4分間で350本売ったと話題の「Mr.CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)」をご存知でしょうか。そんなチーズケーキを考案したのがミシュランの星付きレストランで長年シェフとして勤めてきたという肩書をお持ちの田村浩二さん。現在は Mr. CHEESECAKE の他、複数の事業を手掛ける事業家として活躍される田村浩二さんの料理人という面だけではなく”経営者”としての素顔にも迫りました。
「自分の作ったもので人に喜んでもらう」という本質は今も変わらず
さまざまなメディアでお見かけする機会が増えましたね。田村さんと言えば言わずもがなチーズケーキなのですが、改めて立ち上げのきっかけや動機をお伺いしたいです。
なぜInstagramでチーズケーキを売りはじめようと思ったのでしょうか。
売り出したというか、昔からチーズケーキがすごい好きだったんですけど、世の中に売っているチーズケーキでぼくが心の底から美味しいと思うチーズケーキがなかったんですよね。
最高のチーズケーキというイメージは常に持ち続けていたので、それを友人の誕生日に自分で作り始めたのがきっかけです。そしたら、「めっちゃうまい!!」と自他ともに認めるものが出来たのでInstagramのストーリーズに載せたんです。そうしたらびっくりするくらい「あたしも食べたい!どこで買えるの??」と連絡が来たのが始まりといえば始まりですね。だから最初から売りはじめようと思っていたというか、普通に興味の延長線上でしたね。
正直こんなことになるとは思ってもみませんでした。その投稿をした当時、ぼくはシェフだったのでレストランに来たお客さまからもストーリーズの投稿していたチーズケーキを食べたいとお声がけいただいて。そこで販売というか…ほぼ配る感じで渡したところから「美味しい!」と口コミで自然に広がったんです。
田村さんはフレンチのシェフで、店舗でこそ本領を発揮といいますか、実力が試されるのかなと思ったのですが、チーズケーキが思わぬ反響を呼んだことで何か違和感のようなものは感じませんでしたか?
ぼくの中ではごく自然の流れで違和感はなかったですね。
それまで料理人は一流にならなきゃいけないとか、星を獲らないといけないとか、そういう目に見える部分で我武者羅に頑張っていたんですけど、『ゴ・エ・ミヨ(2018年度版)(※)』に期待の若手シェフとして賞をいただいた時に、それ自体は喜ばしいことだったんですが、賞を獲ったことでぼく自体や料理は変わらないのに、ぼくの周りが一瞬で変わってしまったという感覚というか、違和感を受けました。
普通であれば賞を獲って嬉しいと思うのかもしれないですが、一般の人はぼくが何を思って、どんなことを伝えたくて料理を作っているかというより、どんな賞を獲っていて何に載っているかみたいなことでぼく自身を評価、判断するんだなと感じましたね。
賞自体やそれを獲得するために努力する事を否定するわけではないですが、賞を獲ったこと自体にはあまり意味がないのだな、という事に気づいたんです。
(※)ゴ・エ・ミヨ…ミシュランと並ぶ強い影響力を持つフランス発祥のレストランガイド
だから、事前情報無しにしても単純に誰が食べても美味しくて、シンプルなもので人を幸せにしたいなと思ったんです。それがたまたまぼくの場合はチーズケーキだった。
「世の中はお金じゃない!」といえるのは年収で数千万円稼いでいる人だけである、みたいな、足るを知る、ではないですが、そこに到達した人だから言葉に力がありますね。
正直な話、チーズケーキを事業化しようとか、チーズケーキを売りたいから作ったということでは全然なかったんですけど、万が一売れた時のことは想定して作っていました。当時シェフをしながらで本当に時間がなかったので、オペレーションをどうしようかなとか、凄くめんどくさいレシピにすると再現性がなくて沢山は作れないな、みたいなところは意識はしていました。
それにInstagramに載せたから売れると思わないじゃないですか。でも、実際売れたので、単純に自分の作りたいものを作って、それが売れたというのがきっかけだったという感じです。
田村さんの作りたいものとニーズと、それぞれのタイミングが絶妙にマッチしたんですね。
どのタイミングで事業化というか、シェフを辞めてまでMr.CHEESECAKEとしていけるなと思われたんですか?
2018年4月6日にInstagramにチーズケーキを載せてから4月28日までの最初の1ヶ月に1人で90万円ぐらい売って、それまで全部InstagramやFacebookのDMでやってたんです。
めちゃ大変ですね…!
そうなんです。お客さんから買いたいですと連絡をもらったら値段を伝えて、支払方法や、郵送先の住所のやり取りも全て一人でDMで対応していました。
それはシェフをしながらですよね…?
