消費行動とユーザー行動を見極めて、昨今のコンテンツマーケティングをどうしていくべきかを考える|Jigen_1さん第4弾

  • 関東

既にシリーズ化された気もするジゲン (jigen_1 @Kloutter)さんの連載も早いもので第4弾目となります。これまでの記事を読んでいない方は、事前に下記記事を読んでいただくと、本記事の理解が深まりやすいと思いますのでぜひ!

第1弾:本当のインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは?

第2弾:口コミ拡散のためにはコンテンツが1番、では2番は何に?|jigen_1さんが語るツイートが拡散する仕組みとは

第3弾:Twitterマーケティングを代表とするSNSマーケティングはただの手段。適しているか否か、まずは3枚におろしてから考えないと|Jigen_1さんの第3弾

ユーザー行動と消費行動は別物

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ついに第4弾まできましたね。

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最近ULSSASをいろんなところで提唱している長髪イケメンの方がいらっしゃいますよね。「ただし、イケメンに限る」ってのは本当で、何を言うかより誰が言うかなのをオジサンはしみじみと感じているわけです。(遠い目)

ULSSASは彼に任せるとして、私としては次の概念をお伝えしていかないと存在感が薄れるかなと(笑)。これからのマーケターというのは様々なデータを読み解いていかないと!というのはもう当たり前ですよね。その次に必要なことというのをお伝えできればと思います。

例えば私がお手伝いしているあるクライアントさんは、お付き合いを始める前はずっとチラシがメインで集客をしていたのですが、今ではTwitterのオーガニック投稿などを活用して売り上げを上げることに成功しています。

それ以前のお話をすると、チラシによって導かれたお客様が店舗で会員になると、顧客のデータが読み取れますよね。そうすると50代や60代の方が多く買い物に来ているのが分かったと。その結果から次に打てる施策って何ですか?となったらやっぱりチラシとかになり、Twitterを活用しようという発想にはならない。

この場合、ユーザー行動と消費行動が異なるということを考慮しないと新たな打ち手が思い浮かばないわけです。「情報が全く異なる層から発露してモノを買いに来ている」場合があるということで、そのユーザー行動と消費行動に違いがあるんだということを知っておかないと、データドリブンでやればやるほど間違った方向に行っちゃうことになりうる。

そのクライアントさんの場合、まず口コミを徹底的に調べました。そうすると口コミで「美味しい!」とか「食べたい!」とか言ってるのは高校生など若い人たちだったんですね。でも実際にお店に買いに来ているのは、そのお母さんやおばあちゃんたち。つまり50代、60代の人たちって自分が食べたいから買うのではなく、子どもに食べさせたいという理由で買っている人が多いということ。であれば50代、60代の人に直接売ろうとするのではなく、若い人たちにもっと「食べたい」とか、「美味しい」とか言ってもらえれば売上って上がるのではないかと。

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つまりここでいうユーザー行動は若い人たちのSNSでの口コミという行動で、消費行動はそのお母さんやおばあちゃんがお店に行って商品を買う行動ということですね。確かにいくらデータドリブンが大事といえど、会員データだけを見ていたらそこにはなかなか気づけません。

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そう。あと例えば、地方のお洒落なスターバックスってありますよね。そこに行くと色んな人が観光地を背景にフラペチーノの写真撮っているんですよ。それもインスタ映えというユーザー行動。おそらくその投稿された写真を誰かが見て、それをきっかけにフラペチーノを買うという消費行動はどこかで発生しているかもしれません。でも消費行動だけを追っていてはInstagramにフラペチーノの写真をあげる彼女たちの動きは何も見えてこないわけで、そのデータを見誤ると間違ったマーケティング施策になってしまう。

ユーザー行動の多くはSNS上で可視化できるうえに、ほとんどの人が色んなSNSを重複して使っている。そうすると日本国内で7~8000万人がSNSを使って発信している中で、どのSNSを使って発信するかなんてユーザー側に任せるしかない。

