世の中のマイナスをプラスに変えれば世界は変わる!|「人のためのビジネス」を推し進めるDearsの北原孝彦さん

  • 甲信越・北陸

元美容師・元アフィリエイターで2015年に美容室Dearsを創業した北原さん。ビジネスを立ち上げてから短い期間で、順調に規模に拡大しつつ「離職者ゼロ」「フレックス」「リピート率90%」などを実現し、圧倒的成長力で2020年までに全都道府県への展開を臨んでいるという。

その北原さんにDearsのコンセプトを始め、将来の働き方のビジョンについてお話を伺ってきました。

Dearsのビジネス構想はどうやって思いついた?

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北原さんが美容室のDearsを立ち上げて3年ぐらいと伺ってますが、何が一番驚いたかと言いますと、凄まじいスピードでのビジネス展開です。何か最初から「このコンセプトなら絶対当たる」といった確信があったのでしょうか?

例えば、Dearsは従来の美容室とは違い、カットよりもトリートメントとカラーリングにコンセプトを寄せている美容室ですよね。

はい、これは最初からありましたね。実は僕が27~28歳くらいのときに、まだ美容師として前の職場で働いていたころのことですけど、メニューを見るたびに疑問に思ったことが多くて。「なぜこんなに単価が安いのか」とか「美容室のホームページにメニューを入れ過ぎじゃないか」とかずっと気になっていました。

「前髪カットがいくら」とか「キッズカット」とかいちいち載せてましたから。だけど、例えば全員が前髪カットだったら美容室がつぶれちゃうんですよ。つまり、獲りたくないものを入れているからこそ獲れちゃうという矛盾です。これはアフィリエイトであれば絶対にやってはいけないことの一つです。それを変えたかったんです。

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なるほど、仮にページの売れ筋ランキングの上位に「前髪カット」を入れたら売れてしまうんですよね。それが単価の安いものであればそれだけ収益も下がる。

昔つながりがあった美容師さんにも、今Dearsでやっているモデルを提案したんですけど、「絶対無理ですよ」と言われました。だから、時を経て自分の仮説を立証することにしました。

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すごい。その当時から今の構想ができ上がっていたんですね。でも、これは同時にアフィリエイターをやっていた経験がある北原さんならではの改めての気づきと着眼点だとも言えますよね。メニューや単価を独自の視点で絞る時点でコンセプトからかなり最適化されています。

単価もそうですけど、実はそこに失客リスクを減らす目的もあります。美容師の失客理由って、「カットで切られ過ぎちゃった」「カットで失敗された」と技術力が求められるものが一番多いんです。逆に言えば「失敗が少ない」のがトリートメントなのです。仮にお客さまに「思ったよりも効果を感じていない」とか言われている場合でもトリートメントは薬剤の調合によって簡単にリカバリーが効きます。

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ということは、Dearsではやはりカットをあまり重要視していないということですか?

一応、カットもホームページのメニューには載せていますが、単価が7,500円と相当高く設定されています。地方だとカットは4,500円ぐらいで高いと言われているので、カットだけで7,500円までいく美容室って多くはないですね。これはDearsのコンセプトによるものです。

一方で、カット・カラーリング・トリートメントをセットにすると16,200円なので、これは普通の平均料金ぐらいなんですよ。そして、カットがなければ2,000円オフで、次回予約もいれるとさらに1,000円オフで13,200円です。そうすると、この個室空間で入れ替わりがなく、完全予約制で絶対に時間を待たされないので、逆に安いのです。

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カットがメインではない美容室、と言い方はともあれ、門外漢な我々にとっては衝撃的過ぎます。。。カットよりもトリートメントが肝だと考えていると、スタッフに求められるスキルも変わってきているようですね。Dearsではどのような方を雇っていますか?

