劇的に伝わりやすい言葉を知るには、翻訳者となってくださる方と言葉を紡ぐこと|IKEUCHI ORGANIC 牟田口武志さん

  • 四国

ー「2073年までに、赤ちゃんが食べられるタオルをつくる」
そんな壮大な目標を実現しようとしている会社が、愛媛県今治市にあります。創業は1953年、今年で68年目を迎えるメーカー、 IKEUCHI ORGANIC。そのIKEUCHI ORGANICに、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)、Amazonを経てご入社をされた方が、牟田口 武志(むたぐち たけし)さんです。SNS上でIKEUCHI ORGANIC商品を目にする機会が増えている昨今、牟田口さんはどんな想いと考えを持って様々な施策に取り組まれているのでしょうか?

キャリアの横スライドではなく、「ここで働きたい」と感じる会社を選んだ

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牟田口さんはCCCやAmazon、IKEUCHI ORGANICと、国内外問わず様々な会社をご経験されてきたとお伺いしています。そんな中、意外にも大学卒業後に最初にご入社されたのは、映画製作会社なんですよね。

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はい、シンプルに映画が好きだったので学生時代に、映画館でアルバイトをしていました。そこで見たのは、いい映画の上映後に満席の映画館から出てくる方々は、すごく素敵な表情をしているということ。いい映画を、多くの人に届ける仕事がしたい。ただぼくは映画を作ることができなかったので、映画をビジネスに繋げていく仕事をしようと思って、プロデューサー職として映画制作会社に就職したんです。

「良いものを人に伝えることがしたい」の気持ちは、現職での仕事にも繋がっているかもしれません。

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いい映画を見た後に表情に出てしまうあの感じ、すごくわかります…!前職のAmazonはグローバル企業で、現在と比較をすると、規模も文化も大きく異なる会社と思います。転職時に不安はなかったですか?

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不安が無かった…といえば、嘘になります。条件も全く異なりますし、奥さんとも何度も話し合いをしました。ただ、入社前に多くの社員さんと会えましたし、前代表の池内、現代表の阿部ともじっくりと話をする機会をいただけました。今治本社の工場見学もさせてもらえてこれからこういう方々と働けるんだとイメージできたので、懸念はほとんどありませんでした。

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愛媛県の工場見学まで!奥さまはどんな反応だったのでしょう…?

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そもそもIKEUCHI ORGANICを知ったきっかけは、奥さんと一緒に、鎌倉投信さんの投資説明会に伺ったタイミングだったんです。鎌倉投信さんの投資先の1つに、IKEUCHI ORGANICがあって。奥さんと一緒に素敵な会社だね、と話していたので、その経験はよかったですね。転職を考えた当時の年齢は37歳で、エージェントさんに相談したりヘッドハンティング経由で全く知らない会社に行くというもの、何か違うよなと思っていて。Amazonと近しい業界の会社も受けていたんですが、それだとキャリアの横スライドでしかないな、と思って考え直しました。

お客さんのことを徹底的に考え続けた経験は、どんな仕事でも資産になる

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素敵なきっかけとご決断ですね。入社された前後で感じたギャップはありましたか?

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ほとんどなかったですね。ぼくが新卒で入社した映画製作会社も中小企業でしたし、なんとなく中小企業で働くイメージは持っていました。変わったことといえば、Amazon時代と比べてデスクの大きさが1/3になったくらいでしょうか(笑)

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(笑)

ご入社直後はどんなお仕事を担当されていたのでしょうか?

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最初はWeb担当として入社したんです。ただ入社前から「Web担当だけど、何でもやってもらいます」と言われてましたね。実際に入社して一週間後に「牟田口さん、明日から名古屋の催事ヘルプに行ってください。一週間ほど。」と言われました。

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業務の幅広さが中小企業っぽく、ワクワクします。牟田口さんのご経歴を伺うと、Webに特化したお仕事は多くなかったのかな?という印象でした。

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キャリアとしては、ECやマーケティング業務が一番長く、お客様に商品を伝える仕事は一貫してやってきました。例えば、過去に在籍した会社の業務内で、Webサイトのトップページでどんな文章、どんな画像を表示するとお客さまに商品を買っていただけるかなど、徹底的にテストをしたり。他にもCCCの時に、TSUTAYA店舗の仕入れをしていましたが、現場をまわって映画作品のPOPを書くこともありました。どの作品のPOPを書くか、どう書くとお客さんが借りてくれるのかをずっと考えていて。

伝えることのベースとなる感覚は、そういった経験を通して自然と身についていたのかもしれません。

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当時から、常にお客さんのことを徹底的に考え抜かれていたのですね…!