どこのプラットフォームで自社商品が出てきたとしても、炎上するような内容でなければそんなに不都合はないですよね。それをここのメディアはとか、あそこのメディアはとか言い出した途端、メディアごとのCVRとかCPAとかっていう話になってしまい、もちろんそれで改善はできるかもしれないですが、全体最適化という意味ではそれは改善の余地がある。あくまでマーケティング施策全体を見て売り上げを伸ばしていくという考え方であれば「どこかのSNSにアップしてくれればいい」という考え方は重要です。

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なるほど。しかも国内のSNSで一番ユーザー数の多いLINEはダークソーシャル(データが開示されていないので分析不可の意)ですもんね。それでいうとジゲンさん的にはTwitterを得意とはしているものの、Twitterに投稿してほしいというわけではなく、あくまで口コミが発生しやすく、分析がしやすいという点で活用しているということですね。納得です。

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ソーシャルメディアマーケティングを考える上で大事なことなので、もうちょっと詳しくお話します。食卓をイメージして下さい。


真ん中に誕生日ケーキがあります。とても美味しそうです。 それをお母さんは単身赴任中のお父さんへLINEで写真を送りました。「このケーキ、お兄ちゃんが選んだのよ。」

お父さんはその写真を使ってfacebook に「うちの娘も16歳になりました、この前まで小学生だったのに早いなぁ」と投稿。

お兄さんはtwitterで「妹の誕生日。パティシエジゲンのケーキほんと美味い。でもチョコレートケーキが良かったなぁ」とツイート。

誕生日の娘さんはInstagramで、「お母さんがパティシエジゲンでケーキ買ってきてくれた。子供の頃から毎年ここのケーキ 。お母さんは私の好みをわかってる!#パティシエジゲン」とアップする。

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さて、企業がソーシャルメディアを活用する際に「どのソーシャルメディアを活用しよう」「ケーキだからInstagramかな」って運用は本当に正しいのでしょうか?そんなのはユーザーに委ねれば良いのです。7000万のパーソナルメディアを活用するとはこういうイメージです。

更に言うなら、ケーキを「ブランディング」に置き換えてみるとよいですね。テーブルの真ん中にあるのは、企業がブランドを表現した商品、つまりテーブルの真ん中にブランドがある。家族はそれぞれのコンテキストから違う表現でUGCとして発信するわけ。 もう一度、家族の発信を読み返してみてください。様々な心象風景が読み取れるはずです

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なるほど、お兄ちゃんの照れ隠しまで、微笑ましく思い浮かべられます。ユーザーのストーリーを思い浮かべられるかというのはマーケターとして大事なことですね。

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はい、そういうことです。過去にジオマーケティングをやっていたことがあるのでその話を例にすると、出店計画を立てるときに商圏分析ってしますよね。ある場所に出店しますとなった時に、商圏分析で半径300mに人がどれくらい住んでいるかとか、幹線道路の交通量とかを見るじゃないですか。それで十分な消費者がいると判断したとします。

でもそのエリアに川が流れていたとすると、そこに橋が架かっていたとしても「人ってなかなか川を超えない」。このようなユーザー心理を考慮できないと出店計画を見誤ることになりえます。

出店したあとにやっても後の祭りですが、会員データから来店客をマッピングすると、橋の向こうからの客は極端に減ります。

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確かによほど名店か嗜好性の強いお店じゃないと橋を渡ってまで行かないかも。

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以前、出店しようとしている場所の住所を入れると、その周辺の人口情報や交通情報が一発で出るツールを開発したことがありまして、いろんな方に使っていただいてたんですけど、その時も「もしそこに川があるのであれば必ず別途調査してください」と伝えてました。基本的に人は川を越えない。

さらに言えば幹線道路も超えない。あとは交通量調査だけ見て十分な交通量があるから大丈夫だろうと思っても、交通量が多いということは渋滞が起こっている可能性もある。地元の人であれば「渋滞があるところには行きたくない」という心理が働く。だからその場合は交通量だけじゃなくて時速を見ないといけません。時速が遅すぎると渋滞が起こっているということだし、逆に速すぎると素通りされてしまうので、渋滞もせず流れすぎない場所を選ばないといけないんです。