そうですね。うちはそれに関して普通の美容室と違う方向性があります。美容師は基本的にすごくできる子はすぐ出ていきます。というか、そもそも優秀な子が活躍できるフィールドは日本中にいくらでもあります。だけど、そうじゃなくて、一定の値まで行けなかった子たちが活躍できる場はあまりないんですよ。だからうちのスタッフはだいたいそういう方を採用していますよ。

素直すぎて、すごくいい子だからこそ前の職場であまりうまくいかなかった方が多いです。だけど、この子たちは繊細で接客が本当に素晴らしいので、お客さんも大変喜んでいて、次回も予約をいれていただける確率が9割を超えます。トリートメントがメインの美容室だと、こういう美容師こそがエースになります。

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最早私たちの想像の域を超える戦略レベルの話ですね。想像以上です。

お客さんはやっぱり全員女性ですか?イメージとしては男性ってなかなか月に15,000円を髪の毛にかけないかなと思うのですが。

はい、まさに。しかも男性って3ヶ月先に予約をとる人はさらに少ないですよ。ただ男性でもそれが例えばライザップなら次回予約しそうですね。そういう感覚で女性は髪の毛をライザップみたいに考えて定期的に美容室に通っていると思います。中にはエステやネイル関係の仕事をされているお客さんも結構多いです。

全国展開を決断したきっかけは?

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なるほど、自己投資みたいな感覚ですね。ちなみに、Dearsって今店舗数はどれくらいありますか?

今は50店舗(※1)です。
(※1)取材は2018.08月に行われました。

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3年間で50店舗!そんなに急いでいる理由というのはありますか?まさかの全国制覇?

あはは。実は、全国展開は5年間で完結させようというプランで考えています。そうじゃなければ、アフィリエイトの方がはるかに儲かりそうだし、逆に1店舗だけしか作らなかったら、その場所から離れられなくなって束縛になりそうですね。だから、やるんだったら全国展開と決めました。

もちろん、まず1号店はシャンプー台1つ、席2つのスモールスタートで撤退ラインを引いてやっていたんですけど、スタッフはやっぱり接客がとても丁寧でそれがウケて予約がいっぱいになりました。そこから雇用を増やして”店長のない状態”でも社内でうまくやっていけるようにルールを設けて、全国展開が成り立つ確信を持てました。それを更に加速できているのがフランチャイズです。現在はフランチャイズを主軸に店舗を増やしています。

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フランチャイズ店が多いんですね。直営とフランチャイズを使い分けている背景は何でしょうか?キャッシュフローや管理などの経営面が楽になることはすぐに頭に浮かぶんですが。

実はそもそもフランチャイズを始めたきっかけは、潰れかけている美容室から経営相談を持ちかけられたことなんです。全国の美容室の事情をみると、ものすごい数になっていて、もはやコンビニよりも多いじゃないかと思います。

1年にぽこぽことお店が新しく生まれるのですけど、その中でだいたい1年以内に6割~8割が撤退しているのも事実なんですよ。じゃあ、うちのページに「経営」や「撤退」のことも書けば、それだけキーワードの範囲も広がるし、うまいこと相談窓口にもなれると思いました。

そんな中、そのお店からの話を聞いてチャンスだと思いました。どうせ撤退する寸前だし、しかも集客にも困っているのではれば、譲渡していただいて成功させれば、綺麗に回復できるのではないかというのが容易に想像できまして。看板がDearsに変わって、うちのホームページに載せて集客は本部でやっているんですけど、お金の窓口は全部向こうに任せて、黒字化してから売上の10%をいただく形で提案したんです。そしたらその結果、以前の10ヶ月分の収益をわずか3ヶ月で稼ぎ、早々に3倍以上に上げられました。経営が立ち行かない絶望感が短い期間で希望に変わってくるんですよ。

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3か月でそこまで回復できると、やっぱりそのお店のスタッフもみんなすごく生き生きするでしょうし、肌身で実感するでしょうね。フランチャイズ化と言いながら、実はそれによってターンアラウンドマネジメントまでうまく成り立っているのはすごいです。

しかも、そのお店だけの話ではなくて、新しいお店は全部3ヶ月以内で黒字化させています。やっぱり直営店に比べると、フランチャイズにするもう1つの理由は、こうやってより早くより多くのお店の力になれることです。

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なるほど。これは全国展開が早いのも納得です。

たくさんの美容室は美容師としての技術力に何の問題がなくても、経営と集客に大きな課題があります。美容師ってよく店舗を作ってから初めてブログを更新しだすことがありますけど、ブログのタイトルが全部「ヘアカラー」「ストレートパーマ」とかメニュー名そのままなのが多いんですよ。元アフィリエイターの目でみると逆に情熱を感じていて斬新ですが、実際これではなかなかお客さんが獲れないですね。

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集客はホームページに載せる以外に何か他の施策をやっていますか?

リスティング広告とFacebook広告も出しています。IPアドレスをたどってどこがヒットしたかとかも全部見てますね。

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その辺はさすがにお店のスタッフがやらないですよね?

