世捨て人から職人、そして経営者となった丸山珈琲創業者・丸山健太郎さん|新しい行動様式に腰を据え、スペシャルティコーヒーを日常飲料へ

  • 甲信越・北陸

1991年、軽井沢で1店舗目をオープンした丸山珈琲。今では軽井沢だけでなく、西麻布、渋谷、新宿、八ヶ岳などに店舗を展開され、コーヒー好きではなくとも目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。今回は丸山珈琲を創業された丸山健太郎さんになぜコーヒーのビジネスを始めたのか、先の読めない中でこれからどのように進まれるのかをお伺いしました。

元々コーヒーを売るつもりはなかった。

アナグラム

まずは丸山さんが丸山珈琲を開業するまでの流れを教えていただきたいです。

maruyama

実は元々コーヒーを売るつもりはなく、世捨て人になりたかったんですよ、そのためにインドを放浪したりしてました。

アナグラム

え、いきなりの展開すぎます(笑)

maruyama

幼少期の頃から仏教、禅、インド哲学などに興味がありました。それで高校を卒業した後にインドを廻って、自由の身になるぞ!と思ってたんですね。

アナグラム

と、とんでもない高校生ですね(笑)

maruyama

ただ、両親はもちろん、大反対。大学へ進学してほしかったと思うんです。それなのにいきなり息子が、大学にはいかないわ、インドに行くと言い出す始末。

結局私は、両親の反対を押し切り、世捨て人になるためにインド的な精神世界にどっぷりと浸かりました。当時は、精神的な世界で生きていくつもりでいたんですが、ある時疲れてしまったんですよね。なぜなら、完全な世捨て人になるのは難しくて、どこかしらで仕事をしてお金を稼がないと食っていけないと気づいたからです。一部の圧倒的な大先生を除いて、ほとんどの人はしっかりビジネスで生計をたてていました。私はスピリチュアル風を装ったビジネスをやりたくなかったので、それならば精神世界からは足を洗おうと。挫折ですね。

アナグラム

目指している時には分かり得ないその世界の裏側、現実的な部分を知ってしまったんですね。

maruyama

それで社会復帰するために、日本に帰国してからは友人のいる軽井沢で生活を始めました。そこで今の妻と出会い一緒に暮らし始めました。そのころ、ちょうど妻の両親が経営していたペンションをやめたばかりで、「空いてるからそこで喫茶店でもやってみたら?」と。そこが今の丸山珈琲本店です。

maruyama

当時はベジタリアンカレーとチャイのお店でスタートし、喫茶店なので一応コーヒーも置いている程度でした。ただ凝り性なので美味しいコーヒーってどう淹れるんだろうと調べていくうちに「どうやら焙煎という味作りがあるらしいぞ」と知り、やり始めると焙煎にのめりこんでしまったんです。それがコーヒーを始めたきっかけです。

アナグラム

てっきりもともとコーヒーがお好きで、こだわりのコーヒーを提供するためにお店を開いたのだと思ってたのですが、違ったのですね。最初からお店を大きくしたいと思っていたのですか?

maruyama

喫茶店を始めて最初の10年は、一流の焙煎職人になりたいという思いしかなく、お店の規模を大きくすることは全く考えていませんでした。ありがたいことにお店の売り上げは徐々に上がっていたものの商売っ気はなく、最初の5~6年は妻の収入の方が多かったくらいです(笑)

コーヒー作りっていわゆる「職人の世界」なんです。元々世捨て人になりたかった私にとって、「職人」という職業は精神性を高めるというスピリチュアルな所と、社会の間にあるちょうど良いソリューションだったんですよね。

とにかく美味しいコーヒーを提供する為ならと、片道1時間以上かけて100gのコーヒー豆をお客さんのご自宅へ配達したりもしていました。 そんな非効率なことでも続けていると、地元のレストランやホテルから丸山珈琲で焙煎した豆を卸してもらえないかと声をかけてもらえるようになり、7年ほどでようやく食べていけるぐらいの売り上げになっていきました。

コーヒー豆は資源戦争。質を高めるためには量を売らなければいけない。

アナグラム

当時はインターネットがそれほど普及していない時かと思いますが、口コミで丸山珈琲を知る人が広がっていったのでしょうか?