現在の牟田口さんはどのようなお仕事を担当されているのでしょうか?

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今は営業責任者を任せてもらって、店舗販売、ECサイト経由の販売、国内外の法人さまとのお取り引きを管轄しています。広報・マーケティング業務は担当者が誰もいないので、そこも兼務しています。

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製造以外の部分、社外の方と関わるところは全てご担当されていらっしゃるような幅広さですね。

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社員はみんな流動的に動くことが多いですね。例えば、営業担当が自分ひとりでイベント企画~実施までを担当することもあります。小さい会社なので、「自分の仕事はここまで」と線引きをしてしまうことは許されないんです。逆を言えば、自分がやりたいこと考えてリーダーシップを持って自発的に動けば、まずやってみよう!となる環境です。

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前のめりに動きたい方にとって、すごく働きやすい環境と思います。現場のみなさんが自発的に動けるのは、前提として、そういったことを推奨する文化があるからなのかなと思っています。

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IKEUCHI ORGANICのカルチャーはこうです!というように、具体的に明文化されているわけじゃないんです。ただ、ぼくが入社する前から前代表の池内はずっとトップ営業を続けていましたし、自分で広報も担当していました。代表が全て自分でやってしまうので、後から入ったぼくたちはそうせざるを得ませんよね(笑)

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みなさんそれぞれが池内さんの背中を見て、考え方を自然と継承されているんですね。

10年以上も気づかなかった自分の本質。気づいたきっかけは周りからの評価だった

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最初はWeb担当で入社をしたので、自分に任されたミッションはWeb施策を行うこと、と考えて動きました。ただ実際は、Webだけで完結する仕事ってほとんど無いんですよね。Webで販売するにしても在庫が無いと商品が売れないので、生産部の方とお話しますし、広報の仕事もまわりまわってWebの成果に影響します。社内のあらゆる仕事が繋がるんです。

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間違いないですね!

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最初の転機は、広報を手伝わせてもらったタイミングでした。ぼくが入社した当時の広報活動は、新聞や雑誌などリアルメディアには強かったんですが、Webの情報発信は多くなかったんです。もちろんそこも重要なのですが、もっと、Webとのバランスを取っていくべきと感じていました。

そこでまず、Web向けの情報を発信して、社外のライターさんにしっかりと取材や商品撮影をしていただけるよう、コミュニケーションを取っていて、メーカーとしての考え方や想いを、言葉を通して表現してもらいました。個別にメディアの方とやりとりするようになった結果、新聞やテレビに取り上げられたんです。それを見て池内が「おまえ、来月から広報な」と(笑)

情報の伝え方と表現に徹底的にこだわりぬく

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雑誌や新聞、Web、テレビなど、様々なメディアを通じて情報発信をされていると思いますが、その際、気をつけていることはありますか?

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大きく3つあって「業界・他社批判をしないこと」「嘘をつかないこと」「大げさな表現をしないこと」です。例えば、「うちの製品は他社よりも品質が高いです」など、他社を下げるような表現はしないように気をつけています。

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IKEUCHI ORGANICは本当に多くのこだわりがあるように感じているのですが、一番のこだわりってどこなのでしょうか?

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素材から生産工程まで、環境と安全に最大限に配慮したモノづくりをしていることです。単純に、オーガニックコットンだから環境に良い、ではなく、綿花を生産する農家さんや取引先様とオーガニックな関係を目指すこと、それが大前提としてあります。それがあった上で、やはりベースとしては、製品としてお客様に長く愛用していただけるモノづくりをしていることです。

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素敵すぎます。

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タオルはどれも同じ?と思われるかもしれませんが、お客さんのニーズに合わせた様々な特徴を持ったタオルを製造しています。実店舗ではお客さまがタオルに求めることをお伺いしながら、ご希望にあった種類のタオルをご紹介しています。

例えば高い吸水性を求める方には吸水性が高いものを、乾きやすさを求める方には乾きやすいタオルをご紹介する、などです。ブランドは一つですが用途に応じて様々な織り方のタオルをラインナップしているので、好みが見つからない方は、ほぼいらっしゃらないと思います。一つのブランド内で用途に応じたタオル選びを完結することができます。

IKEUCHI ORGANICのタオルはデザイン、柄の展開をしておらず、ほとんどが無地のタオルなんですよね。それもあって、お客さんから「どのタオルがどの種類か分からない」というお声をいただくこともありますが…(笑)

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個人的にオーガニック960を使ってるんですが、想像を超える柔らかさに感動しています。環境や安全に対する意識の強さは、創業当初からあったのでしょうか?

