今回は住宅系コンサルティング会社からデザイナー、住宅設備着事業で独立、現在は株式会社nanairo(以下、nanairo)に参画しメディア運営も手掛けている西川さんに様々な事業を手掛けるようになったきっかけなどについてお話をお伺いしました。
新卒でデザインや営業、仕入れの交渉やクライアントのサポートなどほとんどの業務を経験
西川さんといえば多方面で活躍している印象が強いです。現在はnanairo に加わり、メディア運営やデザインの仕事などをはじめ、さまざまなことに手をつけられていると思うのですが、元々のキャリアはどのようなものなのでしょうか?
最初は新卒で住宅系のコンサルティング会社に入社し、そこで住宅会社に対してCADという設計図を描いたり、製図を行うソフトウェアを売る営業をしていました。でも「そもそもCADがあってもお客さんが来ないんですけど…」と住宅会社から言われるようになったんですね。「分かりました、じゃあ私たちが集客します」という流れで、会社でWEB集客の部門が立ちあがったのが入社1年目の時。それからはホームページ制作と集客の営業をしていましたね。
当時のホームページ営業は結構大変な時代ですよね。
そうなんですよ。ホームページの営業に関して、消費者庁へのクレームとかもかなり多い時代でしたね。当時いたその会社は主にCADなどのソフト、WEBの更新などのサポートをメインに行っている会社だったんですけど、僕はCADのサポート以外全部やっていました。流通、制作、デザイン、コーディングなど。もう十年近く経ってますけど、いろんな部門を見させてもらったのはありがたかったと思っています。
その時にサポートしていく中で、クライアントの色んなLPとかも保守対応の範囲で作っていくこともあったんですよね。
なるほど、それでデザインをやるようになったんですね。
そうですね。でも、サポートでお客さんのところに行くと、今度は「お客さんは来るようになったけど契約が取れない」という悩みを言う方もやっぱ出てきたんですよね。
大手や家電量販店とかがリフォーム業界に参入してきたころで、業界全体が価格競争になっていったんです。そうすると今までと同じ価格では契約が取れなくなる。じゃあどうするか?というと、利益をそれ以上減らすことはできなかったので仕入れを下げるしかない。それで、(この記事を当時の上司に見られたら怒られちゃうんですが…)当時サポートに行くふりをして、クライアントのリフォーム会社さんと一緒に問屋さんに行って仕入れの値下げ交渉をすることもありました。
そのうちの一つが住宅設備で、これが今の僕の設備の仕事につながっています。おそらく今僕のところで取り扱っている商品は関東全体で見てもかなり安く仕入れられていると思います。それで「あれ、これだけ安く仕入れができるなら卸しの事業もできるのでは?」と、新卒3年目の頃かな、設備卸事業部の事業計画を書いたんですけど、当時の上長に却下されちゃいました。「夢見てんじゃねぇ」って。
そして、そこから日常業務に戻ってまたLPやWebサイトを作る日々です。そのあといろいろあって体調を崩したせいもあってその会社は退職しました。
多くの人が詳しく知らないが、生活に必須な住宅の設備
ではそのあとすぐに住宅設備の事業を?
いえ、その後個人事業主として色んな業種のLPを作りまくってました。制作費用の相場とかも知らないし、全然知識のない業種ばかり。それでも、いろいろと勉強しながら当時はとにかくひたすらに作ってましたね。 そのくらいのころに、プログラミングとかリスティング広告とかも割りと本格的にやるようになりました。
新卒で入った会社でLPを作っていたときは独学でやられていたんですか?
そうですね。新卒の会社は月に数万円くらいでリスティング広告の運用代行もやり始めていました。いくら広告を打っても商品企画がちゃんとしてないと全然売れないじゃんというのを感じ、じゃあ自分で勉強して作ろうということでLPOの本やコピーライティング、マーケティングの本を読み始めましたね。あ、デザインの本は全く読まなかったです。後は世に出ている成功しているLPを片っ端から探して参考にしてました。だから、ホント独学ですね。
最初は見よう見まねで作っていたんですね。
そうですね。だから、僕のPhotoshopのデータをデザイナーガチ勢に渡すと怒られますね。「データが汚ない!」っていわれて。でも、なんのことか分からなかったです。「汚いって何??」みたいな。今は、デザインをやってきた人と仕事をすることが出てきたので、「あー、オレのデータって汚いなー」って思いますけども。
確かに、考えてみたら人から直接LPの作り方やデザインを教わったことは一度もないですね。全部我流です。あえて言うなら、ジャパネットたかたさんのショッピングチャンネルは毎回見てました。あれが心の師かもしれません。
住宅事業の立ち上げの際はすぐにうまくいったんでしょうか?