はい。でも、やっぱりシェフをしながらだと流石にしんどくなってそのことを知り合いに相談したらBASEを教えてもらったので、4月28日頃に販売場所をBASEに替えました。BASEに替えてからは毎月200万円ぐらいの売り上げは立ってましたね。
毎月レストランとは別に売り上げが立つようになって、レストランをやるというイメージもなんとなく自分の中にはあったのですが、50、60歳になってまでできる仕事ではないなともどこかで思っていたんです。
体力的にだったり、レストランの売り上げが[客数]×[客単価]×[営業日数]で決まってしまうので、伸ばす努力ではなく、下げない努力というのが自分に合わないなと思っていて、何か他のことをしなきゃなと漠然と考えていたんですよね。
改めて、これからどうしようかなと思ったときに、当時チーズケーキで1人単月数万円ほどの売り上げがあったので、「最悪一人で1日8時間チーズケーキを作っているだけでも生きていけるな」と思い、レストランをやらない可能性にかけてみようと、紆余曲折もあったんですがレストランを辞めました。
チーズケーキが理由でレストランを辞めたわけではなかったのですね。
はい。元々在籍していたレストランが年内で閉める予定だったこともあり、それまでは所属している予定だったんですけど、なにぶん辞めるのが急だったのでパトロンみつけてお店出すというのも何か違うなと。
チーズケーキ自体がシェフを辞めた直接的なきっかけではないんですけど、チーズケーキがなかったら今でもどこかのレストランで働いていた可能性が高いですね。
心の余裕というか…多少なりとも食べていけるという自信があったんですね。そういうの大事ですよね。
今でこそ10分で完売してしまうチーズケーキとして有名ですが、そのチーズケーキを食べたいと多くの人から選ばれるために意識して実施されていることはありますか?
Twitterをやるぐらいですかね。SNSで食べてくれた人にリプライをしたりファボをしに行ったりと基本的なことだけです。
コミュニケーションはすべてSNSで取っているので、コミュニケーションが常に取れる状態にしておくということと、お客さんからフィードバックが来た時にそれに対応することぐらいしかしていないです。後は、ありがたいことにみんなが買ってくれて勝手に拡散してくれるというのがずっと続いている感じですかね。
Twitterではよく「Mr.CHEESECAKE(ミスチ)買った!」というツイートを見かけていたのですが、買ってくれた人が自発的に拡散してくれているなんて驚きです。Mr.CHEESECAKEのチーズケーキを買ってSNSにアップするまでの一連が一種のステータスのようなものになっていて、ちょっと変な言い方ですけど、時流に乗っている感じですよね。
そうですね。多分、チーズケーキ単体だけで生まれている流れではないと思っています。例えば、ぼく自身がシェフなのにTwitterをやってるとか、シェフなのにレストランではなく起業したとか、レストランを辞めて自由な働き方をしているとか。働き方改革の文脈でも取り上げられることも多いのでそういう意味では時代にハマったのではないかなと。
ぼくの周りからは「レストランを離れて新しいことをしている」と言われるんですけど、ぼくからするとレストランの料理であろうが、チーズケーキであろうが「自分の作ったもので人に喜んでもらう」という本質的なところは変わっていないんです。
だから、働き方が変わったと言われるのですが、自分の精神的にはあまり変わっていないので何とも言えないのが正直なところですね。もちろん物理的には変わったんですけど。
Instagramで投稿していたり、信念をもって何かを届けたいというD2C(Direct To Consumer)のような時代の流れがMr.CHEESECAKEを加速させているということもありそうですね。
本当にその通りです。料理界隈でネットをやっている人がいない真新しさだったり、口コミでぼくに「チーズケーキを食べたい!」と言ってくれる人が増えていったので、ただ必死でやるしかないというのを続けてきただけなんです。そこに、D2Cという言葉が乗っかったり、周りの人が勝手に言葉をくっつけたりしているだけですね。
だからこそ、再現性がないところが難しいところだと思っています。ぼくは美味しいものを作ることしかできないので、それを知ってもらうためにどういう文脈でSNSを使うとか、noteを書くとか、やれることを1つ1つやっている感じです。
料理業界での働き方の選択肢を増やしたい
「美味しいもので人を笑顔にする」ためには、レストランという選択肢1つだった業界に、田村さんがレストラン以外の選択肢があるという風穴を開けられたのではないかなと思うのですが、ご自身で業界への影響は感じられますか?
ありますね。去年の7月頃は、ぼくのやっていることに興味を持ってくれるのは全体の1割もいなかったんじゃないですかね。
他の料理人からは「いつかお店出すんでしょ」とも言われていました。レストランをやらないという選択肢をぼくが持っているとすら周りは想像していなかったと思いますよ。そう思っていた矢先、今年の4月ぐらいに働き方改革の文脈で飲食の業界紙から取材が来たんです。それでやっと飲食業界もそんな風になってきているんだなと感じました。これは素直に嬉しいですね。
料理業界には良くも悪くも職人気質な箇所があって、他のメディアを拝見してもシェフ自身、自らメディアとして表にたっていくこと自体、今まであまりなかったのかなと思うのですが周囲からの風当りも強かったりしましたか?