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創業は1953年ですが、オーガニックコットンを最初に使用したのは、今から21年前の1999年です。当時は今ほどエコが話題になっていませんでした。ただ、エコマニアというか、エコにすごく興味関心が深い方っていらっしゃるんですよね。そうするとその方々から環境の観点で様々な要望が寄せられまして。少しずつですが、コアなお客さんの声を聞き入れながらステップアップしていきました。

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お客さんのご意見をすぐに取り入れる文化は、一朝一夕ではなかなか創れないのではないかなぁと想像しています。どのようにして生まれたのでしょうか?

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池内は元々、松下電器(現パナソニック)でレコードプレーヤーの企画に関わる仕事に携わり、社会人としてのキャリアをスタートしました。そこで最初に担当した仕事は、レコードプレーヤーを買ってくださった方からの愛用者カードに全て目を通して、それに基づいて製品の改善点を考える仕事をしていたそうです。池内は当時からユーザーさんの声を誰よりも大事にしていたそうで、その文化がIKEUCHI ORGANICにも根付いているのかなと思います。今でも、ユーザーの声を誰よりも大事にしているのはやっぱり池内です。

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全てが繋がってくるんですね…!

大学教授の方々に愛されるタオルとは?

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IKEUCHI ORGANICには、ものすごく熱狂的なファンの方がいらっしゃる印象です。なぜ昔から熱狂的なファンの方がいらっしゃったのでしょうか?

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ずっと応援してくださる方はいらっしゃいますが、たくさんいらっしゃった訳ではないはずです。1999年前に自社ブランドを立ち上げましたが、どこの会社ともわからない地方の会社でしたし、最初は誰も見向きもしませんよね。でも当時からタオルの品質は高く、そこを支持してくださるファンの方がいらっしゃいました。メーカーとしてぼくたちが考えていることは、まず商品ありきです。どんなに環境にいいことをしても、どんなにPRが上手くても、商品の品質が良くないとお客さんは買ってくれません。ここがないとメーカーはファンになってもらえないと思ってます。

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当時からファンでいらっしゃった方には、どんな方がいたのでしょうか?

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環境や地域について研究をされていらっしゃる大学の先生が多かったと聞いています。当時はオーガニックコットンでタオルを作る方法は、レア中のレアだったみたいで。あと、風力発電を使った中小企業は日本初でした。大学での研究対象として興味深い会社がある、と見つけてくださったようで。

ぼくたちが運営するメディア「イケウチな人たち。」にも長崎大学の山口先生が登場してくださっているんですが、20年前からずっと会社を見ていてくださっていて、すごく嬉しかったですね。言葉を選ばず言えば、少し変わっているくらいに環境に対してこだわりを持つ方々に好んでいただいていたようでした。

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今のファンの方はだんだんと変わってきているのでしょうか?

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昔は環境・エコにこだわりの強い人が多かったんですが、今、ぼくはそのメッセージ発信を意識して弱めているんですね。これには理由があって、”オーガニック”という言葉を使いすぎると排他的になってしまうリスクも考えないといけないな、と思うからです。場合によっては「オーガニック製品以外を使うことはダメなんです。オーガニック以外は認めません」というような意味合いでメッセージが伝わってしまう可能性もあると思うんですが、それはちょっと違うなと。

そうではなく、まずは商品の良さをきっちりお伝えして、環境価値には後から気づいてくれたら嬉しいんです。最初は「良いタオルがあると聞きました」「◯◯さんが使ってると聞きました」から入っていただいて、より興味を持ってくれた人には、そこからいくらでもぼくたちの取り組みについてお伝えするようにしています。

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ファンの方とコミュニケーションをとる際、牟田口さんが意識していることってありますか?