そうです。それは本部でやっています。お店からは月に50,000円の広告費だけをいただいていてそれを集客に投資します。50,000円って高そうに聞こえるかもしれないですけど、有名な情報誌に載せるのに数十万円がかかっていますし、うちが出している広告の方が集客効果も良いですから。

トラブルが発生しない組織で離職ゼロを実現

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経営体制についてもう少し聞かせてください。北原さんが立ち上げたDearsでは離職者0人という話は割と有名ですが、これを実現させるためにどのような取り組みをされていますか?

僕は新しい事業をはじめるときに、事業構想と事業設計をものすごく大事にしています。その事業構想というのは、自分で経営者としてその事業を作ったら、どんな人生を描きたいかに当たる部分です。アフィリエイター時代はこういうイメージがあまりなくて、実際に成功していてもだいぶ不安でした。だってギスギスしていますし、お金自体が目標になってしまいがちですから。28歳位の時にアフィリエイターをやっていて、月1,000万円を売り上げられたんですけど、結局買ったのはピスタチオと集英社のジャンプだけなんですよ(笑)

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ピスタチオとジャンプ(笑)

はい、ちょっと極端ですけど、その時に「あ、別に僕にとってお金ってそんなにいらないものだったな」と気づきました。お金を稼いでも使い道がなさすぎて。そこで別の目的を考えはじめていったんです。

僕は両親の転勤で小学校だけでも3回引っ越してたんですけど、友達作ってもどうせまた引っ越すんでしょうみたいにひねくれ始めて、もう絵に描いたような転校生でした。その経験からだと思いますけど、自分の元から人が去っていくことがとにかく怖いです。それが脳裏に染み付いたせいか、じゃあ自分が会社を作ったら、そもそも離職が生まれない前提で設計しようと思いました。そのために、採用と給料と時間、この3つを見るべきだと結論付けたんです。採用は先に話しましたね。じゃあ必要な給料と時間のとれる価格帯ってどの程度なのかと考えてそこから事業構想を作りました。要は、自分が幸せになるためにスタッフに還元するんですよ。

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組織は常にWin-Winの状況を作り出さないと、離職をゼロにできないですね。非常に理にかなっています。

お店に店長や管理職がいなくて、イメージ的にスタッフ全員が自分の席の経営者という形で回っているようですが、職場の人間関係ってどうなのでしょうか?上下関係とかありますか?

これは入社の段階で必ず言いますけど、うちは上下関係や先輩後輩などは一切ないんです。強いて言えば、最初にいた人が先に予約を埋めていくとか、あとは自分より年上の人にはちゃんと敬語を使うことぐらい。そのレベルですね。不平等は限界まで無くします。

基本的に出勤時間はみんなフレックスなので、社内で必ずしも会うわけでもないですけど、スタッフが積極的に社外でご飯会をやっています。店舗の全員が参加してやっているご飯会に関しては、会社が全額を負担しています。とはいえ、別に「仲が良い美容室」じゃなくてもいいんだから無理やりに仲良くする必要もないですが、「仲が悪い美容室」だけになってはいけないと思っていますね。体制を1店舗に5人以下にしていることも、人間関係のトラブルや小競り合いなどを防ぐ意味で決めていました。やっぱり人が多すぎると、一定数の人だけが仲良くなりすぎたり、派閥ができたりとか社内の軸がブレやすくなるので。

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それは間違いないですね。組織に限らずコミュニティーは人が少なければ少ないほど完璧に近づくものです。特に5人という数字は組織論的にもマジックナンバーに近い感覚があります。

だからうちはすごく平和だと思います。「トラブル」といっても「私のチョコレートを食べたのは誰だ事件」ぐらいしかなかったんですよ。

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なんですかそれは(笑)

ちなみに食べたのは僕でした。

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あなたか!!!

いやぁ、お店のやつだと勘違いしていて、つい…(笑)でもちゃんと全員に謝ってゴディバ返ししましたよ。僕が勝手に摂取していたガルボがゴディバになった。

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ROIがとんでもないことに(笑)

北原さんって元々美容師としての経験があって、それに加えて今まで培ってきたアフィリエイターの能力と美容室のビジネス構想の知識の融合は、Dearsが成功している要因の一つだと思いますね。そのDearsの勝ちパターンが、その他のビジネスにも当てはまるという確信はありますか?

