに相手も気づいたから辞めていったんだなって、わかったときに妙な納得感がありました。

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これがビジネスだろうと思って阿部さんはやられていたわけですもんね。

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まさに、その通りです。何か違うなっていうのは自分でもわかっていましたが、その”何か”を言語化できなかったんですよね。だからこそ、言語化して明確な違いに気づいた時がすごく衝撃的で、それまでのマインドがすべて変わりました。

アナグラム

法人化してからどのくらいの話ですか?

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法人化してから9年ぐらいかかってるんじゃないでしょうか。そんなに昔の話じゃないです。

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9年と言うと、本当にここ最近の話ですね。

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今、11年目ですからね。(2020年5月当時)

逆に、今までよく持ちこたえたよなって思います(笑)なんで誰も最初から教えてくれなかったの?と思いましたけど、最初に教えられたとしても多分、解からなかったとも思います。

視座とか視野の問題になってくるので、聞く側の準備ができてないと理解できないはずです。心の準備やそれまでの経験値やリテラシーなどの土台ができてないと「なんか、綺麗事言ってるわ」みたいな感じで終わっていたと思うし、その自信もあります(笑)

アナグラム

確かに、今になってこそ理解できるものも徐々に増えてきたけど、当時は何にもわかってなかったなと思うことはありますね。

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だからこそ、自分でそれに気づいた時は考え方、モノを見る目、行動、全てを変えなきゃいけないと思います。

例えば、これまで我武者羅に上げ続けていた売上一つとっても、売上というのはクライアントから感謝してもらった対価であり、ビジネスの目的が対価であってはいけないんですよね。クライアントのビジネスが伸びれば、雇用が増え、新規事業に投資できて、そこでまた雇用が生まれる、または法人税が増えるなどの正のループになっていきます。それらはすべて社会貢献につながるんです。

このように、新たに価値を生むことでぼくらは対価を頂いてそれを給料として還元する。新規事業にお金を投資するなり、法人税としてそのまま納めるでも良し。

少し余談ですが、その昔、法人税として1億円を収めたら一人前だと言ってくれた人がいたんですけど、その翌年にあっさりその目的は達成されましたが、その後に強い虚無感に襲われましたね。あぁ、自分はお金を使えないタイプの経営者なのだという絶望です。今だから笑って話せますが、その絶望の深さはすさまじく、益々コンフォートゾーンからでなきゃいけない!と藻掻きました。

話を戻します。この過程で稼いだものを国へ還元、人に還元することは実はすごい社会貢献になってるんだっていうのをちゃんと理解しました。この正のループができてない事業だったら、事業を畳むか別の事業やるつもりでした。今までやってきたことは間違いではなかったけど、ぼくの心の持ちようが間違ってたせいで誤解を招いた可能性があるのはすごく嫌だし、意味があることであればしっかりとそれをちゃんと伸ばすべきフェーズに入ったという感じですかね。

また、「ビジネスとは継続性」とぼくは教えられたので、そういう意味でもしっかりと思想を固めないと、長くいい会社としてはやっていけないと思います。

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そのタイミングで社会貢献になっていることが腹落ちしたのですね。招いてしまった誤解とはそこで一緒に働いている人に対してですか?

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どちらかというと、辞めた人が分かりやすいかもしれないですね。辞めた人は”何か”の違和感があって辞める選択肢をとったと思うので申し訳なかったという気持ちがすごくあります。逆に、申し訳ないからこそ「あの時、辞めなきゃよかったな」と少しでも思ってもらえる会社にしなきゃいけないとも思ってますし、あの時、あの会社にいて本当によかったな、と思ってほしいから、今も頑張れるのだと思います。

実際、フィードフォースへのグループジョインのリリースが正式に出た直後は、いろんな人から「辞めなければよかった」とか「この選択肢を取れるのはOBとして嬉しい」という連絡をもらえて、自分の選択肢はやはり間違ってなかったのだと、素直に嬉しかったです。ぼくの心が穏やかになったという意味でも良かったですし、アナグラム自体の価値が上がったのがすごく良かったなと。だって、離職した人がうちにいたことに価値を感じてくれていなければ「元アナグラム」みたいに看板掲げてくれないですし、何も言ってこないわけなので。

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つまり、阿部さんの中でファイナンスとビジネスが違うものと明確に理解できたことが、覚悟を決めて事業を伸ばす大きなきっかけだったのですね!