ありましたね…料理人は料理を作っているのが一番いいみたいな感覚が強いんですよ。もっと言うと、感覚が強いというよりは、その選択肢以外を知らない人が多いから「料理人は料理を作るもの」という固定概念が強いです。だから、料理を作っていないと楽をしているとか、手を抜いているという見方をされますね。
最近ちょうどシェフの集まりがあって「チーズケーキ作ってるんでしょ」とか色々話を聞かれたので「スタッフがいるので、スタッフにつくってもらっています」と言ったら「ああ、スタッフにやらせてるんだ…」みたいなことをさらっと言われました。
つまりは、飲食業界って「スタッフ」=”そういう存在”なんですよ。やってもらっているというよりは、やらせているという感覚があるんですかね。ぼくの考えでは、スタッフがいないと製造量も増やせないし、組織も大きくしていけないから、製造スタッフは核なんです。
今後、Mr.CHEESECAKEでもマーケティングをやっていく予定なんですけど、少し誤解を招くかもしれませんがマーケティングをできる人は世の中に沢山いますよね。でも、ものを作れる人はそんなにいないと思っているので、スタッフはすごい貴重で大切な存在なんです。
昔の組織というか…ヒエラルキーのように師匠とその他みたいな構造が今まで続いてきているんですかね。
そうです、そうです。あと、基本的にレストランでも何でも売上がないと生きていけないじゃないですか。でも、料理業界はお金を儲けるということに対して、拒否反応みたいな、「金儲けは悪だ!」みたいな感覚があるんですよね。
わかります。職人気質の業界や、昔ながらのビジネスは特にその傾向が強いですよね。
そうなんです。でも、その割にはレストランはさっき言ったみたいに店舗の大きさで大体の利益が決まってしまうんですよ。つまり、スタッフの給料を増やそうと思ったら、会社の利益を減らすしかないんです。そうすると会社は新しいことへの投資にお金が回らなくなる構造になってしまっているのですごい難しい業界なんです…。
それって、売り上げを上げようとすると「拡大路線いっちゃたね」みたいな風にみられるってことですよね。これ、僕らの業界でもあるんですよねぇ。
まさに!うちもキッチンを大きくしたり、店舗を作ろうとするとチーズケーキのクオリティが下がる印象を持たれやすいんです。でもそれって、本当に良いものを本当に良い状態で広げるという感覚がないだけだと思っています。ぼくは、「本当に良いものを本当に良い状態で広げる」という感覚はとても大事だと思っていて、ぼくが一人でチーズケーキを作っていた時よりも事実、今のチーズケーキのクオリティは上がっているんですよ。
なぜなら、オペレーションが構築されて、スピーディーに仕込みができます。システマチックにやれているから労働時間も変に伸びることはないのでミスも減る、その結果、クオリティも安定する。今後はより大きな場所で、今よりも更にスタッフを増やして、雇用を創り、生産量を増やしていく。こんなに素敵なことはないじゃないですか。
最高な循環だと思います。
飲食業界の職人気質な風潮の中で田村さんが実際にMr.CHEESECAKEで結果を出されていることは、ご自身が業界へのアンチテーゼとしての意識を持たれていたりするのでしょうか?
最初は結構思っていたんですけど、ぼくのやっていることの難しさを理解してくれる人って全体の一割もいないんじゃないですかね。たとえ理解していくれる人が一割だけでも、ぼくは価値があると思ってやっています。だから、最近は業界を変えたいという意識よりは業界に変わってほしいと思っている若者たち、特に女性たちの受け皿になれるといいかなと思っています。
人それぞれ価値観が違う中でそういう選択肢もあるよ、ということに気づく人が増えるといいなということですよね
そうなんですよ。僕がスタッフの給料を増やしたいのも働く人がハッピーになるためにはこうしたほうがいいよね!という提案をしているだけで、決してレストランがダメだと否定したいわけではないんです。
Mr. CHEESECAKEではネット上で食べている人のリアクションや、どんな人がどんな風に食べているかがキッチンの中にいてもわかるんですよね。自分たちのやっていることが世の中にどのように影響を与えているとか、会社の売り上げも基本的に調べればわかるようになっているので、自分たちがこれだけ売り上げを作っているというのも身近に感じられる環境を作っています。
だから、普通の飲食店よりも働くモチベーションが保ちやすい環境だと思います。そして、そういう環境を求めている人って業界内には結構いるんですけど、業界がそのニーズにフィットしていないから辛い思いや悲しい思いをしている人が多いんです。ぼくは、そういう人たちが元気に働ける場所を作るだけでもすごい価値があると思っています。
実際にキッチンにお邪魔させて頂いて感じたんですけど、スタッフの方すごく楽しそうですよね。ちゃんとしたものを作りたいと思って入ってきくれるので、田村さんが次にやりたい、作りたいことを一緒に話たりもできるじゃないですか。
そうですね(笑)ネットの使い方とかも話すんですけど、入社当時はまだTwitterのフォロワー600人ぐらいだったスタッフのアカウントが今は、もうちょっとで4000人になるのかな?(2019年9月時点)
さなえごはん :@sanae_foodgeek
え!?