マイナスがプラスに変わった時の「4点分の働き」

あります。集客スキル、事業構成から設計までのスキルもそうですけど、あと僕は、人がどうして働くのか、どうして辞めるのかを前職のスタッフとの面談で散々見てきましたので、その辺も手に取るようにはっきりしています。逆にそこさえ間違っていなければだいたい上手くいきそうですね、ビジネスって。実はもういくつかアイデアがあります。

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そうなんですね。どのような事業なのか、お聞きしても良いですか?

今自分の中で思い描けているのは、障碍者雇用ですね。障碍者1人や2人を雇用するのじゃなくて、障碍者を持った方々だけを集めて事業をしたいんですよ。もちろん意識がはっきりしない方だと難しいけど、例えば意識自体がはっきりしていて手とか足が不自由で、片手でも時間をかければできる人は全然仕事を任せられると思いますね。

イメージとしてホテル業とか農業関係がそのコンセプトでうまくいきそうです。その事業を立ち上げてこういう人たちにちゃんとお給料を払いながら助けてもらいたいです。

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障碍者雇用といえばチョーク屋さんとかよくテレビやっていますけど、北原さんの全員障碍を持った方を雇うアプローチって私が感じるにちょっと別のベクトルがありますね。どうやってこの考えにいたったのでしょうか?

実は僕にとってそのテーマは結構身近なことでもあります。家族に1人障碍を持っている人がいますけど、障碍を持った方を雇用してくれる会社ってほとんどいないんですよ。雇ってくれるところがないのであれば、僕の会社で雇用すればいいと思ったのが法人化したきっかけなんです。

障碍を持っていると、だいたい家族のお金の出先になるのが多いのですが、お給料をもらうことによってそれを変えることができるんです。他に障碍者がいらっしゃる家庭で少なからずとも、そのマイナス分が消えて、それがプラスに転換することが出来たら、恐らくこの家庭に革命が起きると思います。それをやりたいです。

しかもそれは特に障碍者に限らず、こういったビジネスは、例えば元気だけど動き出さない引きこもりの子たちにとっても逆転のチャンスになると考えています。

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まさに働き方改革ですね。個人的にですが農業が上手く行きそうな背景をもうちょっと聞きたいです。

今は地方に土地が結構余っていて、農家の孫もほとんど都会に行っちゃっているから後継者がいない状態がこれからもさらに深刻になりつつあるんです。農家のおじいちゃんやおばあちゃんたちは、もう自分の力で畑を耕すことができないから、例えばそこでちょっと引きこもりだけど良い子を雇って農業を手伝ってもらえたらすごく相性が良さそうかと思います。それをベースにした事業をしたいですね。

一般企業からは「挨拶ができない」とか「やる気がない」とか色々言われても、その地方のおじいちゃんにはそんなの絶対に気にしないと思いますし。そもそも引きこもりの子たちって、周りに自分より動ける人が沢山いるからそういう絶望感を抱くんですよ。だけど、逆に自分よりはるかに体力がない人の所にいたら多分逆転するんじゃないかと。

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確かに、むしろ元気になったり自分から積極的にコミュニケーションをとったりするかもしれないですね。もっといえば、これだけ「孤独死」や「老後破産」などを言われている時代なので、そのような問題までもしかしたらV字回復させるというか。それは、Dearsと同様に農家もフランチャイズ化するコンセプトですか。

そうです。ビジネスモデルは根本的にDearsとはなんの違いもないですよ。ホテル事業も同じです。これは東京オリンピックのあとに需要がなくなっているタイミングにこそ生き残るモデルとして導入すると成功しやすいと仮説立てています。料金プランからシステムまで、全部考えています。そして皆が思うほどリスクも少ないです。展開する前に必ず撤退ラインを引いてますからね。最初は小さな規模でやり出して、売れたらフランチャイズモデルで伸ばす、例えばホテルが万が一うまくいかなかったら、それをやめて農業に舵を切ったりして傷口の大きさを最低限に抑えることができますね。

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北原さんは今まで撤退したビジネスってありますか?