maruyama

私は当時ベジタリアンで、オーガニックの八百屋さんから野菜を宅配してもらっていました。今ほどオーガニック野菜の認知度がない中、軽井沢で高価格なオーガニック野菜を食べる人達って、元々食に対する意識がすごく高い方か、軽井沢を別荘地として使う東京の富裕層の方々が多かったんです。これは丸山珈琲の顧客層とあっているのでは?と思って、八百屋さんにお願いして配達のトラックに乗せてもらい、野菜と一緒にコーヒー豆のサンプルを配っていました。

そこから徐々に口コミや紹介で広がっていったという感じですね。当時からうちの豆はどういう人が買ってくれるだろうか?その人に届けるにはどうしたらいいか?ということは考え続けていました

アナグラム

すごい、確かに食にこだわるという点では美味しいコーヒーを求める方は多そうです。当時からしっかりと丸山珈琲の顧客層を狙って動いてらっしゃったとは。まさにマーケティングですね……!

ただ、その段階ではまだ規模の拡大というより、思考は「職人」ですよね。そこからどのように経営者として、売上を伸ばすという考えに至ったのでしょうか?

maruyama

はい、この時もまだ軽井沢本店の1店舗のみで、意識は焙煎職人でした。焙煎に満足がいくようになると、今度は豆の方に興味が移りはじめました。色々調べていくうちにアメリカで流行っているスペシャルティコーヒーの存在を知り、実際にアメリカに足を運んだり、海外のイベントに参加して業界トップの方々や、生産者の方とのつながりを作っていきました。

世界に出たはいいものの、コーヒー豆の売買は基本コンテナ単位なので、1店舗の喫茶店しかやっていない私では良い豆どころか、そもそも豆も買えませんでした。「あぁ、私は豆の品質にこだわってきた結果、品質にこだわるという土俵にすら立っていないのか」と気が付いた時はとてもショックでしたね。

良い豆を買うには売上をあげて、買う豆の量を増やし、まずは土俵に立たないといけない。何事もそうだと思うんですが、コーヒーの世界においても質より量をやらなければいけないんだと気づいたときに、完全に気持ちが切り替わりました。そこから、売上を伸ばしていくためのブランディングやマーケティングをちゃんと勉強し始めました。

アナグラム

なるほど!あくまで根底に品質がありつつ、品質を高めるための規模の拡大だったのですね。そこから東京出店に至るまではどういった流れだったんでしょう?

maruyama

2001年ぐらいからコーヒー豆の産地に足を運ぶようになり、世界の人々とやり取りをしていく中で、「自分は日本ではなく世界と戦っている」という意識が芽生えてきました。世界と戦うためのファーストステップとしてまずは東京のマーケット出るべきだと思い、世田谷の尾山台に進出しました。

コーヒー豆の仕入れっていわば資源戦争なんです。だから世界的にも有名な東京という場所にお店を出すことに大きな意味があった。「本当にいい豆は丸山が抑えてる」「日本に丸山という凄い奴がいる」というポジションを取りたかったし、日本の今後のコーヒー業界のためにもそこを目指すべきだと思っていました。

構造という大きなハードル

アナグラム

規模で対抗していこうとすると欧米の方が、規模はもちろん資金面でも圧倒的に大きいイメージです。そのため、真っ向勝負では負けてしまうのでは?と感じるのですがその辺りはいかがでしょうか。

maruyama

仰る通り彼らは資金力がありますし、交渉も非常に上手い。コーヒー豆の産地はアフリカや南米・中米が中心なので地理的な優位性もある。さらに日本と欧米との大きな違いは、コーヒー豆の生産から流通までの仕組み化ができている点です。

良い豆を作れるポテンシャルがあるのにもかかわらず生活水準の低い生産者さんには様々な欧米のファンドなどから資金援助があります。良いコーヒーを作るための設備投資がされ、また生活環境も改善され、今まで以上に良い豆を作れるようになり、それを欧米企業が買っていくという仕組みです。

アナグラム

そこまで構造化された仕組みができたのは知らなかったです…。日本で同じ仕組みを作るのは難しいのでしょうか。

maruyama

日本の仕組みの中で色々と掛け合ってみたりはしたのですが、この構造の問題を解決するのは相当難しいなと。変えられない問題に労力を割くよりも、自分の力で出来るところをやろうと、 ランチェスター戦略で局地戦をやっているという感じですかね。