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できるだけダイレクトにお客さんの意見を聞くようにしています。今はリアルイベントの実施が難しい時期なんですが、オンラインイベントも開催していて、ぼくもできるだけ参加をしています。何十人規模で実施することもあれば、15人ほどの規模でじっくり意見交換をすることもあって。みなさんご自身から一次情報を伺うようにしています。

あと、SNSは全部チェックしていますね。SNSの投稿内容を見て経営陣にも伝えたいご意見を目にした際は、それを直接池内に共有することもあって、すると、池内本人がTwitterアカウントから直接「ありがとうございます!」と返信していることもあります。リアルなお客さんの声は、お客さんご自身に聞かないと分からないですからね。

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アカウントの奥から中の人の体温を感じるようなSNSの活用方法って、ついつい惹き込まれてしまいます。

売上よりも効率よりも、まずは世界観を共有したい

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高円寺の小杉湯さんでIKEUCHI ORGANICのタオルが使えると聞いて、以前、小杉湯さんにお邪魔しました。あの取り組みはどちらのお声がけから始まったのでしょうか?

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あれはぼくからお声がけしました。大学の頃に銭湯や健康ランドにハマったことがあるんですが、その流れで再び興味を持ちまして。自社メディアの「公式note」の編集をしている方が銭湯にハマっていると伺って、じゃあ一緒に行きましょうと。

小杉湯さんにお邪魔してから、ぼくの中の銭湯の概念が変わったんです。銭湯って建物が古くてあまり掃除が行き届いていなくて…というイメージだったんですけど、小杉湯さんは創業から86年経っているのにすごく綺麗でした。タオルの洗濯も畳み方もしっかりしてました。もしこんな素敵な環境の銭湯でぼくたちのタオルを使ってもらえたら、お客さんにも喜んでもらえるだろうなぁと思って、ぼくから小杉湯さんに声をかけたんです。ぜひタオルを使ってみてもらえませんか?と。

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世界観にマッチしていたことがきっかけなんですね。

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ですね。小杉湯さんの脱衣所に「バスタオルは畳んで返してくださいね」などと書かれたイラストもあったりして。間接的に、至る所でしっかりと人が運営に携わっている気配を感じたんですよね。

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イイハナシダナァ。

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タオルって手にとって触れてもらうことが重要で、まず一度体験していただける場を作ることが大事なんです。ただIKEUCHI ORGANICの店舗は、東京はまだ青山にしかないんですよね。そこが課題でした。例えば、高級ホテルに泊まって良いタオルが用意されているのは当たり前ですが、銭湯に良いタオルが置いてあったらびっくりするだろうなと。多くの地元の方に愛される小杉湯さんなので、タオルを通じて、地元のお客さんにもっと喜んでもらえると嬉しいな、とも思ってました。

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実際に小杉湯さんであのふわふわタオルに触れた瞬間の感動は、思わず誰かに伝えたくなるほどでした。

自分たちだけで取り組みを完結しない。社外に翻訳者を見つける

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すごく良い商品を作っているけれども、なかなか消費者さんに知ってもらえない、良さが伝わっていないことに悩んでいらっしゃるメーカーの方は少なくないと思います。牟田口さんがそんな方々に向けてアドバイスをするとしたら、どんなことを伝えますか?

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ぼくは3点あると思ってます。1つ目は、自分たちだけで取り組みを完結させようとしないこと。例えば2013年、創業60年の節目にIKEUCHI ORGANICのリブランディングを行った際は、デザイナーのナガオカケンメイさんにお願いしたんです。もしブランディングを社内で完結しようとしていたら、上手くいかなかったと思うんです。自分たちでできる部分、社外の人に任せた方がいい部分の棲み分けをしっかりするといいなと。

2つ目は、メーカーの翻訳者となってくださる方を社外に見つけること。編集者的な役割の方とも言えるかもしれません。メーカーの中にいると、どうしてもメーカー視点になっちゃうんですよ。自分たちが自信を持つ商品スペックや想いはとても強く持っているんですが、一方で、それが本当にお客さんにとって有益なのか?と言われると、実はそうでなかったりします。IKEUCHI ORGANICは公式noteを運用しているんですが、ぼくが言ってもお客さんに伝わりにくい部分もあるんです。社外の翻訳者さん、編集者さんにそこに入っていただくことで、劇的に伝わりやすい言葉になるんですよね。

3つ目は、お客さまと直接対話をする、意見をもらう場を持つこと。数は少なくても、接点を持ち続けることが大切と思います。そういった場がないと、今の自分たちの方向性が正しいのか、実は間違っていて軌道修正が必要なのかが分からないと思うんです。たとえ非効率であっても続けるといいと思ってます。

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2つ目の翻訳者さんを見つけるためには、どうすればよいのでしょうか…?