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ここでいう交通量調査とか人口データという定量的なもの、川を越えないとか、渋滞があるところには行きたくないなどの目に見えない部分がユーザー心理ということですね。

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そう、それをちゃんと理解せずに対象がデジタルになった途端、データドリブンだ!と言って定量データだけ見てると間違った方向に行ってしまう。今日言いたいのは、デジタルマーケティングが今のような形になって、はや20年くらいたった。いわゆる定石というやり方が積み重なっているんですけど、その定石が異なるデータ、特に定性情報と組み合わさるとどう変わるんだ?というのをそろそろちゃんと議論しないといけないよねということです。

これからのコンテンツマーケティングは「中」と「外」で考える

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またまた前置きが長くなりましたね。コンテンツマーケティングの話にいきましょうか。コンテンツマーケティングは何のためにするのでしょうか?

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一般的なのはSEO対策ですよね。自然検索結果の上位に表示させてそこから自社サイトへ集客するためなど。また、昨今だと集客のみならず、採用の広報的な意味合いも強いですよね。

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そう。ただコンテンツマーケティングには「中」と「外」という考え方があると思っています。わかりやすくここでは自社サイトを商品ページとしましょう。

「中」のコンテンツマーケティングは商品ページという「静」のプラットフォームに集客するための施策で、これがいわゆるコンテンツSEO。商品ページってそんなに頻繁に更新されないですよね。それに対して「外」というのが外部メディアのコンテンツで、他媒体でのインタビュー記事や商品紹介など自ら関わっているものもあれば、自然発生したUGCなども含む。これらはSNSという動きが早い「動」のプラットフォームへ誘導させるための施策と考えてみましょう。

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例えば名刺入れが自社サイトで1,980円で売ってます。商品ページを見たけれど、ぱっとしなかったので買わずに離脱しました。明日またこのサイトに訪れて商品を買いますか?

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買わないですし、そもそも訪れないですね。

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そりゃそうですよね。再訪しても情報はなにも変わってないんですから。新しい情報が追加されたりとか変わっていればいいんですけど、商品ページはそう頻繁に更新できないですし、最初から購買のきっかけとなる情報を網羅しておくことも難しい。

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広告的にはリマーケティングで追っても商品ページが代わり映えしないのでCVしないパターンですね。

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このようなケースにおいて、「外」のコンテンツマーケティングの役割というのが、商品の情報を可変させること。例えば外部メディアを使って、この名刺入れは実は高級ブランドと同じ工場で同じ皮を使っていて、でもロゴが入ってないだけなんですとか、実は欧州のデザイナーに静かなブームで愛用されているとか。商品ページの情報は簡単に可変させることができないので、こうして「外」で可変させた情報をSNSで発信したり拡散させることで、指名検索を通して商品ページに誘導する。

そして外部メディアのコンテンツをたくさんの人に見せるためにはメディアの数が必要。メディアAが発信した場合と、メディアBが発信した場合とで、メディアのポリシーや編集者の編集方針にある程度任せて発信させていくと、同じ名刺入れでも多角的な情報発信ができる。その公式SNSアカウントのフォロワーの質はそれぞれに違うので、同じ名刺入れについてのコンテンツを色んなメディアで発信することで多角的な情報を色んなフォロワーに届けられる。

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コンテンツSEOで作った自社メディアのコンテンツを外部メディアで少しリライトして発信することで、今まで届けられていなかった層に届けられるということはよくありますもんね。かといってこの”情報の可変”をコンテンツSEOでというのはできなくて、同じような記事が同じドメイン配下にあふれてSEO的にも良くなさそうですし、そもそも可変させても届くユーザーの質は前とほぼ変わらない。

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例えば同じコップに半分入った水でも「これは1杯の水だ」「半分もある」「半分しかない」「半分は空で、半分は満タンだ」「そもそも水ではないかも」などなど、色んなタイプの人がいますよね。ペルソナをしっかり準備したうえで作成される商品ページというのは1,2種類くらいの人にしかあてられないんですよ。だから色んなタイプの人を網羅するために外部メディアを利用する。