はい、アフィリエイトは撤退していますね。これは生き方としては落ち着かなさすぎて無理でした。僕が最初にやっていたのはものすごく真面目なサイトで、何の面白みがなくて。それをどう面白くすればいいかと考えた結果、麒麟の被り物を被ってパンツ一丁で自分が出ているサイト(トニー北原)を作りだしました。これはそこそこ成功したけど、それも結局どれほど良い商品を売っていても、それは人様の商品ですから個人的にしっくりこなかったです。そこから「じゃあ、自分で美容室を作って、それを売るか?」ということでDearsをはじめたわけです。

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こういう経緯から始まったのですね。北原さんの活動の話を聞くと、やっぱり自分にあった働き方を見つけることの大切さが本当に伝わってきます。しかも、そうやって得られた教訓を学生に共有している講演も設けていますね。高校生に向かってキャリアに関するアドバイスなどをする動機ってどこから来ていますか?

それは、僕自身の学生時代と結びついていると思いますね。その当時、高校の進路のことでずっと悩んでたんですよ。どうしたらいいのかまったく分からない感じでした。そんな時、たまたま親から髪を切るためにもらった床屋代を、「自分で髪を切ったらそれはもはや俺ものじゃないか」と気付いたんですよ。正当な対価というか。

まぁ、自分で切れるようになったらこれはありだなと思いました。ただその時も美容師って単にカッコ良さそうだという漠然としたイメージしかなかったけど、まずはそんなノリで専門学校に入ることにしました。振り返ってみると、やっぱり入り口って割とどんな理由でもいいですけど、通過と出口にちゃんと「人のために」のような考えがあれば、それは当然応援してくれる人が出てくるはずですよね。

だから簡単に言えば、「今はできなくても良いよ」、「仕事したくなかったら、ちょっとの間別にひきこもっても良いよ」ということを言ってあげたくて。ただ、やりだしたら応援してくれる人の期待を裏切らないように成長していれば「テストの5教科の合計点数は150点以下だけど、年収は1億あるよ。」とか言えるようにしたいです。「Dearsという全国展開している有名美容室の社長です。でも英語は8点でした」とかいう感じ(笑)

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そのセリフのインパクトって半端ないですね。

実はビジネスって本質さえ間違っていなければ、どんなビジネスも本当に難しくないんですよ。それこそ、成功するにあたって人が離れなければいけない事業って結局うまくいかない傾向があると思います。お金がなくなっていく意味というよりも、信頼値がだんだん減っていく感じで。人は一人じゃ生きていけないとよく言われるんですけど、その意味を考えるとやっぱり「ありがとう」と隣の人から言われなくなると生きていけないという気がします。ひきこもりの子たちはなんで自信がないのかというと、感謝の言葉が彼らに届かなくなったからだと思います。だからこそ、この子たち逆転のチャンスを与えたら180度変わりますよ。

それをスラムダンクという漫画にちなんで「4点分の働き」と呼んでいます。つまり、バスケで相手が外したシュートのリバウントをとったあとの、自分が入れたシュートって4点分の価値があるということです。

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面白い!失点を防いで、そこから自分が得点をあげるということですね。

そう!その理論で考えていくと、元々「できる」子たちがちょっと良くなったところでそれほどのインパクトはないでしょうけど、ずっと伸び悩んでいた子たちや引きこもりの子は同じ「ありがとう」でもその振れ幅が断然大きいです。マイナスをプラスに変えているから。こういう意味で人の為になる事業をもっと増やしていきたいですね。

参考:ディアーズへの本体サイト

参考:ディアーズの求人

参考:北原孝彦さんのブログ

アナグラム編集後記

わずか3年間で自社のビジネスをめまぐるしいほどのスピードで展開していく
Dearsの北原さんですが、話を聞けば聞くほどその裏に強い思いやりや社会貢献への
使命感が伝わってきました。その中でも、北原さんが挙げた「障碍者を雇うビジネスモデル」の事例のように、将来の日本の働き方を見据えたコンセプトまで考えていることが垣間見れて非常に興味深かったです。

そして、「ビジネスの本質さえ間違えなければ、どんなビジネスも本当に難しくない」という北原さんが取材中に何気なくおっしゃった一言ですが、実に刺さるものがありました。「美容室」という事業を、お客さま・従業員・経営を全部幸せにできるモデルまで実現させたDearsがすでにその妥当性を物語っていると言えます。

Dearsももちろんのこと、これからその他のビジネスも発展させていく北原さんの活動が非常に楽しみになるインタビューでした。

文:ヤン・フーゲンディック
編集:阿部圭司/高梨和歌子
写真:高梨和歌子