すぐ売れました。最初は数十万円で広告を配信し始めたんですけど、初月で数百万円の売り上げが出ました。
初月でですか!それはすごい!
ウチで取扱がある商品っていくつかあるんですが、トイレやキッチンって毎日使うものだから印象は付くと思うんですね。でも、ビルトインコンロとか給湯器ってあんまり世間に知られなかったりするんです。
例えば、お湯が出なくなったときに「お湯が出ない」とかで検索して、そこで「お湯が出ない?それって給湯器の故障かも」という広告が出てきたらクリックしますよね。そこで「あ、給湯器というものがあるんだ。」と知る人が意外と多いんですよ。お湯が出なくなるまでどうやってお湯が出ているかを知らないんですよね。給湯器って絶対必要じゃないですか。だって急にお湯が出なくなったら困りませんか?給湯器が壊れたら修理するか交換するかの二択しかなくて、修理の方が安いけどまたすぐ壊れる可能性がある、交換の方が高いけどしばらくは壊れることはない。
西川さんのところはどちらも請け負っているんですか?
給湯器で言うと、うちは交換だけを請け負ってます。多くの方は給湯器が壊れたときにまず大手に連絡をするんですよね。そして見積もりをもらって、まずその値段にびっくりするんですよ。給湯器の交換ってこんなにかかるの!?って。そのあとに「給湯器 交換」とかで検索をしてみたら、もっと安く交換できるところがあることに気づく。
そんなに違うんですか?
そうですね。うちは仕入れ価格が結構低いので同じ利益率でもお客さんに提供する価格は結構違うと思います。最近は設備の業界って全体的に安くなってきてますけど、少し前は正直独り勝ち状態でした。でもそのうち他社さんが気づくんですよね、あそこは絶対仕入れが安いぞ!って。そうすると仕入れ先に対して、なんでうちはもっと安くならないんだということになり、今度は問屋側が価格を下げだす。そうしないと問屋が卸せなくなってきているので。
では最近は住宅設備の交換業者はどこも価格競争なのでしょうか?
いや、それがですね、おもしろいことに一旦は価格競争になったんですけど、ある時にみんなが「これ以上下げるともうやばい!」ということに気づくんですよ。なので今は一回下がりきってそのあとちょっと上がった状態で結構安定していますね。
住宅の設備業だとなかなか価格以外で差別化をしていくのって難しい気がしますが、交換業者は以前みたいに価格で差が出せなくなってくると、どこで差が出せるのでしょう?
検索順位ですね。Googleさんはホントすごい。みんな急いでいるので、検索順位で1位になることがまず重要。住宅の仕事って大きくリノベーション、リフォーム、リペアの3つがあって、リノベーションは暮らしそのもの、いわばライフスタイルを変える。リフォームは暮らしやすくなる、生活が豊かになります。そしてリペアは使えなくなったものを使えるようにする。
例えばリフォームだと住宅のビフォーアフターってリフォーム会社によって結構違うんですね。キッチンのリフォームでも、使うキッチンの色や形、使う天板とかでも全然イメージも使い勝手も変わる。でも設備の交換はリペアに分類されます。基本的に、元の正常な状態に戻すだけなのでどこでやっても違いがないです。むしろビフォーと違う状態にしたら怒られちゃいます。なので最初に見つけたか、価格が安いか、あとは安心感が重要です。でも実はうちはあんまり検索連動型広告は時期によってはまったくやってなかったりします。
オーガニックからがほとんどということですか?
そうですね。SEO対策と、あとディスプレイ広告は結構やっています。具体的な配信方法は▲▲▲▲の面で◯◯◯◯をしたり、××××みたいなワードをですね・・・あ、ここって隠してもらえますか?(笑)
いいですよ、伏せ字にしときます(笑)
僕、極端な話をすると、リスティング広告を運用する時代は終わったと思っているんですね。広告文を考える必要はあると思うんですが、細かいキーワードの設定や入札の調整などはどんどん手をかける必要がなくなってきていると思います。
細かく話すと丸3日くらいかかっちゃう話なので端的に解答しますけど、ビジネスによっては確かに運用という要素は少なくなってきますよね。自動入札などを含めテクノロジーに任せたほうがうまくいくようなケースが今後さらに増えていくのは間違いないと思いますが、人間が介在することでより大きな価値が出せる領域はまだまだ健在ですよ。
それは確かに。
僕のビジネスって海の家と同じビジネスモデルだと思っているんですよね。海の家って収益スパンを5年で考えるらしくて、なぜかというとすごく熱い夏とか、すごく涼しい夏とかで収益が大きく変わるので、5年間を通すと一通り経験できるのである程度平均値もわかってくる。僕の事業も同じで、すごく寒い冬と暖冬では売り上げが全然変わってくるので、暖冬の時は本当に売れなかった。
そもそもなぜ給湯器をはじめ住宅業界で仕事をしようと思ったのでしょうか?