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これはもう、情報発信を続けるに尽きると思ってます。いま翻訳/編集をお願いしている方は、ぼくたちが発信していた情報を見て、実際にイベントに参加してくださった方なんですよね。元々他社で働いていて、独立されるタイミングで「自分が良いと感じているブランドを応援する立場でありたい。IKEUCHI ORGANICはすごく良いものを持っているけど、伝え方がそこまで上手くない。よかったら自分に手伝わせてもらえないか」と声をかけてくださったんです。そう言っていただけたのは、ファンの方と繋がる場を持ち続けていたからと思います。

人って、不完全なものをつい応援したくなってしまうところがあるのかなと思うんです。不完全ながらも情報発信を続けていると、きっと応援してくださる人と出会えるのではないかな…と思ってます。

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まずは情報発信をして、自社を応援してくださる方と出会う。なるほどです…!

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熱いファンの方って、時には厳しい意見も言ってくださるんですよね。本音で対話をしてくれる人を作るのは大事です。

牟田口さんにとって、IKEUCHI ORGANICとは?

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最後に2つ質問させてください。牟田口さんにとってのIKEUCHI ORGANICとは、どのような存在でしょうか?

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抽象的になりますが、ぼくにとってのIKEUCHI ORGANICは、自分を律するもの。というのも、IKEUCHI ORGANICの商品や環境に対する考え方は、すごく際立っていて。それに対して公私を問わず、ぼくもそうあるべきな行動を取らないと、イチ社員としての人格、私生活の人格にブレが出てしまう。そうなるとお客さまも不安を感じると思うんです。

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すごくわかります。環境に徹底的に配慮した会社で働いている人が日常生活では環境のことを一切気にしない感じだったりすると、ちょっと違和感があります。

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感じますよね。全てをそうしないとダメというわけではないと思うんですが、少なくとも意識をしていくべきと思ってます。会社は自分の行動を正してくれるような存在ですね。なので、入社をしてから性格が良くなったような気がします(笑)

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牟田口さんにとってタオルとはどんな存在でしょうか?

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日用品の概念を変えてくれたものですね。入社前の感覚だとタオルは消耗品で、半年~一年に一回買い替えて終わりという意識でしたし、タオルを買う際に品質を考えたこともなかった。今はタオルは消耗品、日用品でもなく、愛用品のような存在です。使い続けて年月が経つにつれて、商品に思いが入ってくるんです。入社前、面接を受けた際に購入したタオルを今でも使っているんですが、それを使う度に当時を思い出しますし、機能的な価値だけじゃなく、情緒的な価値を感じるものでもあります。

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私も、「今日は頑張ろう!」と思う時には朝の洗顔後にIKEUCHI ORGANICのタオルを使いたくなりますし、一方で「今日は疲れたな…」と感じる夜には、自然とIKEUCHI ORGANICのタオルに手が伸びます。

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お気に入りのものって想いが入りますよね。これは不思議なお話なんですが、材料がオーガニックであろうとなかろうと、タオルの品質に変わりは無いんです。でもお子さんやペットに好みのタオルを選んでもらうと、見た目は同じタオルでも、オーガニックタオルが好まれることもあって。生き物は、自然に近いものを選ぶ本能を持っているのかなと思うことがあります。

アナグラム編集後記

打ち合わせ当日は東京・青山にある、IKEUCHI ORGANICの店舗にお伺いした。

インタビュー開始前、店舗スタッフさんから、素敵なカップに入った美味しいコーヒーをいただいたのだが、牟田口さんから「環境への配慮のため、うちの会社ではペットボトルは使用禁止なんです。池内の前にペットボトルが置いてあるとめちゃくちゃ怒られます(笑)この店舗で使っている電力も全てグリーン化電力です」とのご説明をいただいたことが強く印象に残っている。

またインタビュー後、写真撮影をしながら、牟田口さんに店内商品をご紹介いただいた。「IKEUCHI ORGANICは、自分を律する存在」とおっしゃっていた牟田口さんだったが、その牟田口さんの足元に見えたのは、環境に負担を掛けずに商品を作ることをポリシーとする米国のスニーカーブランド、オールバーズの靴だった。

形だけの姿勢に留まることなく、至る部分からIKEUCHI ORGANICの本気さを垣間見ることができたような、身が引き締まる貴重なインタビューだった。

文:森 弘繁
編集:賀来 重宏/高梨 和歌子
写真:賀来 重宏