テレビ離れの原因はテレビそのものではなく周囲のメディアの凋落によるもの。これから重要なのは新たな生態系を理解し、全体を最大化させること|jigen_1さん第5弾

  • 関東

ジゲンさんシリーズもついに第5弾まできました。前回までの記事はこちら。

第1弾:本当のインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは?
第2弾:口コミ拡散のためにはコンテンツが1番、では2番は何に?|jigen_1さんが語るツイートが拡散する仕組みとは
第3弾:Twitterマーケティングを代表とするSNSマーケティングはただの手段。適しているか否か、まずは3枚におろしてから考えないと|Jigen_1さんの第3弾
第4弾:消費行動とユーザー行動を見極めて、昨今のコンテンツマーケティングをどうしていくべきかを考える|Jigen_1さん第4弾

口コミがピークを過ぎて下がってきたとき、そこからさらに積層させていくためには?と含みを持たせるかたちで終了した第4弾。第5弾ではその答えに迫るとともに、4マスメディアの時代からどのように生態系が変遷し、その変化の中でどのようにマーケティング活動をしていくべきなのか、どのようにソーシャルメディアを活用していくべきなのかに迫ります。

第4弾までのおさらい。まずは切り分けて考える。

アナグラム

前回の含みの通り、ついに第5弾まできてしまいました。今回は前回お聞きできなかった口コミ数がピークを過ぎて下がってきたときに、そこからさらに積層させていくためにはどうするべきなのか、をお聞きできるのでしょうか?

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そうですね。出し渋るわけではないですが、その答えを話す前に伝えたいことがあるのでまずはそちらのお話をできればと思ってます。

私はもともとBtoB営業の出身で、中小企業の経営者でもありました。マーケティングと定義されたものは色々あると思うのですが、中小企業の社長からするとそれってつまり経営そのものですよね、と見えてしまう。でもそんな風に抽象度高く言ってしまうとマーケティング活動としての切り分けができてこないので、何をやるべきかが明確にならない。ジゲン流切り分けメソッドとでも言えば良いかな、一緒くたに議論するのが嫌いで、私はいちいち事象を切り分けて考えています。

BtoB営業という立ち位置で切り分けてマーケティングを定義すると「費用対効果的に見込み客を集めて、売上と利益につなげる諸活動」ということになる。

特に重要なのは「費用対効果的」というところに区切りをつけることで、大企業はともかく中小企業は広告予算が限られていて、営業目線からすれば「営業マンがマーケティングを兼ねて市場調査から集客までをする」のが理想という中小社長の典型でした。

アナグラム

立ち位置の違いということですね。

jigen_1

そう。立ち位置が違えば手段は変わります。費用対効果的に見込み顧客を集めるというところにフォーカスすると、広告予算の限られているベンチャー企業や中小企業にとってソーシャルメディアは非常に有効な手段となります。少しでもそういった方々が活用できるヒントを得ていただけると嬉しいです。だから、ソーシャルメディアなんかよりTVの方が効果高いよというような石油王は読まなくて結構です(笑)

その点を踏まえて、これまでのこともおさらいしながら話をしていきますね。第4弾まで記事を公開し、UGCの話をたくさんさせていただきました。UGC自体は今に始まったことではないですが、各社でもUGCの活用を標榜し始めており、様々な方法や施策が共有されているのは非常にいいことだなと思います。

第2弾でリツイートされるにはコンテンツが1番、2番目が行動分析ということをお伝えしましたよね。良質なコンテンツを作ることが一番なんです。でも作ったコンテンツがバズるかどうかというのはよほどのコンテンツ制作の天才でない限り再現性がない。例えば映画。映画監督とかプロデューサーとか、ストーリーを作成する人はかなり特別な才能を持った人ですよね。それなのにヒットする映画とそうでない映画がある。どんな監督でも手がけた映画を毎回ヒットさせるというのは並大抵のことではありません。