しかもツイートしているの料理のことだけですよ(笑)
ぼくがめっちゃリツイートしまくって支援はしているんですけど、そもそものコンテンツが良くないとそこまでフォロワーは増えないですよね。そのスタッフは個人でケータリングの活動もしていて、Mr. CHEESECAKEが個人の仕事にも繋がる一例ですね。今は出版の話もきたりしていて、そういうスタッフが一人いると他のスタッフの刺激にもなるし、ぼくと一緒に働く価値にもなっていくんですよ。
まさに働き方の多様性をMr. CHEESECAKEのスタッフの方、一人ひとりが体現されているのは素敵ですね。
ぼくはずっと仕事人間だったんですけど、自分の将来を考えると結婚して子どもができたら家族の時間を取りたいと思うタイプなんですよ。だから、レストランで働くってやっぱり時間的に厳しいんですよね。そういうこともあって、子どもや家族との時間をとりながらちゃんと働くためにはスタッフがいないといけないし、スタッフにも同じ環境を作らないといけないと思います。
例えば20代前半から、将来のビジョンをもって仕事をしていれば結果って全然変わってきますよね。それこそ、フォロワーを増やすというのは、言い換えると小さなファンクラブができているということでもあるので「お菓子教室やりましょう」といったら集まってくれるメンバーが1回に5人か10人いるだけでも全然変わってきます。
そして、そういう将来が意識できていればどういう風に働こうかとか、日々の生活をどのように過ごそうかというのは勝手に考えられるじゃないですか。
今の時代だからこそやらなければならないことがたくさんあるので、仕事だけでもダメだし、プライベートだけでもダメだしというのをちゃんと意識してほしいなとスタッフには伝えています。
飲食業でそういう考え方を教えてくれる環境ってほとんどないですよね。田村さんのお話を伺っていて美容業界も構造が似ていて、過去にMarketeerで取材させて頂いたDearsの北原さんのお話と似ている点が多くあります。所謂、「やりがい搾取」のような風潮が美容業界にもあって、給料安くて無限に働いても、いざ店長になってみたら月給15万円みたいな現状があるんです。
本当にそうですね。そもそも利益の出にくい業界でテクノロジーも入ってなく且つ、改善する意識を持っている人が少ない時点で結構ヤバいんですよ。だからこそ、ちゃんと考えればやりようはあるし、お金の稼ぎ方とか、お金の向き合い方、時間の使い方がすごく大事だなと思っています。
オフラインとオンラインが交差する場所を作りたかった
ちょっと話がそれるんですけど、今回出店されている新宿伊勢丹のポップアップはどのような意図があったのか教えて下さい。
自分から話をしに行きました。レストラン時代の友人が新宿伊勢丹さんとのコネクションを持っていたので「伊勢丹さんに出したいんですけど」と相談をしたら、9月に空いている週があったので無理やりねじ込んでもらいました。
基本はオンラインで成立しているんですけど、成立しているからこそ人と直接触れ合うタイミングがないので、実際のファンの人と顔を合わせる場所を持っておきたかったんです。あとは、物理的に露出を増やしたいという意図もありました。
なるほど、PRの一貫でもあったんですね。
そうですね。ネットで食料品を買っている人って実はまだ10%もいないんです。なので、オンラインだけでは繋がることのできないお客さんへもMr. CHEESECAKEを広げたかった。
でも問題もあって、Mr. CHEESECAKEは冷凍なので店舗で買うとなると持ち歩きの時間とか利便性を考えると店舗販売のハードルが高いんですよ。そこで、常温で販売できるものが欲しいと思っていた時に、Mr. CHEESECAKEリニューアルイベントの時にお土産で作ったフィナンシェの反応が思いのほか良かったんです。
せっかく今回ポップアップやるんだったらポップアップにしかないものを売りたいと思い、今回もフィナンシェを売る運びになりました。
その時のツイート拝見していました!皆さんツイートされていて、個人的にすごく食べたいなと思っていました(笑)
に楽しんでもらえるように変えてます。
価格も4320円(箱入り)
3456円(袋入り)リピーターの方は袋を是非!
お土産用に作ったフィナンシェ評判良ければ商品化するので、食べた人の感想お待ちしてます!
年内にはパリでのポップアップ目指して活動中です!!!(何も見えてない) pic.twitter.com/LsJxTpEq15
— タムさん🧀(Koji Tamura )Food Expander (@Tam30929) August 2, 2019
ありがとうございます(笑)もし、今回の催事でフィナンシェのリアクションが良かったら、パッケージもちゃんと作って正式に商品化したいなと思っています。
そして、フィナンシェは逆にオフラインでしか売らないって決めてるんです。オンラインでは出さずに、今回のポップアップのような催事をやるたびにフィナンシェを出すイメージでいます。
なるほど!そうすることで、店舗に行く理由にもつながりますね!こういった思考こそマーケターですねぇ。
そうなんですよ。オフラインの価値をどう作るかというのを考えていて、オンラインは誰でもアクセスできるから、Mr. CHEESECAKEの場合は販売直後によーいドンの勝負になるんですけど、それって多分今だけだと思ってます。
今後、製造体制がちゃんと出来て生産本数が増えたら、誰でも買えるようになるし、そうしていかなきゃなと思っています。今は体制が追いついていないから結果的に”幻のチーズケーキ”みたいにしまっているだけでぼくの中では買いにくいとか、なかなか手に入らないのってそんなに価値がないんです。
そういうことなんですね!