それにはまず市場の話をする必要があるんですけど、リフォームの市場規模ってどれくらいかわかります?
数兆円くらいでしょうか……?
約5兆円もあるんです。5兆円ってだいたい家電量販店の市場規模と同じくらいなんですけど、家電量販店の大手5社で市場規模のどれくらいを占めていると思いますか?
8割くらい?
そうですね、おおよそ7~8割くらいです。じゃあリフォーム業界の大手10社でどれくらいを占めていると思いますか?
その流れだと結構低そうですね。5割とかでしょうか?
もっと低くて、おそらく3割いかないくらいだと思います。1位ですら市場の数%しかないので住宅業界は小さい工務店さんがたくさんある。なぜかというと家電は全国どこで買っても基本同じものなので、安ければどこで買っても良いと言う人が増えてきた。
でもリフォームの場合はさっきのアフターの状態が異なるんです。安ければいいというわけではなく、近場にないといけないんですよね。だからそういった地場産業は絶対になくならないと思ってます。しかも、リフォーム会社を始めるのって資格とかが必要ないんですよ。なので極端な話、いまから法務局に行けば誰でもすぐにリフォーム会社を立ち上げられる。それだけ参入障壁も低くて、まだ未成熟な業界なんです。面白いですよね。日本で一番古い会社って言われている金剛組も寺社ではあるんですが建設業です。それでも、まだ未成熟な部分が残っているんです。住宅には。
市場から仕事を考えるのってすごく大事ですよね。
そうですね。だから基本的には、冠婚葬祭・衣食住・美容健康教育の10個のジャンルに携わることがしたいなーっていうのは元々から漠然と持っていました。
TrueView広告に感動し、テレビCMの終わりを感じた。
冬の繁忙期は設備業がメインで閑散期はマーケティングがメインという感じなのですか?
僕の会社って、社員の子はWebのこと全くできない子ばっかなんですよね。全員が職人です。だから、設備の交換の業務は、自社の職人の子たちに任せているんです。なので、僕は1年中マーケティングがメイン業務です。彼らの仕事がないと「仕事ね~よ〜」って怒られちゃいます(笑)
西川さんのリソースでいうと今は設備業がメインですかね?
設備業に関しては正直結構安定しているので、それほど手をかけることはないですね。実は2年くらい前、Marketeerの編集長に「設備業が安定してきてもうやることがなくなってきているんですけど、どうしたらいいですか?」って相談したことがあって。その時になんて言ったか覚えてます?
な、なんでしょう……?(本人)
「西川君はとりあえずお金を貯めなさい。きっとやりたいことが見つかるから、その時にお金がないと何もできないのでその時のためにも今はお金を貯めなさい」って言われたんですよね。それが結構腑に落ちて。それで、ひとまず給湯器に専念してお金貯めて、その時貯めたお金は動画の会社に使いました。
意外といいこと言ってますね(汗)、それがきっかけで動画の会社に参画されたんですね。今は動画の会社の方はどうでしょう?
