jigenさんが見据えるメディアとコミュニティビジネスの未来。そして私たちが今考えるべきことは

  • 関東

ものやサービスの購入を検討するとき、今や口コミを調べるのは当たり前の行動になっていますよね。また、そのことを理解して意図的に口コミを発生しやすいように工夫する企業も年々増えています。

この消費行動に10年前から注目し、啓蒙してきたjigen_1さんをご存じでしょうか?過去にマーケティアで全5回にわたり連載をし、大きな反響がありました。

そんなjigen_1さん(@Kloutter)さん(以下ジゲンさん)がアナグラム社内限定イベントの「Marketeer Meet UP!」に登壇してくださり、再びマーケティアの取材に応じてくれました。

2017~2019年に公開した記事はこちら

第1弾:本当のインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは?

第2弾:口コミ拡散のためにはコンテンツが1番、では2番は何に?|jigen_1さんが語るツイートが拡散する仕組みとは

第3弾:Twitterマーケティングを代表とするSNSマーケティングはただの手段。適しているか否か、まずは3枚におろしてから考えないと

第4弾:消費行動とユーザー行動を見極めて、昨今のコンテンツマーケティングをどうしていくべきかを考える

第5弾:テレビ離れの原因はテレビそのものではなく周囲のメディアの凋落によるもの。これから重要なのは新たな生態系を理解し、全体を最大化させること

コロナの影響を経た、世の中の流れとメディアの情勢

 ジゲンさん。広告代理店のソーシャル部門、外資ソーシャル系SaaS事業の立ち上げを経て、ビッグデータ解析事業会社に勤務。

アナグラム

前回のインタビューがコロナ前だったということで、アフターコロナにおけるSNSマーケティングの重要性について最初にお伺いしたいです。以前からその重要さに気づいている人は増えてきていたものの、数年の時を経て、やっとジゲンさんが仰っていた「口コミが重要になる」という世界観が当たり前になる日がやってきましたね。

jigensan_icon

UGCを起点とした購買行動モデルである「ULSSAS理論」の基本原理が確立したのが2012年です。2017年にマーケティアで、これからはUGCが重要だと話したとき、今では笑えるくらい「UGCなんて」という反応をもらいました(笑)

アナグラム

かなりの反響がありましたよね。10年前に口コミを大切にしてた会社はほとんどなかったと思います。当時、Twitter上でいろんな議論がされていたのをよく覚えています。

jigensan_icon

だけど、今「UGCなんて」という人はいなくなってますよね。そして今もまさにChatGPTや、マーケティング・広告にも深く関わってくるようなイノベーションが起こってるわけなんですけど。SNSがどうなるか以上に、世界が加速度的に変わって、さまざまな地殻変動が起きると伝えたいですね。

昔はテレビを筆頭に4マスの時代だった。ここに当てれば1億2000万人に届いたんです。2019年、最後のマーケティアの取材にて「テレビはオワコンじゃないよ」と言いました。

テレビ離れの原因はテレビそのものではなく周囲のメディアの凋落によるもの。これから重要なのは新たな生態系を理解し、全体を最大化させること|jigen_1さん第5弾 – Marketeer(マーケティア)

そして今、テレビはまだオワコンじゃない。なぜかというと、テレビの影響力が下がってるというよりも、崩れたのは雑誌・新聞・ラジオの方だからです。新聞にはテレビ欄があって、雑誌はテレビで特集されたものを取り上げて、逆に雑誌で特集されたものをテレビで取り上げることもあって。さらにラジオでも取り上げて……つまり4マスでエコシステムができていた。

今、紙の新聞をとってる人、リアルタイムで毎週ラジオを聞いてる人、紙の雑誌を毎週・毎月買ってる人いますか?

アナグラム

なかなかいないんじゃないでしょうか。

jigensan_icon

これがインターネットによって変わってきたところなんですよ。Googleが出てきて、ここにTwitter、Instagramが出てきて、メディアのラインナップがロングテールになった。それぞれのメディアに使う時間が、人によって全然違うんですよ。

私なんか一日中TwitterばかりやってるからTikTokを見てる暇がないし、一方で一日中Instagramやってる人もざらにいる。こういう条件下では、可処分時間を消費する場所が細分化していきます。