アナグラム

つまり欧米式の構造の中に入っていない産地を丸山さんご自身で見つけて取引されているということなんですね。店舗数も増え、規模を大きくしていくにあたっての苦労はありましたか?

maruyama

最初は批判的にとられがちでした。今までのコーヒーとスペシャルティコーヒーはどう違うんだ、インチキじゃないかと言われたり、同業者の方からもコーヒー市場に変な胡散臭い奴が入ってきて、しかもアメリカやヨーロッパと繋がっていてグローバルスタンダードとか訳のわからないことを言ってるぞと。

ただ規模拡大のタイミングと同時にスペシャルティコーヒーの黎明期に参入することができたので、先駆者という良いポジションは得られました。当時はバリスタのチャンピオンを輩出したり、オークションで一番の豆を落札したり、派手なことをやれば売上に直結するという非常に分かりやすいゲームでした。それが2015年ぐらいまでは続きましたかね。

アナグラム

どの業界でも先駆者やこれまでと違うことをやろうとすると批判する方は現れてきますよね。

maruyama

ただ自分が戦っているのはあくまで世界。日本で何を言われようとあまり気にはしていませんでした。徐々に世界でも認めていただくようになり、国際的な品評会でも審査員としてお声がけいただく機会も増えました。それを機に日本でも徐々に認めていただいた感じですかね。

新たな行動様式に柔軟に対応していく

アナグラム

昨年2020年に3店舗を閉じられたのも、おそらく相当悩まれたのではないかと思います。ここ1年で店舗やECの役割を考える機会が非常に多かったと思いますが、その辺りいま丸山さんはどのように考えていらっしゃいますか?

maruyama

新型コロナウイルスが落ち着くまでは3~4年かかると見ていて、その中で「飲食業とは」を常に問い続けています。新型コロナウイルスだけはなく、地球温暖化など先行きが読めない中で、今のビジネスモデルのまま続けるのは難しいと感じています。しかしどんなに世界情勢が変わろうと、ほっと一息コーヒーを飲みたいという最低限の欲求はなくならないはず。なので店舗数はしばらくはこのままいく予定です。

先日インスタライブでプロを相手にテイスティングの配信をしました。視聴者は飲んでおらず、私がテイスティングをしてるだけの配信にもかかわらず、たくさんの豆が売れるんですよ。私は自分で味見をしてからでないとモノを買えないのですが、その配信をしてから時代が変わっているなと実感しました。自分自身のスタンダードを信じ続けるのではなく、新しい行動様式に腰を据えていかないといけないなと。

これまでは店舗に注力してきましたが、今後はECに大きく予算配分していく予定です。ECだとどうしても店舗と比較して特別感を感じにくくなってしまうので、どのようにハレの体験をしていただくかは引き続きお店の役割かなと思います。お店で売上を上げるというよりは、商品の良さを知っていただくショールームような役割ですかね。

アナグラム

コーヒーとライブ配信は相性良さそうですよね。コーヒーは毎日飲むけど、こだわりが強いわけではない。でもちょっとだけ良いものを飲みたいという人は多いと思います。そういう人たちにとっては自分で選ぶより、丸山さんのように違いが分かる方に、ライブ配信でテイスティングしてもらって、これはこういう香りで、こういう味でと言っていただいた方が購入しやすい。

お話を聞いていて、やっぱりコーヒーは選んでほしいというニーズが強いのかなと思いました。

maruyama

コーヒーってすごくややこしい商品で、丸山珈琲の店舗で試飲したコーヒーに感動して豆を買っていただいても、それを自宅で淹れてみると、「なんか違うぞ?」となることがあるんです。水のせいなのか、淹れ方のせいなのか、何が違うのか分からなくて、モヤモヤしてしまう。そのモヤモヤを解決するためにもう一度お店に運ぶ人は10人に1人位いるんですけど、残りの9人はモヤっとしたまま終わってしまう。

でもそこにプロがいて、「いや、このコーヒーはお店とは少し違うけど美味しく淹れられているよ!」って言ってもらえれば満足するんですよ。でもその判断すらできない。誰かにこれでいいんだよ、上手くいってるよと背中を押してもらうことが必要な商品なんです。そのあたりをライブ配信などでまかなえるといいなと。