アナグラム

そうでない人が圧倒的多数ですね。

jigen_1

そんな天才たちでも制作には再現性があるとしても、ヒットに再現性はない。そこを理解できていない人はとにかく質の高いコンテンツを量産しないと!という思考になってしまうのですが、現場の一番の悩みはコンテンツを継続的に発信することであり、「コンテンツを作ればいける」という考え方は現場感覚からは遠すぎる。

アナグラム

確かに企業のソーシャルアカウントを担当している方の話を聞くと、何気ないことを発信しても意味がある感じがしないし、結局何を発信すればいいのか分からないという声はよく聞きます。

jigen_1

そうして自分がやっていることの意味や価値が見いだせずにソーシャルメディアのオーガニック運用が手抜きになってしまうのは非常にもったいない。第3弾でお伝えした「切り分け」という考え方を再度図で説明しますと

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①すでにUGCが発生している(且つ指名検索もある)
②UGCは発生していないが、指名検索がある
③UGCもないし、指名検索もない

自社の商品やサービスで「①すでにUGCが発生している」「②UGCは発生していないが、指名検索がある」のであれば、そもそもコンテンツ=商品なわけなので、Twitterの行動分析からフォロー数が少なく、ツイート数が多い人をフォロワーに集めて、UGCが発露する確率を高めた方が良いですよということなのです。

アナグラム

まずはここの切り分けをして、そもそもソーシャルアカウントのオーガニック運用をやるべきなのかを判断する必要があるということですね。

jigen_1

あくまで確率をあげましょうという話で、誤解して欲しくないのはUGCを操作しましょうという話ではないですよ。UGCは操作できません。拡散してくださいって言って広がるものでもないですし、拡散をやめてくださいと言って止められるものでもないんです。

アナグラム

バズるコンテンツというものに再現性がないので増やすも減らすもコントロールのしようはないですね。バズってほしい!これはバズるぞ!と思って投稿したコンテンツほど拡散されないこともしばしば……。

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それは企業対フォロワー、つまり1対nの一方通行の関係だからなんです。その関係性においてマーケットを動かすというのは、4マス時代にはその考え方でもよかったかもしれませんが、ソーシャルメディアというものが登場した今ではなかなか難しい。

これは第4弾でお話ししましたが、その商品についてどのように、どのソーシャルメディアで発信するかはユーザーに委ねるしかない。TwitterでとかInstagramでとかではなくどこかのSNSにアップしてくれればいいくらいに考えるべきなのです。そこのイニシアチブは消費者にあります。だからこそ1対nの関係ではなくN対nでの関係性で情報が拡散された場合は、低コストで最大限の効果を得られる可能性が高いと考えています。

テレビはまだオワコンではない。

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少し範囲を広げた話をしますね。私が以前デジタルエージェンシーで働いていた時は「CPA至上主義」に圧倒されていました。デジタルは費用対効果が計測できる、一方テレビは費用対効果が明示できないのでどれくらい貢献しているかが分からないとか言ってましたからね。

アナグラム

明らかにテレビ側とデジタル側とで今以上に大きな溝がありましたよね。デジタル側の人はテレビは数年で無くなるとまで言っている方も少なくなかった。

jigen_1

そう。それはお互いにとって本当に不幸だなと思います。

2012年ごろに「テレビはなくならない」という内容のレポートを書いたら「そんなわけない!」って却下されましたからね。テレビはオワコンと言う方も多いですが、一方テレビの影響ってまだまだ大きいぞ、という声を上げる方も最近は増えてきました。数年前に予想されていたよりもその影響力は落ちていない。それぞれが自らの立ち位置を守るためにポジショントークをするのは仕方ないことだとは思いますが、テレビがいいのかデジタルがいいのかという論争に意味はなく、そこに終止符を打ちたくて、これまで切り分けといった話をさせていただきました。

アナグラム

切り分け方によってはテレビが効果的な場合もありますし、デジタルが効果的もある。そこを一緒くたにしてしまうのは意味がないと。

jigen_1

テレビの影響はいまだに大きく、特に地方や中高年層への影響度は継続しています。ラクスルが手軽にTVCMを実施できるプランを発表したのは記憶に新しく、時代に沿ったとても良いサービスだと思いました。TVCM放映翌日の市場の賑わいなどは今でも健在ですからね。