アナグラム

インターネットが圧倒的に可処分時間を奪っていったことで、新聞・ラジオ・雑誌離れが加速したんですね。そして分散先はさまざまと……。

jigensan_icon

メディアがどんどん横に広がっていくので4マスのうちの一つ、そして一強であるテレビで全国民に情報を届けることができないんですよ。

アナグラム

たしかに、Twitter一本やったら全国民に知れ渡るかというとそれはないですよね。

jigensan_icon

その通り。

「マス」の世界がなくなった今、中間層が厳しい情勢に

アナグラム

メディアがロングテール化していく中で、情報を届けたい企業はどういう状況になるんでしょうか。

jigensan_icon

大手企業はプロモーションといえばテレビもやるし、YouTubeもやるし、リスティング広告もやるし、SNSマーケティングもやるでしょう。ヒエラルキーのほんの一部の大手企業がこれを全部包含することはできる。でも日本全体で大手企業の数は0.3%ほどしかないんですよね、日本の企業数のうち、99.7%は中小企業です。つまり全部できるところは限られている。

そして一番厳しくなっていくのは真ん中です。SNSはどう利用できるかというと、例えばアパレルをやっている小さい企業が年商10億まで目指すならInstagramに注力する、それでも良いわけです。つまり、ある程度の売上規模までは一つに集中すれば売上を立てやすい仕組みにはなってきているんですね。

アナグラム

今やウェブサイトも持たず、SNSだけで売上を立てているブランドもありますからね。

jigensan_icon

下のところがInstagramやTwitterを利用してうまく突き上げてくるのに対して、上は相変わらずオールインしてくる。真ん中は、年商10億では足りないし、全部はできないし…。

上はアテンションを浴びせてくるのに対して下はカテゴリーキリングしてくるという感じ。ここの中間層の企業がどうなるのかが目下の課題です。

jigen_1_capture01

アナグラム

そしてそれぞれのコミュニティのパイも当然少なくなっている。このコミュニティに30人、このコミュニティに50人と分散しているところとどうやって接点を持つのでしょうか。「マス」の世界はもうなくなっていきますよね。

jigensan_icon

何が答えかというと、その人たちの行動に基づく結果によって、AIをうまく活用しながらアクションをしていかないといけないんです。実際にSNSやYouTubeを見ていて、あまりにも自分の興味関心に偏っておすすめが出てくると感じたことはないですか?

アナグラム

あります。まるで自分の興味関心事が世界中の興味関心事であるかのようにすら思えてきますよね。

jigensan_icon

そうそう、例えばサッカーが好きだったら、TikTokを見てるとサッカーばかり流れてくるじゃないですか。私は古着が好きなので、ジーンズをクリックすると今度はジーンズだらけになる。

背景として、Cookieの規制によって、個人の行動データに基づいて、その人に向けて広告をピンポイントで当てることが厳しくなっていますよね。だから「いいね」などのユーザーの行動から興味関心の傾向をつかんで、購買行動を予測するAmazonのようなレコメンドの仕組みがますます重要になってきています。

Web2.0はソーシャルメディアが出てきて双方向の時代、さらに今は、お客様と企業の間にAIが入ってくる。私はこれがWeb3.0なんじゃないかと思っています。NFTとかブロックチェーンとかがWeb3.0と言われがちですが、ここにAIが関わってくるのは次の世代にどうしても必要だし、それを活用しない手はない。

マーケティングの手法が多様化する今、大事なのはゴールを定義し、定石を知ること

アナグラム

メディアが増えるとその分やるべきことが増えて、何から着手したら良いのか分からなくなっている企業も多いように感じています。

jigensan_icon

まずは自分たちがどのポジションを取りに行くのか。そして、そのポジションを取るための最適解は何なのかという定義こそが重要です。

アナグラム

すべての会社が0.3%の大企業のポジションを取りたいわけじゃないですからね。

jigensan_icon

そうなんです、0.3%の大企業のマーケティングを振りかざして売上は簡単に上がらないなどというのは現実と乖離し過ぎている。中小企業は今までやっていないことをやりさえすれば売上は上がるのに、あまりにも何もやってないところが実際多すぎます。

アナグラム

なるほど。

jigensan_icon

リスティング広告もやらない、SNSもやらない、SEOもやらない、GoogleMapの登録すらやらない企業は、何か一つでもやれば少しは違いますよ。デジタルマーケティングは30年くらいの歴史があり、定石ができています。先人のノウハウをガン無視して「売上が上がらない」は単純に怠慢なだけ。