出典:https://www.facebook.com/classicalmusichumor/

いまデジタルマーケティングの中心に来るべきは自社サイトではない

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あとはTwitterで商品の紹介をして商品ページのURLを投稿する人っているでしょ。あれは「動」という動きが早いプラットフォーム(小さい歯車)に「静」のプラットフォーム(大きい歯車)の動かない情報を送っているのでミスマッチが起こる。じゃあどうすればいいのかというと、やっぱりコンテンツという中間の歯車を置くことでスムーズに歯車が噛み合って、情報の速度差を埋めて回ってくれるわけです。

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SNSからいきなり商品ページに飛ばされてもなかなか購入まではいかないですよね。だからこそコンテンツを経由して、ちゃんと興味を持ってもらったうえで指名検索から誘導するということが大事。コンテンツSEOだけでは「静」のプラットフォームに対してユーザーが自発的に来るのを待つしかないので、これからは「動」も用いて自ら積極的にユーザーを獲得しに行く動きが必要で、その際に必要なのが外部メディアという中間の歯車ということですね。

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これまではコンテンツSEOで自社サイトへのアクセスを増やすことがコンテンツマーケティングでした。決してこのやり方を否定しているわけではなく、検索アルゴリズムの変動が激しい昨今ですから、外部メディアとSNSを活用した指名検索を増やすためのコンテンツマーケティングも合わせて、2軸で考えていくことがこれからのスタンダードだと思います。

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ジゲンさん的には、いまこの図の中でどの部分が一般的な課題なのでしょうか?

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どこがというか、変えていかないといけないのは「静」の部分ですね。未だにあらゆるデジタルマーケティング施策が「静」を中心としている。デジタルマーケティングといっても運用型広告、SNS、SEO、アフィリエイト、動画などいろんな方法がありますよね。分散型メディアと叫ばれて久しいのにそれらがすべて、いかに自社サイトもしくはLPを中心に、そこにどう集めるかという考え方になっている。この概念自体を変えていかないといけない。

自社サイトへの集客はもちろん重要ですが、ただそれはあくまで数あるデジタルマーケティングの施策の一つ。先に述べたように分散されたメディアそれぞれに役割があるので、いま中心に来るべきは自社サイトではない。冒頭の誕生日ケーキの例でいえば実際に購入したのは母親ですが、兄にも娘にもパティシエジゲンに対してのブランドイメージがあるからSNSに投稿しているわけですよね。なので、私はいま真ん中に来るべきはブランディングだと考えています。

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全ての施策においてまずは想起されることが大事ということですか?

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そう。例えばSNSに投稿されたUGCからブランディングを通してGoogleで検索されるみたいな感じですね。私が考えるマーケティングっていうのは、費用対効果高く見込み客を集めてそれを売り上げや利益につなげるすべての行為です。

特に中小企業にとって費用対効果は死活問題。無駄なお金は一切ありませんから。私の場合ブランディングできている状態を指名買いと定義したうえで、費用対効果が高いということを絶対条件にしているので、やればやるほど広告費が上がるということもない。

口コミを積層させるのに重要なのはULSSASと生産管理

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最近でいうと「サウナ」なんて最もいい「外」のコンテンツマーケティングの事例ですよね。サウナ店の人たちがいくらサウナは良いよっていってもそれほど人気にはならないんですけど、色んな人が色んなところでサウナのコンテンツを作ってSNSで「サウナー」って呼び名で発信・拡散しまくっているから、それまでまったくサウナに興味が無かった人までサウナに興味を持ち始めている。

サウナのためにわざわざ東京から静岡まで行く人も少なくないみたいですもんね。多分サウナの例は自然発生なものだと思うんですが、この一連の流れを戦略としてすべてできるところってあるのでしょうか?