アナグラム

たしかに奥が深いだけに、正解が分からないですもんね。

コーヒーは嗜好品か日常飲料か

アナグラム

多くの方がより日常的にコーヒーを飲むようになり、消費者のコーヒーに対する当たり前のレベルも上がってきていますよね。

maruyama

はい、お客様の舌は怖いことにほぼ不可逆なんですよね。同じ値段でもっといいものを追い求め続けるんです。

新興だったスペシャルティコーヒー市場も、今やコーヒー市場の約11%を占めます。以前は知る人ぞ知る飲み物だったのが、今やしっかりと市民権を得て、立派な産業になっている。今後さらに競争も激しくなりますし、大手企業の参入も十分に考えられます。

アナグラム

なぜスペシャルティコーヒーの市場は大きくなったのでしょうか?

maruyama

コンビニの影響がとても大きいですね。2014年にセブンイレブンさんがコーヒーを売り始め、その後追随するように他社さんも売り始めましたよね。多くの方が「コーヒーは全部同じでしょ」と思ってたのが、「私はセブンイレブンが良い」「私はファミマがいい」あるいは「私はマクドナルドのコーヒーが好き」と比較するようになった。大手が業界に低価格で参入してきたことで、違いがあるんだという意識が消費者に芽生えたのは非常に大きかったと思います。

アナグラム

確かに、その会話したことあります(笑)
丸山珈琲には何度かお邪魔したことがあるんですが、ブレンドの商品を多く取り揃えている印象でした。スペシャルティコーヒーとしてのポジションでありながらも、あらゆる方が手に取りやすいようなラインナップを敢えて揃えて店舗の正面に設置されているのかなと感じましたがいかがでしょうか。

maruyama

丸山珈琲は浅煎りのシングルオリジンをたくさん売っているイメージを持たれている方も多いのですが、実際にはほんの一部。丸山珈琲を支えてくれているのはブレンドや深煎りの豆を好んで買っていただいているお客様です。

コーヒーはワインの世界と非常に似ています。フランスのワインには有名なボルドーとブルゴーニュがあり、ボルドーは複数のブドウをブレンドするのに対し、ブルゴーニュは単一のブドウで作ります。

どちらも商品としては高品質なんですが、おそらくマニアックな方ほどブルゴーニュを好み、大多数の方はブレンドされたボルドーの方を好むんですよね。趣味でやったり、期間限定で1店舗だけの運営であれば、マニアックな方向けに自分のこだわりを貫いてもいいと思います。ただ生産者と関係を作り、彼らのためにもサステナブルなビジネスをやっていこうと思うと、自分のこだわりを押しつけるわけにはいかない。多くの方に手をとっていただけるようなラインナップを用意しなければいけないんです。

アナグラム

アッパー層向けの商品も提供しつつ、ライト層にも広げてらっしゃるのですね。

maruyama

同業の方からも「丸山ってコーヒー業界の重鎮と言われてる割には、深煎りが多いし、ブレンドばっかりだな。」と言われることは今でもあります。それはうちがこだわりを押しつける店ではなく、あくまでスペシャルティコーヒーを提供しつつ、生産者の方のためにもサステナブルな商売をしていく企業だからです。超高級のラインだけではなく、セカンドライン、サードラインで本当に美味しいものをどうやって売るかというのが経営者としての腕の見せ所だと思っています。

アナグラム

嗜好品か日常飲料かの違いですかね。丸山さんはコーヒーは嗜好品、日常飲料どちらだと考えていますか?

maruyama

その質問は私の中のテーマの1つです。嗜好品としてのコーヒーを提供するために最高のバリスタと最高の豆を揃えて、表参道でシングルオリジン専門のお店も出しました。でも来ていただけるお客様は一緒だったんですよね。それくらいまだマーケットとして小さい。

珈琲1杯に毎日1000円払う一般のお客様が東京にどれくらいいるかというと、おそらく200人もいない。このトップのマーケットは今後徐々に広がっていくとは思いますが、今いる従業員やお付き合いのある生産者のためには、日常品としてコーヒーを飲むお客様としっかり向きあわなければいけません。