アナグラム

運用型広告を見ていても明らかにTVCMによる指名検索の伸びは大きいですからね。効果が明示できないから意味がないと言えないのは事実です。

jigen_1

おそらくテレビはオワコンと言われているのは、テレビの視聴者離れという側面だけを見て言っているのではないかなと思い残念に感じています。そもそもテレビ離れの原因はテレビそのものではなく周囲のメディアの凋落によるものではないでしょうか。

周囲というのは新聞・雑誌・ラジオのことです。旧来の4マスメディアはお互いに相互作用していました。新聞にはテレビ欄やラジオ欄があったことがそれを物語っていますよね。そして、新聞を見た人がラジオやテレビへと流れていたし、雑誌ではテレビで取り上げられたものが特集され、逆に雑誌で特集されたものがテレビに取り上げられることも多かった。

その後スマートフォンが登場し、圧倒的に可処分時間を奪っていったことでテレビよりも先に新聞・ラジオ・雑誌離れが加速したんですね。結果的に相互作用していたテレビも影響力が相対的に下降してしまったと考えるのが自然です。

アナグラム

確かに新聞はWEBメディアに代替され、テレビ欄はテレビ本体の機能として組み込まれ、ラジオは今だとradikoだけで完結してテレビとの相互作用は少ない。かつての4マスがスマートフォンの登場によって分断されたことで影響力が落ちてしまったのですね。

jigen_1

「影響力が落ちていると言えるはずだった」が正解かも。先ほどもお伝えしたようにテレビの影響力はまだ強い。それは新聞やラジオに代わってインターネットが台頭、なかでもソーシャルメディアが新たにテレビと相互作用するようになったからではないでしょうか。

例えば、テレビドラマの内容がいち早くソーシャルメディアで拡散され、その番組を見ていない人も「UGCでアテンション」されてテレビを観るようになる。あるいはTVerのようなVODで観る方もいます。

アナグラム

すごく分かります。特に最近はテレビドラマや映画の話題はTwitterで拡散されているのをよく見ます。天空の城ラピュタの「#バルス祭り」もその典型的な例ですよね。

jigen_1

おっしゃる通り。それともう1つテレビの影響力が落ちないのは、ソーシャルメディア上の口コミ数や検索数などでテレビの影響を可視化できるようになったことも大きい。それを有効活用するような番組制作ができるようになってきた。とはいえ製作現場はかつてのように潤沢な制作費があるわけではないので苦しいみたいですが。

つまるところ、今マーケターとして必要とされるべきなのはデジタルの効果を最大化できることだけでも、テレビの影響を最大化できることだけでもなく、旧来の4マスメディアの生態系からどのように変わってきたかを理解できて、生態系全体を見たうえで効果を最大化できる人だと思います。そのなかでテレビが他のメディアに取って代わられたりするのならば、それは生態系が変わっていくだけの話なのです。

デジタルシフトの本質はデジタル広告を実施することではない

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ちなみにテレビによる口コミとソーシャルメディア運用による口コミ数とでは、指名検索の波形というのは明らかに異なります。テレビは口コミ数と指名検索が同タイミングで起こるのですが、ソーシャルメディアによるものは口コミ数と指名検索には若干のずれが生じる。

アナグラム

ということは指名検索は売り上げに直結している可能性が高いので、逆引きすると売上の増減がテレビによるものなのか、ソーシャルメディアによるものなのかが分かるということですね。

jigen_1

その通り。「いや、波形は一緒だよ」って人は1対nの使い方をしているからで、N対nになっていれば当然のように時差が生じるはずです。あとテレビにはGRPという指標がありますよね。デジタル側の人の中にはGRPなんて効果が不明なので意味がないという意見をよく耳にします。

しかし店舗の仕入れ側からするとGRPはマーチャンダイズの1つの目安となっていて、その数字を参考に棚割りを決めている部分もあるので、売り上げを左右しているのは事実。棚が割られないことには商品は買われないですからね。