いち消費者の立場だと、「予約の取れない○○店」のような希少性を謳う方が人気店というイメージになりやすいから、飲食ではそのポジションを目指すものだと安易に考えていました。
本来はいつでも買える状態で、認知も上がって且つ、クオリティが保たれている状態が一番難しいんですが、だからこそやりがいもあるのでMr. CHEESECAKEもそこを目指さないといけないと思っています。
ただ、チーズケーキがオンラインでうまくいったからといってフィナンシェもオンラインで売ろうみたいに安易にやると、全部いつでも買える状態になってしまうのはちょっと違うなと思っています。
例えば、オフラインで地方を回ってポップアップを出店した時にチーズケーキと、フィナンシェも置いておくことで”そこでしか買えない”フィナンシェの方の価値が上がるんです。
そして一般的にはまだMr. CHEESECAKEの認知度は高くはないのでネットに詳しくない人が見た時に1本4,000円のチーズケーキと2,000円のフィナンシェがあった時、ほぼ100%フィナンシェに手が伸びるんです。
なので、仮に4,000円のチーズケーキしかその場になかったら値段を見た瞬間にMr. CHEESECAKEを知らないお客さんにはスルーされてしまうんですよね。普通に考えて1本4,000円のチーズケーキって高いじゃないですか。だからこそ、そこに2,000円のフィナンシェがあると一瞬とまってくれるんですよ。
「ん?あれ、何だろこれ?」みたいな小さな違和感で興味を引くんですね。
どこかで情報を見て興味を持ってくれたお客さんがお店に来てくれて、チーズケーキも気になるけど高いからまずはフィナンシェを買って帰ってくる。
その後、フィナンシェが美味しかったらネットでMr. CHEESECAKEのことを調べてくれて、チーズケーキはネットで買えるんだって思ってくれて購買に繋がればオフラインからオンラインの導線になるんですよね。
あ~なるほど!!
ぼくはオフラインとオンラインが交錯する場所を作りたくて、オフラインでしか買えないものという存在が今後大きな価値になってくると思っています。
普通のお菓子屋さんの場合だと、基本オフラインで買うものばかりなのでそれが当たり前で、フィナンシェを作ったとしてもただ棚に置くだけではそこまで大きな価値にはならない。
でも、ぼくらがオフライン専用のものを作るだけで価値になるので、他社のお菓子メーカーなどからフィナンシェが発売されたとしても価値が全然違うんです。
つまり、自分で作ったものの価値をどう作っていくのかと、コミュニケーションをどうとるかというのをすごい考えた時に今回は、新宿伊勢丹でのポップアップという結論に至りましたね。
自分の作った商品の価値を最大化するために
いや、参りました!なるほど!田村さんのおっしゃるオフラインとオンラインってすごく大事な概念なんですけど、誰かからそういう話を聞いたとかですか?それとも自分でずっと考えていたことなんですか?
オンライン上でものが売れて、コミュニケーションが取れて、商品もクオリティを上げていけるとなったときに、オンラインがぼくの主戦場みたいに見えていると思うんですけど、ぼく元々オフライン側なんですよ。
価値を作るとしたらレストランみたいに、そこに行かないと食べれないという価値しか作れなかったんです。だからこそ、今までオフラインでやってきたノウハウがあるので、オフラインとオンラインを上手く使う導線を引いたら、それが他の人との差別化になるんですよ。
確かに、オンラインの人というイメージがありましたが実は逆だったんですね!
正直な話、オフラインでぼくが料理を作ればそれだけでも価値としては成立してしまうんです。でもそうではなく、オフラインを使って人を呼ぶミシュランのような、わざわざ旅をする価値がある何かを上手くカタチにできないかなと思ったんです。そのために、自分の作った商品の価値を最大化するためにはどうしたらよいのかをすごい考えました。
なぜなら、レストラン時代は毎月メニューを変えていて、年間180品の料理を作ってたんですよね。でも、どれも一生懸命作ってもめちゃくちゃいいなと思うメニューって5~10個ぐらいしかないんです。
仮に、お寿司屋さんとか季節によって旬が変わるネタだったらまた来年もこれが食べたいとかになるんですけど、フレンチって「あれ、去年もこの料理やってたよね」みたいになるんです。
新しさを求めに来ているからですかね?