さらに今回新型コロナウイルスでおうち時間が増え、コーヒーが日常飲料だということがよくわかりました。在宅ワークの環境で、ドリップしたコーヒーやそこから漂う香りが日常のリフレッシュ方法の1つになっていませんか?ドリップバッグやボトルコーヒーなど、日常飲料としての商品ラインナップも必要だと気づけたのは非常に大きな転機でした。

さらにスーパーへの卸も軽井沢のお店だけだったのですが、日常飲料であれば販路をもっと広げるべきだなと。これまではブランドイメージにこだわりすぎて、躊躇していたのですが、もうそのフェーズは抜けたと思っているので、スーパーの販路もさらに拡大していきます。これまで日常飲料としてのコーヒーをおざなりにしてしまっていたのは大きな反省ですね。

アナグラム

これから丸山珈琲がより身近になっていくわけですね。楽しみです!

今後は自分の体験を世の中に還元していく番

アナグラム

スペシャルティコーヒーをより日常飲料として楽しんでいただくために、これから取り組んでいこうと考えていることは他にありますか?

maruyama

オンラインにはより注力していきたいですね。丸山珈琲はギフトとしても喜んでいただけることが多いので、カジュアルなギフトとしての需要もさらに増やしていきたい。すでにLINEギフトなんかはすごく好調です。

アナグラム

たしかにちょっと良いコーヒーをカジュアルなプレゼントとして贈るのは良いですよね。

maruyama

あとはコーヒーに限らず、他の飲食のブランドさんとのコラボもこれからどんどん企画していきたいです。「食」へのこだわりが強い人はコーヒーの違いも分かる方だと思うんです。

maruyama

はい、今後はコーヒーだけでやっていても難しいと思います。さらに言えば飲食以外にも音楽関係とのコラボなんかもやりましたよ。実際に音楽好きやスポーツ好きの方とコーヒー好きの方は相関関係がデータで出てるんです。先日ベートーヴェンの生誕250周年に合わせて、ベートーヴェンブレンドという商品を作って販売したところ予想以上に早く完売しました。そういった別の切り口でのコーヒーの販売はどんどんと企画していきたいですね。

アナグラム

まさに発想としては一番最初にお話ししていた八百屋さんのトラックに同乗してサンプルを配っていたお話と同じですね。最後にこれからの丸山さん個人のゴールはありますか?

maruyama

これまでは狂ったように産地に行って、狂ったようにコーヒーをテイスティングして、人間関係を作ってきました。それがコロナウイルスによってクールダウンの期間があり、冷静に振り返ってみるとすごく良い体験をしてきたなと。知識ではなく体験ですね。丸山珈琲はありがたいことに会社としてある程度形ができてきたので、変なことをしなければ順調にいくと思います。

多くの方にコーヒーを賞賛いただき、生産者の方からもありがたい言葉をたくさんいただきました。バリスタの世界チャンピオンや日本チャンピオンも育て、そういった意味では非常に満足しているので、昔のような自己顕示欲は落ち着きました。

なのでこれからは自分が体験したことをコーヒー業界や他の業界に還元していく番だと思っています。生産者と良い関係を構築して、良いものを仕入れ、販売するというのは決してコーヒーだけではないですよね。その体験から学んだことを還元していくことで色んな方のお手伝いができたらいいなと思っています。

アナグラム編集後記

オーガニック野菜を販売するトラックに同乗して豆のサンプルを配るあたり、当時から丸山さんはご自身が提供している商品と、顧客をしっかり頭で理解して行動されていて、まさにマーケターだなと。

自分自身の心を磨くため一度は精神世界での道を志したが挫折。その後コーヒー職人になり、経営者になり、これからは自分の体験を世の中に還元していきたいという丸山さん。僭越ながら、インドで修行こそされていないものの、コーヒーを通して心が磨かれていらっしゃるのではと感じました。

私事ですが、在宅ワーク中心の働き方になり、リフレッシュするために午後一番にドリップバッグでコーヒーを淹れるのがすっかり日課となっています。いつもは近所のスーパーで購入した3つで100円程のものを飲んでいますが、丸山珈琲で購入したドリップバッグセットのコーヒーを淹れるとそれだけで、少し幸福度が増しました。

日常飲料として今後は拡大されていくとのことで、これから丸山珈琲がより身近な存在になり、こうやって多くの方の日常の幸福につながるのかなぁと感じた取材でした。

文:賀来重宏
編集:杉山美和
写真:丸山珈琲さま提供