見えなかった未来と現実との乖離への絶望

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そうですね。覚悟を完全に決めることができてなかった原因は、社会貢献を第一にしたビジネス展開をできていなかったこと。これは非常にひどかったなと思います。

IPOが全てではないんですけど、「何年以内にIPOする!」など最初から目的が決まっていれば最短で影響力の輪を広げられたかもなぁとは思います。ぼくの場合、今の規模になるまで10年かかりましたけど、今思えばですが、最初から覚悟を決めていれば5年かからず同じ規模にはできただろうなと思います。もし本当に5年で今の規模になれたとすれば、その倍の10年経ったら今以上の影響力の輪ができていて、今以上に社会に還元できてたことになりますよね。

優れたマーケターの輩出ももちろん、関わる企業さんをどれだけ助けられたか、もっと伸ばすことができたと考えると、後悔は全くしていないですが、本当は取れたかもしれない未来と現実との乖離に絶望することは今でもよくあります。

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覚悟について色々お話頂いた中で1つ素朴な疑問なのですが、10年かかったことがもしかしたら5年でできたかもしれないというのは、決断が正しかったのか正しくなかったのかも含めて結果論であり、たらればの話なのかなとも思うんです。例えば、あの時の決断が正しかったのか、そうではなかったではなく「正しくしていく」ことが覚悟になったりするのでしょうか。

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決断を正しくしていくというのももちろんありますけど、10年前の自分がその言葉を聞いたところで、臨場感を持ってなかったと思うんです。だから、今のリテラシーであれば10年前に遡ればできたなぁって言う臨場感がすごくあるからこその絶望であり、ぼくなりに成長している証だと思っています。

絶望を感じるということは、過去の自分に対して俯瞰して見ることができていることなのでポジティブにはとらえています。絶望からしか希望は生まれないですし、決断してない人に絶望なんてないわけですからね。

ただその当時、ぼくが巻き込んだ人たちにはすごく申し訳ないなというのは変わりませんね。

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視座を上げたり、自分を俯瞰して見るという気づきは、早くに経験できた方が良いと思うのですが、そのために今私たちができることは具体的に何があるのでしょうか。

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何事にも順番があるので一概には言えません。人って地層の様にいろんなものが積み重なって大きくなっていくものですから、その土台もないのに急に「世の中はすべて宇宙だぜ」といったように抽象度が大き過ぎるもの、身の丈に合わな過ぎるものを出されても全然ぴんと来ませんし、難しくないですか?つまり、自分の手に届く抽象度でないと受け止められないんですよね。

ただ、Connecting The Dotsのように点と点がいつ線になるのかはわからないけど、今、目の前にある点に向き合うことが一番大事だと思います。スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業スピーチの話ですけどね。

そのためにぼくたちは、点という何らのきっかけを与え続けるというのが大事だとすごく思います。なぜなら、点がなければいつまでたっても線として繋がらないので。だから、今は抽象度が低くて分かってもらえないとしても、いつか線となっていたのだと気づいてくれればいいよ、というスタンスで、点というきっかけを与えるのが先に生きた人たちの責任だと思いますね。

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「遠きに行くには必ず邇きよりす」のとおり、一足とびには物事はできないということですね。

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そうですね。ぼく自身も長年かけて色んな人に会いに行って、多くのことを教えてもらいました。そういう工程の中で全てが線になる瞬間が訪れたわけで。

そのエピソードでいうと、腹が決まった時にお世話になった方々にお礼をしに会いに行ったんです。そうすると、会いに行った皆さん、ものの見事に「お礼はいらないから、次の世代に繋いでほしい」って言うんですよね。要するに、自分も与えてもらったからやってるだけであって、今度はぼくがバトンを繋ぐ番だから、困った人がいたらちゃんと向き合ってあげなさいと声をかけてくれたんです。みんながみんなそう言うので本当にその通りなんだろうなって思ったから、ぼくもバトンを受け継いだ者として、真摯に向き合っていきたいなと思うわけです。

アナグラム

イイハナシダナァ~。

阿部さんの話をまとめると、抽象度を上げたり視座を上げるためには、自分を引き上げてくれそうな人を見つけることと、まずは自分の目の前のことをやるという2つのことがあるのかなと思いました。

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両輪だと思います。ただやはり、手元を疎かにしている人の話は誰も聞いてくれないので、ちゃんと今の持ち場で結果を出すというのは大前提ですかね。

コロナ禍で変わる会社との向き合い方

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話しは少し変わり、多くの読者の方が気になっているであろうコロナ禍における阿部さんの中で変わった会社の在り方、考え方があればお伺いしたいです。

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在り方が変わるというと、「Place/ 場所」は大きいと思っています。リモート勤務が3ヶ月ほど経った時に社内で取ったアンケートでもメンバーの9割が口をそろえて「通勤時間が無駄だった」と回答しています。

経営者同士の定期的な話し合いでも「コロナ前に戻る」と考える経営者と「コロナ前には戻らない」と考える経営者と2極化しています。

アナグラム

アナグラムとしてのスタンスはどのように考えているのでしょうか?