そうなんです。だから、苦労して試行錯誤したクリエイティブが1年で死ぬんです。
それは辛い…。
そうやって一生懸命作ったものが消費される感じが、ぼくは嫌で年間1つでも2つでも良いから本当に美味しいものを作って、それが10、20年生きるほうがいいなと思っていました。
なので、チーズケーキという普遍的で変化を求められない、だけどみんなが喜ぶ商品にすごい価値を感じました。じゃあ、今回ポップアップで売るフィナンシェにも価値を持たせるためにはどうしたらいいかを考えた時に、フィナンシェというお菓子は様々なとこをで売れているものの、あそこのフィナンシェがおいしいよねという商品がないんです。だから、まずそこになろうと。
しかし、チーズケーキが元々オンラインでしか買えない中に、フィナンシェもオンラインで買えるようになってしまうと中長期的に見るとフィナンシェの価値って下がってしまうんですよね。そこで、フィナンシェをオフラインでしか買えないものという位置づけにするとチーズケーキとの対比が生まれて両方の価値を活かすことができるんです。
あくまでもフィナンシェはオフラインでそこに行く価値を生み出すものであり、オフラインでのコミュニケーションツールの1つとしての位置づけということですね!今回は新宿伊勢丹でポップアップをやられていましたが、これから全国各地を回られる予定とかもあるのでしょうか?
全国回るかはわかんないですけど(笑)
極端な話、ただそういう風にするだけでも価値は上がるよねというのをどこまで考えればいいのかなという話です。
効率の中にあえて非効率を残すワケ
今までのお話を通じて、田村さんの「考える」思考って元々働かれていた業界の雰囲気と相反する部分があるのかなと思っていたのですが、もともとの性格なんですか?
性格ですね(笑)ぼく、何をやるにも無駄が嫌いなんですよ。基本的には最短距離を走りたいタイプなんです。
中学時代はずっと部活でほぼすべての時間を野球に注いでいたので、この間にどうやったら野球が上手くなるのかを考えた時に、まず自分の身体を変えないといけないなと思ったんです。ぼくもともと体がめっちゃ細かったので。
今のがっしりとしたスタイルからは想像ができないですね。
中学3年間で30cm身長が伸びて150cmから180cmになったんですよね。それで、横に太る暇がなくて、一番痩せていた時で182cmの56㎏だったんですよ。
それは、がりがりですね…!
普通に食べるだけじゃ太らないんですよ。加えて、部活ではただでさえ走らされるのでカロリー消費が激しくて、筋肉がつかないんですよね。だから、太るためにはどうしたらいいか、食事や栄養のことはもちろん、筋肉をつける方法やトレニンーグを調べたりとか、栄養の摂取タイミングまで考えていました(笑)
中学生でそこまでですか…!ストイックすぎます…!
そうしないと間に合わなかったんです。自分の限られた時間の中で最大の効果を発揮するにはどうしたらいいのかを考えるのが癖というか、好きなんですよね。だからってわけじゃないですけどテトリスもすごく好きで、ゲームが好きというよりはテトリスの仕組みがすごい好きです。ピッタリはめてきれいにパッとなくなるためにはどう積めばいいのかを考えるのが好きですね。
料理人の時も仕込みが4つあったら、4つ同時に終わらせるためにはどういう順番でやったらいいのかをすごい考えます。火にかけるものは先に火にかけたほうがいいとか、それを同時進行で同時にピタッと終わって無駄な時間を減らせるとすごい気持ちいじゃないですか。
すごいわかります(笑)
無駄と非効率って実は違うんです。無駄は嫌いなんですけど必要な無駄っていうのが存在するんですよ。うちだと、チーズケーキの型にバターを塗って、紙を貼る作業がそれにあたるかなと思います。効率を求めるのであれば、植物油のスプレーを型にかけて紙を貼ったほうが絶対に早いんですよ。
でも、チーズケーキの生地にはバターは入っていないので、型にバターが塗ってあることでオーブンで焼いた時に型に塗ったバターが溶けて香りが出るんです。そうすると、オーブン内がバターの香りで充満して、生地にバターの香りが移るんですよね。だから、バターは入っていないけどバターの美味しい香りが入ったチーズケーキになるんです。
それって絶対に美味しさにつながるんですよ。型に紙を貼る作業を楽だからといって効率化の為に植物油のスプレーにすると仕上がりが全然変わるので、わざわざバターを手で塗って紙を貼るという非効率を残しています。
そういう判断ができずに何でもかんでも効率化してしまうと、効率化されているはずなのに結果クオリティが下がってしまうというよく意味のわからない状態になってしまう。
チーズケーキが焼きあがってオーブンを開けたスタッフさんは、オーブンからのバターのいい匂いに包まれるので、幸福度も上がりそうですよね。
そうですね。結構そういういうのを考えるのがすごく好きですね。後は、こうやったときにこうなるとか保険を持つことが好きですね。
保険ですか…?
例えば、道路で信号待ちしている時に車が突っ込んできたらどうしようとか、常に最悪の事態を想定しています。だから、車が左からは来ないなとなったら右だけを意識して、もし車が突っ込んできてもいつでもジャンプできるようにしておくとかあるんですよ。
ああ、すっごいわかる!駅のホームでも後ろから押されてもいいように、重心を後ろにしてちょっと後ろに立って電車を待ったりとかもしますよね?