地方の古着屋をまわると、GoogleMapの情報が更新されていないし、SNSも更新されていない。これではなかなか行こうと思わないですよ。

アナグラム

「その前にサービスと商品のブラッシュアップの方が重要」と考える企業も多いと思うのですが、どうでしょうか。

jigensan_icon

それはその通りだと思う。美味しくないラーメン屋さんには口コミで「美味しくない」って出ちゃいますから。前提として商品やサービスを磨くのはとても重要なんだけど、何もやらなくても売上が上がる時代ではなくなってきているのも事実だと思います。

ただ、特に地方の企業は成功のイメージが湧いていないんですよ。東京だと身近に成功している人がいたりしてイメージをつけやすいけど、地方だとつきにくい。商工会や青年会議所を見渡してもなかなか該当する方はいないかもしれない、でも探せばそういう団体に数人は輝いてる経営者がいる。

そのような人に師事して、まずは成功のイメージを持つことが大事。若い頃は商工会、青年会議所などで見本となる先輩起業家に出会い彼の真似をしました。(そのあと会は辞めたけど。)起業の階段をどうやって上がっていくのかを知って、当たり前にやれることを当たり前にやる準備さえすれば、売上は上がるということを学べました。

アナグラム

ある種の定石のようなものを知ることによって、やるべきこと・やっていないこと・もっとできることをチェックシートのように一覧化し、把握できますよね。

jigensan_icon

手法は自分で探すのも良し、先輩や外部のコンサルを使って教えてもらうのも良しだと思います。とにかく定石を知ることですね。将棋だって定石を知らなかったら絶対勝てないのと同じです。

アナグラム

今の話を聞いて、広告代理店やマーケティングのコンサルタントは、いろんなお客さんを支援しているからこそいろんな定石を知っているわけで、この会社だとこうやってうまくいったとかそういう情報を共有するのも私たちの一つの価値なのかなと改めて思いました。

コミュニティビジネスの未来。「開かれたコミュニティ」と「限定されたコミュニティ」の行く末は?

アナグラム

SNSを取り巻くマクロな視点のお話を聞くことができたので、続いてSNSを筆頭とした「コミュニティビジネス」の未来について伺います。細分化されていったコミュニティは、一定の規模を保ちながら継続していくんでしょうか?TwitterとかInstagramとかTikTokとか圧倒的なユーザー数を持つSNSはこれから出てくると思われますか?

jigensan_icon

既にTwitterやInstagramなどが圧倒的なユーザー数なので、後から追ってシェアを取るのは難しいと思います。

ただ、もし今後コミュニティビジネスをやるのであれば、「開かれたコミュニティ」であることがポイントですね。

アナグラム

開かれたコミュニティとは?

jigensan_icon

例えば、Twitterでは「ここのレストランはどうだった」とか「この化粧品はどうだった」とか、いろんな分野のツイートをしていいですよね?こういった、ユーザーによって自由に発信されたコンテンツをUGC(=User Generated Content)といいます。Twitterはコミュニティマーケティングの視点から考えると、トピックに縛られずいろいろなコミュニティが混ざった、開かれたコミュニティビジネスなんです。

アナグラム

たしかにTwitterはグルメ前提のSNSでもサッカー前提のSNSでもないから、いろんな話題が飛び交ってますよね。

jigen

jigensan_icon

UGCとよく混合されるものとして、CGM(=Consumer Generated Media)があります。これはユーザー投稿によって成り立つメディアのことです。ここに投稿されるUGCは、コンセプトに沿ったメディアを形成するために、消費者として参加して何らかの意見を言うものです。CGMのような限定コミュニティだと、例えばレストランを探す人が集まるコミュニティ、料理レシピを探す人が集まるコミュニティ、化粧品を探す人が集まるコミュニティという風に話題や目的が決まっています。そうすると、それ以外の拡張性はないじゃないですか。

CGMのようなコミュニティマーケティングは一つの手法だけど、一部のコミュニティでしか使えなかったら、そこから爆発的に全世界に拡張するのはありえない。だから、コミュニティでビジネスを拡張させるんだったら、横ぐしですべてのコミュニティで使われるように利用されるのが良い。一つ一つのコミュニティの規模には限界がありますから。

スモールビジネスが大きくならないのは、それは自ら選んだ「小さなコミュニティで商売する」ということをやっているからです。ユニクロだってもともとは小さな山口県の小さな洋品店だった、そこから世界に出るんだと決めたときに、製造販売に大きく舵を切ったり、いろんなことを変えていきましたよね。