アナグラム

消費者視点で見るとどうしてもCMを見たからお店で商品を購入したとは必ずしも直結しづらいですが、仕入れ側の視点で見ると確かに…!

jigen_1

間接的な指標に頼っていることについて問題提起をすることは私も受け入れますよ。そこのギャップを埋める指標は今後必要となるし、既に研究は進んでいるはずです。一方デジタル側として運用型広告領域にも意見を言わせていただくと、レポーティングにおいてよく指名検索と一般検索を別物として評価をせず、合算しているケースがありますよね。もし指名検索が運用型広告による貢献だと明示できるのであれば納得性がありますが、そうでないのであれば2つを分けたままで平均で報告しない。指名検索に寄与してない部分までCPAの良化に加算するのであれば、GRPが不透明といっているのと同じなのではないかと思います。

かといってリスティング広告やSEOをやめましょうという話をしたいのではもちろんありません。中小企業にとっては指名検索を増やすにはソーシャルメディアが有効なのと同じように、テレビにはテレビを使うべきポイント、SEMにはSEMを使うべき領域があって、企業のステータスや業種業態によって、切り分けや順番があるよねというだけのことなんです。

前にマーケティアの記事に出ていたチーズケーキのフィナンシェなんてお手本ですね。彼らのビジネスが進むにつれてマーケティングの選択肢も変わるはずです。

4マス時代に各媒体が相互作用していたようにソーシャルメディアを使って新たなメディアの1つとして相互作用する関係性を再構築すればいい。デジタルシフトの本質はデジタル広告を実施することではなくて、マスとデジタルが融合しつつある時代にあって、すでに消費者の方が先にデジタル化、マスの取捨選択をおこなっており、あわせて新たな生態系を構築する方向に企業もシフトするということです。

アナグラム

最適化の行く末は収斂だって言いますよね。良くも悪くもCPAを可視化できるようになったことで目に見えてなかったけど本来必要だったアテンション施策までもが削られてしまったケースは少なくなさそうです。見えるものは最適化できるけれど見えないものは最適化できないですしね。

UGCの下降を食い止め、さらに積層させるには

jigen_1

さて、そろそろ前回の答えにいきましょうか(笑)

アナグラム

お願いします(笑)

jigen_1

まず前提として、第3弾でお話しした【①すでにUGCが発生している】と【②UGCは発生していないが、指名検索がある】を対象としています。いずれもソーシャルメディアの活用によってUGCを増やすことは可能ですが、UGCによって指名検索が積層されてきてもいずれはピークを過ぎて落ちていきます。

その時は発想を2次切り分けに切り替えてコンテンツマーケティングを行うのです。バズるような商品は別として、口コミは原則的にユーザーが商品を手に持った数より発生しませんが、コンテンツ自体を拡散させることは手に持った量には依存しません。コンテンツを拡散させれば口コミ数は増えるので指名検索を増やすことができます。

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上図のようにUGCが下降気味になった場合はコンテンツやRTを駆使して下から叩くようなイメージで高い位置をキープするようにします。1次切り分けと2次切り分けの中小企業はいきなり莫大な予算をかけてプロモーション施策をやるのではなく、まずはここまでやりましょうと。ここまでやった後にUGCの積層が高い位置からテレビCMやデジタルの施策をやれば、はるかに効率はよくなります。

コンテンツマーケティングは冒頭の再現性の話と矛盾しているという読者も出てきそうですが、あくまでオーガニックのUGCがN対nで発生するようになればコンテンツのデリバリーの難易度は下がるってことで、その状態でこそ広告を使うのが中小企業にとっては得策であると考えているわけです。

前回、PGC(Professional Generates Contents)という話を少ししたと思いますが、これも有効な施策の1つです。インフルエンサーマーケティングはそのインフルエンサーに良質なフォロワーがどれだけいるかということに左右されるのですが、PGCはプロフェッショナル(専門家)でさえあればいいのでフォロワー数は関係ない。フォロワーが少なくてもリーチは広告で広げることができますから。インフルエンサーだと1万とか5万インプレッションであるのに対して、PGC+広告だと簡単に100万インプレッションは出せますよね。ただし、コスメなどのインタレストグラフの頂点にいるインフルエンサーはいますので、インフルエンサー施策がダメと言っているわけではないです。