はい(笑)こういう時に人にこうしたらこうなるよねって考えるのも同じなんです。だから、ネット上のコミュニケーションでもこの人にこういったら喜ぶなとか、ブロックすると裏で色々言われるからミュートしようとか、そういうのをすごく考えるタイプで、相手がされて嫌なこととか、相手がされて嬉しいことみたいのをすごく考えます。
だから、最近やった僕の誕生日のTシャツプレゼント企画は、単純に自分が好きだから作ったんですけど、Tシャツを欲しいと言ってくれる人がMr.CHEESECAKEの本当のファンだと思うんです。ただ、自分が好きで作ったTシャツなのに、本当のファンが可視化できるツールになるんですよ。
ただ1つのことに対していくつもの価値をもたせるというのもすごく好きで、ただでは転びたくないみたいなのがあるんです。伏線回収を意識しているわけではないんですけど何か勝手に伏線になるように行動してきているというか…好きというか、楽しいんですよね。
自らの強みを最大限活かすために…ブームの先に見ているもの
今は「Mr.CHEESECAKE」じゃないですか。今後の展開として、ここから違うブランドを作ることも考えられているんですか?
考えています!考えているんですけど、多分まだMr.CHEESECAKEだけでもっといける部分と、海外に持っていきたいという思いもあるので、どこまで同時進行させるかというのは考えています。
新しいブランドを作るとなると、新しいラインを作らないといけないのでその結果、今の体制だとチーズケーキの製造効率が落ちるんですよ。まだどこまでいけるかわかっていないのに、チーズケーキの製造効率を落として本当にいいのかみたいな判断が難しくって。
新しいブランドを作るときも基本的にインハウスで行うことしか考えていないのでリソースがめっちゃ必要になるんです。オーブンとかも変えないといけないかもしれないし、その商品が冷凍なのか常温なのかによっても変わってくるし、その辺はまだ見えていないんですけど、よくよくは第二、第三のブランドを出そうとは思っています。
今のリソースをベースにどこまでMr.CHEESECAKEがいけるのかを見極めて、その次にいく必要があれば行くって感じですかね。
そうですね。ぼくの強みとしては自分で商品を試作して、商品を作って、自分で売れるところであり、ストーリーまでワンストップで作れるところにあると思っています。
それなのに、現状その強みを活かしきれていないので、本来は新しいブランドを作る方が、ぼくという人間を見た時に、そういう使い方をしたほうが確実にいいはずなんです。でも、それができていないのでやったほうがいいなとは思いつつ、今はまだ難しいかなという部分もあるのが正直なところですね。
そのため今は、少しでも早くぼくのリソースを新しいところに集中できる状態を作れるように体制を整えて、スタッフを育てていかないとなという感じです。
田村さんのTwitterを拝見していて「とりあえず今は目の前のことをただひたすらに」という姿勢も見えていたので、そのような展望をお持ちだったとは…驚きました!これからも、ますます楽しみが増えますね。
傍から見た時に、もったいなくないですか?他のところでこの強みをもっているところってあまりないのになんでやらないの?ってぼくなら思ってしまいますね。
一方で、強みをどう活かしていくかという半面、ぼく自身「個」として認識されているので動きにくい側面もあるなと感じます。
しょうがない部分はありつつも、Mr.CHEESECAKEがブームになってしまったのは、やっぱりいけないんですよ。ブームを作るのはいいんですけど、ブームになってしまうのはよくないと思っています。
ぼくがたまたま選んだチーズケーキというのは、既にチーズケーキというジャンルが確立されていて普遍的な定番アイテムということもあり、チーズケーキ自体のブームが去るということがないんです。そういう背景もあり、Mr.CHEESECAKEというブランドを如何にスタンダードまで持っていくかが勝負だと思っています。
今の感じだとそのまま普通にいけば、伸びは緩やかにはなりつつも「チーズケーキといえばMr.CHEESECAKE」というブランドの立ち位置になれる見込みが立っているのでいいかなとも思っているんですけどね。
合言葉は「仕組みで解決する」
ぼくの特徴としてもう1つあるのが、効率化やシステムの組み方を考えるのが好きです。だから、チーズケーキも基本的には計量しなくてもいい仕組みになってるんです。
計量しないんですか?お菓子作りだと数g単位で計量をしないと味にムラができて美味しくできないイメージですけど…。
クリームチーズとかって業務用だと1㎏の物と10㎏の物があるとすると、10㎏の方が仕入れ値が明らかに安いんですよ。でもうちは1㎏の物しか使わないんです。その理由が、10㎏のものから4㎏を取ろうとすると計量という作業が発生するんです。そして、残りの6㎏をどう保管するかとか、衛生面の問題も出てくる。
でも、普通は10㎏の方が安いからみんな10㎏の方を買うんですよね。けど、1㎏のものを4つ封を開けて出すだけも量は変わらなし、なによりも規格が整っているので測らなくても毎回同じように同じ量が揃うんです。
チーズケーキを作るための材料が10個あるとして、全部計量するとします。仮に全部10gずつズレると100gズレるんですよね。全部10gもズレるとか、そんなことないと思うじゃないですか。