参考;【狂気】「家を捨ててサウナで暮らす生活」って実際どうなの?実践者に聞く
参考:銭湯神ヨッピーが語る!東京都内のおすすめ銭湯&交互浴のススメ

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それができるとめちゃくちゃ強い企業になると思うのですが、おそらくあまり存在してない。今は少し落ち着いてるかもしれないですけど、塩麹って流行りましたよね。あれもピークまでの流れはほとんど自然発生的なんです。

多分最初に誰かが塩麹を使ったレシピかなにかを公開して徐々に共有されたことでさらにレシピが投稿された。そして料理に使う人が増えたので塩麹を販売し始めるECサイトが増えて万能調味料という認識が広がり、漫画家がマンガを描き、テレビや雑誌で取り上げられるようになり、テレビCMも流してさらに爆発的に増えていった。

塩麹ブーム全体の流れ

塩麹ブーム全体の流れ

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前回記事の三次切り分けでいう②の「UGCは発生していないが、指名検索がある」に該当するのであれば、ULSSASを回すことで口コミを積層させることはできます

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そうして口コミを積層させることができれば、ネタを集めているWEBメディアが勝手に記事を書いてくれたりする。書かれた方もUGCが増えて嬉しいし公式垢でリツイートして更に拡散する、書く方もPVが増えるのでwin-win。特に最近は「今の流行りもの」というテーマの記事は多いですから。

そしてマスメディアはULSSASのサイクルに下駄を履かせる役目なんです。テレビCMをやれば口コミ出るでしょっていう人がいますけど、それを継続できる人は天才。何本かくらい複数やれれば1つはできるかもしれない。でも1つでも莫大なコストかかるのに中小企業が何本もCM流せないですよね。できたとしてもそれは一瞬のバズで、口コミが積層することはまずない。口コミ起因かCM起因かなんてデータを見ればわかる。

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それをテレビ放送後も積層させていける形を作っておかないといけなくて、その設計がULSSASであり、UGCを使わないといけないということですね。ただ、ブランドによってはUGC活用が難しい場合もあるかと思うのですが、その場合はどう考えればいいのでしょうか?

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ラグジュアリーブランドとかは難しいですよね。実施の可否を決める方法はただ一つ、公式アカウントでUGCをRT出来るか否か。出来ないのなら今まで通りクリエイティブを工夫して広告でアテンションすれば良いだけ。

何も全ての企業に勧めてるわけではなくて、特に有効な「口コミがあって、指名検索がでる」一次切り分けであれば、是非ともやって欲しい。それ以外は絶対的に推すわけではない。

ただひとつだけ言いたいのは、UGCを活用しなくても、UGCは出続けるってこと。ラーメン屋みたいに「撮影、SNS投稿禁止」って張り紙したり、公式アカウントで訴えますかね?それこそブランド毀損してしまうよ。

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炎上を止めようとすればするほど、さらに炎上してしまうというやつですね。

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この前、新宿の横丁に行って来たら、外国人が沢山いた。お店は中国語や韓国語、英語でメニューを書いて集客の努力をしていた。でも中にはわざわざ外国語で「撮影禁止」みたいな張り紙を掲示してるお店もあった。

明らかに訪日観光客はいなくて、日本人でさえ疎らでした。日本に来て食文化を堪能し、それを母国の友人にシェアする事を禁じられたら、入店しようとは思わないですよね。そのお店のポリシーは尊重します、何か嫌な思いをした可能性がありますし。話を戻すと、活用の有無に関わらず、UGCを止めることは出来ない。積極活用するかしないかは、三枚におろしてから考えても良い。

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なるほど。UGCを活用すると決めたとして、ULSSASの設計をしておいても口コミが積層せず下がっていくということはあるのでしょうか?