アナグラム

まさに「費用対効果的に」という部分の切り分けですね。ソーシャルメディアのオーガニック運用で下地が出来た状態だと、出来ていない状態でTVCMをうつよりも費用対効果が高いと。オーガニック運用においてどのようなフォロワーを集めるべきかというのは前回までにお話しいただいたのですが、その後の運用において必要なことなどはありますか?

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ULSSAS[UGC/ユーザー投稿コンテンツ、Like、Search1(SNS検索)、Search2(Google/Yahoo!検索)、Action(購買)、Spread(拡散)]のLike部分のハックですね。このLikeはいいね!するってことだけではなく、何らかのアクションをすることで各メディアのアルゴリズムにどう影響するかってことを意味しています。インスタグラムがいいね!の非表示をおこないましたが、この変更はインフルエンサーマーケティングなどの手法に大きな影響を与えるでしょう。Twitterのいいね!もタイムラインの表示を大きく左右することになります。

この点から言うと、フォロワーを獲得したら次はエンゲージメント率を上げるということが非常に重要になります。TwitterもFacebookもInstagramも全てフィードは基本的に時系列ではなくて最適化された順に流れてきますよね。Twitterだと最適化された[ホーム]という画面と、時系列になった[最新]という画面があるのをご存知ですか?

アナグラム

知りませんでした……。

jigen_1

デフォルトだと[ホーム]に設定されていてほとんどの人はそのまま使用しているので、その条件下で自分のツイートを相手のフィードの最初のほうに表示させるには相手からのエンゲージを獲得しなければいけません。さて、質問ですが、なぜ私がTwitterアカウントでフォロワーと積極的にコミュニケーションを取り、会話をしたりリツイートをしているのでしょうか?

アナグラム

!!! なるほど、そういうことですね…!確かにメディア側にとっても[ホーム]で使ってもらった方が、興味のある情報がフィードに流れてきやすいですし、そうすると会話やリツイートが増えてアクティブ率も高くなる。

jigen_1

「会話をしてください」というのがTwitterの方針なんです。だから会話しやすい人を上位に表示させるための機能なんですね。ウザければ[最新]に変えればよい。ただし、一定の時間を過ぎると[ホーム]に戻ってしまいます。さらに2台持ちって人も多いかと思うのですが、片方を「最新」にしてるのに、もう一方は[ホーム]に戻ってたりする(笑)

アナグラム

マジですか。。。徹底してますね。

jigen_1

マジなんです。

さて、もちろんエンゲージの前に、まずはフォローをしてもらうことが大事です。ただそれも前回お伝えしたようにフォロー&リツイートキャンペーンでフォロワーを集めても懸賞アカウントばかりで質の高いフォロワーは集まらないので、丁寧に自社のサービスや商品に興味のあるアカウントをフォロワーにするといった努力が必要。

一方的に情報発信だけをしている公式アカウントをよく見かけますが、公式アカウントのツイートを見てもらうためには、いいねをもらったり、リツイートしてもらったり、リプライをしてもらったりというエンゲージメントがアルゴリズム攻略的に必要ってことなんです。そのためにUGCが出てきたらいいねやコメントをするといった地道な運用をしましょう、そうするとコンテンツが届きやすくなります。

アナグラム

確かにこの方法だと単純にコンテンツの中身でバズを狙うよりも再現性が高い。

jigen_1

そう、だからソーシャルメディアのオーガニック運用は大事なんです。例えば太郎さんがAという商品についてつぶやきました。その結果いいねもリツイートもなく流れていったとする。さて、太郎さんはそのあとまたAという商品についてつぶやきますか?