スモールビジネスが悪いのではなくてスモールを選んだのだからその範囲が限定されるのは当たり前、そこに幸せがあるのなら無理に大きくする必要はない。でもビッグビジネスに変えたいなら再度ビジネスモデルを作り替える必要があるということ。

余談ですが、基本的には人数が増えすぎるとコミュニケーションは取れないんですよ。絶対どこかでこじれるんです。

アナグラム

ダンバー数という指標がありますよね。知り合いであり、かつ、社会的接触を保持している関係の人の数のことですが、これに伴い、昔の村は150人程度の規模だったという話があります。それ以上になると顔を覚えられないんですよね。そういうのも含めて、「人数が増えすぎるとコミュニケーションは取れなくなる」というのは非常に納得感があります。

jigensan_icon

例えば業界用語やあるコミュニティだけの隠語、独特のルールってあるじゃないですか、あれは排他的なんですよ。よそ者にはわからない言葉を使って身内同士のやり取りがうまくいくようになっている。

アナグラム

そのコミュニティの隠語やルールを知らない新参者は、加わりづらくなりますよね。

jigensan_icon

小さなコミュニティが大きくなれない要因がここにもあり、テレビがこれからオワコンになるのかどうなるのかも、実はこの話が関係していると思っています。

今、TVerとかAbemaとか、テレビの可処分時間がどんどん分解されてますよね。そうすると、そこでAbemaのコミュニティとか、TVerのコミュニティとかができて、それぞれの作法が生まれたりする。コミュニティによって使うスタイルが変わっていくと、いよいよ今度こそテレビは、テレビ放送としての縮小が始まるんじゃないかと。

AIの台頭によって、コミュニティの最小単位は変わるかもしれない

アナグラム

最近だとメタバースなど、新たな技術を取り入れたコミュニティビジネスの形が出てきていますが、それによってコミュニティビジネスは変わっていくと思いますか?

jigensan_icon

メタバースよりもChatGPTのような対話型AIの台頭によって、新たなコミュニティビジネスの形が生まれてくるかもしれない。コミュニティの最小単位って最低二人ですよね。

アナグラム

会話は二人で成立しますね。Twitterでも、反応があったりコメントがきたり、コミュニケーションを取るのは二人からですよね。

jigensan_icon

ChatGPTのようなAIが出てくると、コミュニティが自分とAIで完結する人がでてくるかも。

SF的ですが、Aさんは、AIのB子さん、AIのC子さんと話して完結すると。そうすると、Aさんのメディアは AI一つで良くなる。そのコミュニティに人間は一人だけ。AIが進化したらこういう世界が実現する可能性は十分あるんじゃないでしょうか。

もともと、サービスはコミュニティに依存するんですよ。例えば、私はTwitterのDMは秒で返しますが、LINEをほとんど使わないから返信は遅い。でも自分の所属するコミュニティのほとんどの人がLINEをメインで使ってたら、使わざるを得ないですよね。幸い私の友人はツイ廃が多いのでtwitterDMでしか来ない。

アナグラム

仮にまわりでTwitterを使う人がいなくなってLINEを使う人ばかりになったら自分も移らざるを得ないと。コミュニティビジネスがキャズムを超えるのは、人々がコミュニティごと移動してきたときだといえるかもしれないですね。

jigensan_icon

でも、最低コミュニケーション人員が自分1人だけになったら、コミュニティの影響を受けない可能性がある。だから開かれたコミュニティでないと世界に広まるのは難しいと言いましたが、AIの台頭によってその前提すら覆されるかもしれないですね。AIが偏らない情報を適宜教えてくれるのなら。

マーケティングに関わる人のキャリアと、テクノロジーとの付き合い方

アナグラム

マーケティングに関わる人は、これからどんなことが求められる時代になると思いますか?

jigensan_icon

メディアがサイロ化していき、複雑化している中で、マーケティングのコーディネーターみたいな役割がますます重要になってくると思います。

アナグラム

先ほども話に挙がった、定石のチェックシートのような役割ができる人ですよね?

jigensan_icon

「これとこれとこれをやってないならまずはやってみれば?」とコーディネートするだけでも全然結果が違うと思うんですよ。

アナグラム

ただ、メディアの数が増えて、すべてに詳しくなるのも相当大変になっていませんか?