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あります。一番多いのは出荷が追い付いてないパターン。基本的にポジティブなUGCはお客様が手に持った数以上には出ない。なのでモノがなければ口コミは出ないし、むしろがっかり感からマイナスになる。昨年の酷暑で凍らせたスポーツドリンクが売り切れて口コミが爆増しました。「ない、困る」「売り切れたってよ、マジか!」みたいな感じ、

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だからこれからは生産管理がすごく重要なんですね。せっかく順調に口コミが積層されていても、生産が追い付かなければ口コミはすぐに減っていくので、ちゃんと予測を立てて、常に安定供給できる状態にしておかないといけないわけですね。

おとなり中国ではUGCからPGCへ

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あと話が変わるけど、中国ではUGC(User Generated Contents)の次の流れ、PGC(Professional Generated Contents)が始まっていて、プロフェッショナルが台本作ってコンテンツを作り情報を発信する感じ。

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UGCの次はPGCですか。動きが速いですね。

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それから中国のインフルエンサー(KOL)は自分で仕入れてC2Cで売ったりするから、日本とはかなり異なる。インフルエンサーって便宜的に書いたけど、それをやる人はバイヤーもいれば一般人もいるし、規模の小さいマイクロKOLみたいな人もいる。それを有機的に繋ぎ合わせて口コミやざわつき感を醸成したりするのがプランナーの仕事だったりもします。

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最初はいちユーザーで企業の商品を紹介していたバイヤーが、その延長で会社を立ち上げて小売販売を始めるみたいなイメージですか?多少の仕入れならまだしも大手ブランドなどが卸すとなるとかなり難易度高そうですが

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ソーシャルバイヤー用のプラットホームが色々あって、バイヤーとブランドをマッチングしてくれるので、売れ筋の商品を仕入れるのは難しくない。中国のインフルエンサー化したバイヤーは一般人でもフォロワーの規模が日本とはまるで違います。

日本の場合は、そんなに人口がいないのでフォロワーの多い芸能人をPGCとして、芸能事務所がマーケティング企画して販売するというのが今後の流れかもと予想しています。ネット版のテレビショッピングみたいな感じ。

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となると中国は商品紹介だけする日本のインフルエンサーよりも進歩していて、今後日本はそこから多くのことを学んでいかなければいけないということですね。

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その通りですね。紹介だけのインフルエンサーマーケティングは極一部のユーチューバーみたいな人を除けば、違う形に変容していくのではないでしょうか。

最後に話がずれちゃったけど、元に戻すと、在庫がしっかりとあっても、どこかをピークに口コミは少しずつ下がってきます。商品やサービス単位で口コミが頭打ちになる限界数があるんですね。その時にどうやって下支えして口コミをさらに積層させていくかというのは次回に(笑)

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第5弾(笑)

アナグラム編集後記

ジゲンさんの第4弾となる今回のインタビュー。まさかの第5弾に含みを持たせるかたちで終了してしまいました…。過去3つの記事はジゲンさんの得意とされるTwitterを活用したマーケティング施策などを中心にお話しいただきましたが、今回はこれまでの3つの記事と比較すると、広域な内容だったかもしれません。

昨今は様々な決済サービスが出てきており、「キャッシュレス」が普及することはほぼ間違いないでしょう。それに伴い、企業側は取得できる消費行動データが増え、ジゲンさんの言う「ユーザー行動と消費行動には違いがある」という視点を持っていなければ、今後はより一層消費行動データに目がいってしまうかもしれません。口コミというユーザー行動が重要というのはSNSが出てくる以前から言われてきたことだとは思いますが、その重要な口コミの多くが可視化され、分析できるようになったのはSNSが普及してきたから。それを活用しない手はないですよね。

また、外部メディアを活用してはいるものの、その役割が漠然としていた方も少なくないのではないでしょうか?外部メディアの目的を自社ではできない、「情報を可変させること」と明確にしておけば、どのようなメディアを選ぶべきなのか、どのような内容にするべきなのかというのも明確になるでしょう。

ジゲンさんは「私は私の領域外のプロの意見は尊重しています、ただし、どんなものでも20年も経てば錆が出てくるのは当然」というのを今回のインタビューも含め、これまでに何度か口にされていました。決して特定のやり方を否定しているわけではなく、全体を最適化するためのにはどうすべきなのか、今なにを優先すべきなのかというのが根底にあり、今回のインタビューはその部分がよりいっそう垣間見えたように思いました!

文:賀来重宏
編集:阿部圭司/ヤン・フーゲンディック
写真:賀来重宏