アナグラム

つぶやかないでしょうね。

jigen_1

ですよね。やっと出てきた1UGCが何にもならず無くなってしまう。非常にもったいない。なので「良いUGC」が出たら公式アカウントでリツイートをするなど、RTをする基準を決めておく。そうすると「公式アカウントがリツイートしてくれた!」という喜びがあり、それによってブランドへの好感度も上がりますし、再びUGCを出してくれる可能性が高くなる。

さらにリツイートをするということは、太郎さんに対して自社アカウントのフォロワーを分け与えることにもなるのです。

自社のフォロワーを分け与える

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多くのユーザーはフォロー30、フォロワー50みたいなプライベートグラフでTwitterを使っています。会話できる母数が少ないのが難点、そこに太郎さんのツイートをリツイートして自社のフォロワーに伝える。もし1万くらいフォロワーがいれば1人か2人は太郎さんをフォローします。つまり太郎さんにフォロワーを分けたことになる。

第3弾でお話ししたような方法で、インタレストグラフで繋がったフォロワーを集めたアカウントを作っておけば、リツイートをすることで太郎さんとフォロワーとの間で会話が生まれることになる。「○○私も買いました!」「私も○○食べてみたいです!」「○○見たことあります!」といった感じで。1つしか発生しなかったはずのUGCが5にも6にもなっていく。言い換えれば毎月のUGCが1000出ている企業はそれが5000、6000にもなることを意味している。そうなると企業が発信する1対nの関係ではなく、N対nの関係で拡散がはじまる。太郎さんには数十フォロワーしかいなくてもリツイートは数百まで伸びていくことも全然ありえる。

アナグラム

「フォロワーを分け与える」ですか。貰うためにはまず自ら分け与えないといけない。なんだか人間の心理のようですね。Give and Takeではなく、Give Give Give!であると。

jigen_1

第2弾でプライベートグラフで繋がっているアカウントではツイートは地域を超えないという話をしたかと思います。一方インタレストグラフは地域は関係なく全国津々浦々で繋がっているので、この方法だと地域を超えてどんどんと広がっていきます。フォロワーを分ければ分けるほど自分自身のアカウントが強くなっていきます。つまりこういうことです。

jigen_1

なんのSNSを使ってもかまわない、別に熱烈なファンでなくてもいい。ただの感想でも良いから商品を中心とした会話を増やすこと。なにげない会話のキーワードを拾いそれを拡張していくのが人々の習性なのです。ひとづてに伝わるから時間差が生まれる、だからフリークエンシー出過ぎ問題も解決できる。しかも自社のアカウント運用に関わらず同時多発的に全国各地でUGCがでる。お金を払っているわけではないので費用対効果は当然良くなります。冒頭に言った「費用対効果」にこだわった結果がULSSASを回すことなのです。

さて、ここらへんで今回は終わりましょうかね。同じ分量のレポートをあと3つ用意してきましたが、さすがに長いね(笑)

アナグラム編集後記

今回の取材でジゲンさんが繰り返し仰っていたのは、「分断ではなく、切り分けをしないといけない」ということ。生態系が変わっていることを理解せず、それぞれのメディアを分断して考えるのは、自然界においては森だけを守って川を汚染させるようなこと。みんなが望むのはそうではないはずですよね。

マーケティング全体の大きな視点を持ちつつも、Twitterのオーガニック運用において微細な点までハックしているジゲンさんはさすがだなぁと感じた取材でもありました。インタビュー前に「すごい奥義を用意してるから!」とおっしゃっていただいたように今回もすぐに実施することのできる運用のコツまで伝授していただいたので、ソーシャル運用に関わる読者の方にはぜひ実践していただきたいなと思った次第です^^

ちなみに第3弾では映画『カメラを止めるな!』の監督と同じシャツで取材を受けていただいたジゲンさん、今回は座波ケニアさん(@kekekeity)の新ブランド『keniamarilia』のメンズ着物シャツ第一号とのこと。服装にも抜かりなくUGCの発露を仕込む、さすがのジゲンさんでした…!

文:賀来重宏
編集:阿部圭司/高梨和歌子
写真:賀来重宏