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コロナ禍で消費傾向が変わると言う人という人もいれば、変わらないって言う人もいる。その中でぼくが1番変わると思っているのは「マインド」だと思っています。

今回、コロナ禍で新しい選択肢や価値に気づくことができました。その気づきをもとに人類は前に進むべきだとぼくは考えているので、元に戻すのはアナグラムとしては違うと思っています。どちらかというと、新しい価値に向かって前に進んで行く方が良いだろうと考えていますね。

だからといってオフィスを解約するのは今のところ考えてはいなくて、サードプレイスのようにいつでも来れる場所は必要だと思っています。なぜなら、ずっと家に居るのが苦痛に感じる人もいるだろうし、このままリモートが続くと一度も会ったことない人が山ほど出てくる可能性も高い。極論、それでも成り立つのであればそれで良いのですが、実際に会わないと臨場感が持てない人もいるだろうし、、Zoomを含むオンライン上でのやり取りでリアリティーを感じることができるようになっている人もいます。

このように、人によって塩梅が異なるのも事実なので、各々心地良い部分と適度な負荷がかかる良さを見極めることができればいいですよね。

ぼくみたいな失敗をしてほしくない。

アナグラム

最初に「覚悟」というお話を聞いた時に、気合と根性論みたいな話になるのかなと思っていたのですが、個人的には想像以上に「覚悟」の抽象度を上げることができた気がします。

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念のため、気合と根性論はめちゃくちゃ大事です。それでもやっぱり一番は、「ビジネスとファイナンスは違う」ことを理解することですかね。断言しますが、これが理解できないと必ず病むんですよ。最初から分かっていたら結果は違かったかもしれないと思っても、時は戻らないですからね。

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そして更に言えば、満たされない絶望より満たされたときの絶望の方がとんでもない深い地獄なんです。そういう意味においてはファイナンスの失敗というのは正直小さいと思ってしまうくらい、覚悟が定まっていない時の失敗は大きく、それ以上はないと思っています。

だから、ぼくみたいな失敗をしてほしくないですね。

アナグラム

落ちなくてもいい穴に落ちないという感じですかね。

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まさに。きっかけなんてどこにあるかわからないですし、他にも色んな落とし穴はあるのだけれど、1番わかりやすい落ちなくてもいい落し穴が「覚悟を決めろ」ということですね。ビジネスの定義は社会貢献の一択で、社会貢献の文脈が定まれば、あとは覚悟を決めて影響力の輪を全力で広げよう!ということでしょうか。

人を巻き込むにはビジョンはやはり大切で、それがしっかりと定まっていないのであれば個人でやりなさいと。そして、その決断は最初に腹を決めておかないと遠回りしてしまうな、と強く思います。だからといって全員がそうしろと言うわけではないんですけどね。

ただ、人を巻き込むのであれば、色んなことを考えないと後々大変なことになるのは過去何人もの先人たちが口をそろえて言ってる事実です。この手の失敗談はやっぱりかっこ悪かったり恥ずかしかったりするので、なかなか出しにくいですよね。

アナグラム

個人的に、失敗を話せる方は自分の中で失敗を昇華できてる方なのかなと思っています。

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もちろんそういう面もあると思います。事実、今ぼくはそこに向き合えて話せてますね。

「自分とはこういう人間でこんなことがやりたい」と明確に決まっている人は、極論どれだけお金を積まれようが、満たされようが、自分にとってどの選択が幸せになるのかがわかるので迷いがないという意味で病みにくいですよね。ぼくの場合、そのことに気づくのが遅く、散々遠回りもしたけれど、今は目標も明確で、まぁまぁ楽しくやってます。

アナグラム編集後記

「覚悟が決まると生きやすくなる」とスッキリした表情で語ってくれた今回の対談。誰もが表に出しにくい恐怖・絶望・嫉妬など負の感情を「絶望からしか希望は生まれない」と声高に謳う阿部さんのように、常に前に向かって歩み続ける姿勢はこの記事を通して感銘を受けた人も多いのではないでしょうか。

この記事の読者は、メンバーという立場の人もいれば、メンバーをもつリーダーという様々な立場の人も一重に今、まさに過去の自分の点と点を線でつなぐ想いを馳せているのではないかと思っています。

当時の自分自身の身の丈に合わない、抽象度が大き過ぎるものには臨場感が生まれづらく受け止めきれられない。そして、過去の自分を俯瞰して見ることで感じる絶望と成長に踠きながら地層のように層を厚く、人間みを高めていきたいと決意したインタビューでした。阿部元編集長、今まで大変お疲れ様でございました!

文:杉山美和
編集:賀来重宏/砂川恵里佳
写真:杉山美和