でも、同じ計量の作業が1万回、1億回やると考えた時に10gぐらいいいかとなるのが人間なんです。でも、10個のうち仮に2個しか計量しなくてもいいよとなると、この2個はちゃんと測らなきゃなとなるのもまた人間の真理なんです。
これは目から鱗ですね…。原価の事だけを考えていたら決してたどり着けない領域の話です。
そうなんです。だから、うちではクリームチーズ、サワークリーム、ヨーグルト、生クリームもホワイトチョコもほぼすべて開けて出すだけになっています。レモン汁とコンスターチの2種類だけ測るようにほぼ仕組み化されています。
仕組みとして組むことで材料がぶれないし、計量という目視も必要ないので結構な時間が仕組み化によって短縮できるんです。加えて、メレンゲを六分で立てるみたいな曖昧な基準の作業もはいってません。ただ材料を混ぜて、型に流して焼くだけなので仕上がりもほぼぶれないんです。
特別なテクノロジーを使っているわけではないんですけど、再現性を高めるために計量をなくすとか、属人性の高い作業を減らすとか、そもそも属人性の高い作業が入る商品を選ばないというところからMr.CHEESECAKEは始まっているんですよ。
なるほど!そこまで考えて仕組みを構築されているのは驚きです!こういった話って基本的には経営の話だったりすのですが、ここまで緻密に計算されているとなるとこれはもうロジスティクスの領域になってきている気がします。
仕組み化や属人性の高い作業を減らすという視点は、ブランドを増やす際の商品選びにも同様のことが言えますね。
後は、コンビニで売られている美味しいプリンとかシュークリームのようなお菓子のジャンルも選ばないです。理由はシンプルで、単価が上がらないし、差別化もできない、なによりもいつでもどこでも買えるコンビニには勝てないんですよね。
単純に比較されてしまうんですね。
そうなんですよ。コンビニと比較される土俵に上がってしまうと基本的には勝てないので。そうなると、実は結構次の商品は限られてくるんですけど、限られた商品をなぜその商品を選んだのかというストーリーや文脈も大事だと思っています。
チーズケーキで色んなストーリーが入ってしまった分、他のものにも求めるのが人間なので、結構いろんな文脈を考えなきゃなと思っていてその辺が結構大変なんです(笑)
仕組み化できて、計量が少なく、属人性が低い商品で、みんなが認知しているけど「これ」というブランドのない商品をちゃんと選べば多分ほぼほぼ失敗することはないと思っています。
なんか、実際にお話してみて当初イメージしていた料理人の田村さんというイメージとよりは、経営者よりの方ですね…。
なんというか…良い意味で裏切られたというか…驚いています…!
ありがとうございます。
ぼくはやりたいことをやるためにはやらなきゃいけないことのほうが多いと思うんです。それなのに、やりたいことしかやっていないのを料理業界で今まで沢山見てきているので…。
ぼくはレストランは好きですけど、レストランだけだと生きていけないから先にお金がちゃんと回る事業を作らないといけない、と思いチーズケーキを始めた部分も実はあるんです。チーズケーキでちゃんと利益がでる構造にすれば趣味でレストランをやりたいなと考えています。
なんで趣味なのかと言うと飲食店って趣味が一番強いんですよ。利益を追い求めなくてもいいので、他のレストランが2万円で出すものを1万円で出せるとお客さまは絶対に安い方に行くじゃないですか。その状況をつくるためにはどうすればいいかという逆算も実はあったりするんですよね。
なるほど、目的と目的を達成するための手段を明確に分けて実行されているのが伝わります。
だから、やりたいことばかりやっていたら本当にやりたいことはできないよと自分の周りを見て思うこともあります。
ただぼくは幸いなことに、自分のやりたいこととチーズケーキがうまく重なっていて、その先の未来でレストランをやろうと思ったらいつでもできる選択肢を持つことができています。
シンプルにお客さまがいてくれればそれで事業としては成り立つので、正直周りからの評価も基準もぼくの中ではあまり気にならないです。
自分がいいなと思ったものを作ってお客さまが満足していて、数字が回っていれば本来いいはずなのに、そこに評価がついてこないと、料理人の人たちは自分自身を保ちにくいんですよ。僕はその業界にいたからこそやっぱりそれは「変」だと思っているし自分の作っているものと、それを食べたお客様のリアクションだけで保てる構造の方が絶対にいいなと思います。
ご自身でも数学脳と評されていた通り、会話の節々にはまるでロジックツリーを見てお話されているかのような的確な要素分解と解像度の高さを感じました。色んなメディアのインタビューでお見掛けする田村さんのイメージをいい意味で覆されたインタビューでした。
特に、料理にまつわるお話の時はまるでマンガ『フェルマーの料理』の世界観にいるかのような感覚に陥り、マンガのファンである筆者は終始感動しっぱなしのインタビューでした。また、オフライン出身だからこそのオンラインへの導線作りのお話はマーケターもびっくりの内容だったのではないでしょうか。
「自分のやりたいことをやるために、今やらなければならないことがある」とおっしゃられた横顔はストイックな一面を感じつつも、ご自身の作る商品、また一緒に働く人への愛に溢れた経営者の一面が垣間見えました。貴重なお話をありがとうございました!
文:杉山美和
編集:阿部圭司/齋藤彩可
写真:齋藤彩可