jigensan_icon

そうなんですよ。で、全部にめちゃくちゃ詳しくなる必要はないんです、そんな人はいない。ただ、何か一つに詳しくて、その周りのこともなんとなくカバーできていれば、少なくともやっていないことが分かって、このくらいはしておいた方がいいよねっていうのは分かるじゃないですか。

知り合いが地方で雑貨店を出したのですが、とにかくGoogleMapもInstagramも何もできてないんです。ところが、とりあえずこれをやるべきってことを一通り教えてやってみたら、まずまず集客はうまくいきました。そもそもサラリーマンの頃と同じくらい稼げれば良いという感じなので。

目指す売上規模によっては、ある程度のセオリー・定石に沿ってコーディネートして実行すれば、認知は取れて来店が増えます。そしてSNSでコミュニケーションを取って……ということさえすれば、狭いコミュニティの中では十分機能するんですよ。

アナグラム

何か一つ得意な分野があって、そのまわりもある程度カバーしている。少なくともこれをコーディネートしていたら十分付加価値になりそうですね。テクノロジーとの付き合い方についてはどうお考えですか?

jigensan_icon

私はおじさんだからFAXの黎明期、携帯電話の黎明期を知っています(笑)

昔、実はFAXの営業をやってたんですよ。営業に行くと必ず社長に言われたのは「それやって儲かるの?」と。でもどこでもFAXを使うようになったらそんなことは言わなくなった。携帯電話も同じ、インターネットの回線も同じ、そしてデジタル広告も同じでした。黎明期のTwitterの広告を売りに行ったときに「Twitterやると儲かるの?」って言われた。

「ChatGPTやって儲かるの?」って言われても同じことなんだろうなと思います。そこでチャンスだと思って何かを始めた人が残っていくんです。だから少なくとも「使えるの?使えないの?」と議論する前に、早く触れてみることはやってほしい。

アナグラム

いかに共存するかのフェーズですよね。ChatGPTに関してはそれが加速度的にきちゃったなって感じがしますね。

jigensan_icon

フォーカスすべきは、今何をすべきか。自分にとって便利なことをやってみると良いですよ。三者三様で使い方はたくさん生み出せると思います。私は英語でやりとりする場面で使っていますが、とても便利。無用にこわがるよりも有用に使ってもらった方が良いんじゃないかと。

アナグラム

テクノロジーの進化によって、マーケティングの仕事そのものは変化していくと思いますか?

jigensan_icon

今すぐは変わらないと思います。ChatGPTが検索エンジンに取って代わるかというと、情報が正しいかどうかの評価技術がないと難しいと思うので、少なくとも期間が必要。

ただ、スマートフォンネイティブやSNSネイティブの人が、途中でそれらに触れた大人たちと全然違う使い方をするように、「子どものときにはAIがあった」という人たちが出てくると、劇的な社会の仕組みの変化をもたらすような消費者になってる可能性がある。

アナグラム

将棋の藤井さんはAIと対決しまくって、あれで強くなってますよね。ChatGPTに関してもそういう使い方をする人がこれから出てくると。

jigensan_icon

逆を言えば、ChatGPTに関しては私も皆さんも、今の大人たちはスタートラインが一緒。考えもしなかったことが起こり得るんだということを前提として、今の新しい技術に接することが必要です。そして私たちはこれからその変遷をみることになるので、この変遷を楽しんでいただきたい。

jigen2

アナグラム編集後記

ジゲンさんは、ソーシャルメディアマーケティングを生業とされているだけでなく、Twitterを愛する者、趣味コミュニティに属する者、中小企業の経営者としてのご経験など、さまざまな顔を持たれています。だからこそ、「これは企業側から見ると良いけど、コミュニティに属する人間として言わせてもらうと違うんだよ!」などといろんな顔を覗かせながらお話をして下さり、多面的に考える機会をいただけました。ジゲンさんのようにいろんな目を持てるよう、人生経験を積んでいきたいです。

また「自分たちにとっての最適解は何なのかという定義こそが重要」というお話の中で、同時に「そこにいる人たちの幸せが何なのかを定義する」と仰っていたのが印象的です。惜しみなくいろんな話をしてくださるのはジゲンさんご自身が関わる人たちの幸せを考えているからなのか……と優しいお人柄が垣間見えた気がします。

抽象的なお話も多くありましたが、一つでも自社の戦略や、マーケティングに関わる者としてのキャリア戦略を考えるヒントを拾っていただけると嬉しいです。

執筆:小紫恵
編集:辨野裕太/阿部圭司
写真:齋藤彩可