今は正直難しいですね。2013年ごろからTrueView広告が流行りだしたんですけど、その時は「こんなところに動画広告出せるの?絶対テレビCMより良いじゃん。これこそ地場産業が求めてたものだよ!地方活性化のためにどんどんみんな使ってこうよ!」って思ってて、当時からすごくやりたかったんですね。まだどこもやっていなかったのでとりあえず大手がやり始めて業界が盛り上がって欲しくて2016年まで3年間待ったんですけど、どこもがっつりとはやらないんですよね。理由は明らかで、儲からないんですよ。TrueView広告って。
これ、アナグラムさんのメディアで言うことじゃないかもしれませんが、代理店が悪い。広告費の部分でしか代理店はマネタイズできないので、動画広告を提案して回すほうが労力が出てしまう。ホントはもっと動画って簡単なのに、やっぱ慣れてないからみんな色んな所でつまづくんです。
動画に関してはGoogleでも講師としてセミナーをやらせてもらっていて、「動画ってどうやってマネタイズしたらいいんですか?」って広告主の方からもよく聞かれるんですけど、社内で理解がないとホント難しい。クリエイティブを作るにも外注ありきだとコストもかかるし、すぐに結果が出るわけでもない。「先々を見据えるとやったほうがいいけど、成果が出るかどうかわからないもの」みたいな感じなんですね。企業はそこになかなか投資ができない。
世の中的に動画の提案に対して受け入れ態勢とかリテラシーが追い付いていないことが多いのは私たちも何度がトライしているので痛感しています。直接的にコンバージョンにつながるための動画という点では、動画はしばらくは難しい印象です。
そう、動画の提案となるとみんなテレビCMみたいなかっこいい動画を作りだがるんですよ。気持ちはわかるんですけど、それだと売れないですね。この間、デジタル神無月ってイベントで他の動画制作会社の人と登壇したんですが、「みんなHEROの動画をもとめる」ってのは他の会社の方も言ってました。
Googleも言ってますが、HHH(Hero , Hub , Help)って3つあるんです。ホントはHelpから始めるべきなんですよね。そうすると、自社内でもっと完結できる仕組みも作れると思うんですが…そんな感じで広告用の動画に関しては現在模索中です。
一番ラクというか、簡単に伸びるのは数年待つこと。僕らの少し下のデジタルネイティブ世代ってのが今スタートアップとかで頑張ってるんですが、そのもうちょっと下のスマホネイティブ世代。生まれて初めて触るインターネットデバイスがスマートフォンの世代ですね。この子達は動画を見ることも撮影することも抵抗がない世代だと思ってます。だから、この子たちが台頭するころには、もっと伸びると思うんですけどね。その頃には僕はもうお役御免になってそうです。
自分が見えていない未来を確かめたいと思い、株式会社nanairoに参画
そんな西川さんが、なぜ今nanairoに加わったのでしょうか?
代表の西田とはもともとゲーム仲間なんです。
西田は僕がホームページとかを作れるのを知っていたのでホームページを作ってほしいと頼まれたのがきっかけです。けれど、最初の要件定義なんてなかった。「いい感じにやって」みたいな。ほんとにそれだけ。サイト名すら決まってなかったので、ぼくは絶対うまくいかないと思って最初は断ったんですよ。でも西田が「絶対うまくいくから、とりあえず作って下さい。申し訳ないけど西川さんにしか頼めないから、とりあえず作ってください。」って言うのでサイトを作りを始めたんですけど、しばらく一緒にいても正直全然うまくいく未来が見えなかった。
手前味噌ですけど、これまでいろんな事業のLP制作など広告周りを見てきたので、どうすればうまくいくかとかがある程度想像できるんですよね。僕が住宅設備や動画のビジネスをやっているのは、「本当にうまくいくのか?」って思い描いてたことの答え合わせをしてるようなものです。nanairoに関しては絶対うまくいかないと感じたんですけど西田は絶対うまくいくと言っている。だから、僕の見ている未来と西田が見ている未来ってのは違ってるんですが「なんで違ってて、こいつは何を見ているんだ?」っていう単純な興味ですよね。それくらいまでに彼には僕にない熱量があった。
西田さんには西川さんとは違う未来が見えていて、そこに興味を持ったということですね。
そうですね。今のnanairoはほんとにまだ準備期間なんです。僕の見ている未来とまったく違う未来が見えているみたいです。最終的な構想はまだホントに構想なんであまり表では言えないんですが、そのためにはまだまだコンテンツの量も足りないですし、質も足りていない。本当に今はまずnanairoのサイトをしっかり作り込んでいくことが大切ですね。
じゃあ西川さんは今、設備業と動画の会社とnanairoと、他にも企業のお手伝いとかされていると思うんですが、それぞれどれくらいの割合で仕事をされているのでしょうか?
今、あともう1社、開発系で役員に入っている会社があるので、計4社に役員として入っています。そのうち、nanairoに5割くらい割いてます。開発と動画と設備で残り半分を分配している感じですかね。
あとはそれ以外だと、健康食品のLPを作っていますね。商品開発から携わらせてもらってます。このサプリに関しては、リリース日、夜の12時に広告の配信を開始したんですけど、開始5分後500円くらいの広告費でコンバージョンが出たんですよ。これはいくぞ!と思ったんですがその後コンバージョンが続かず、3日間広告を配信した結果CPAが全然合わないんですよ。それはもう驚くぐらいの赤字でした。
これは申し訳ないけど広告の配信以前にLPに問題があるなと思って、リリースして3日後にはLPをフルリニューアルしました。そこからも広告面の改善もしていって、ほぼ目標のCPA通りにまで落ち着いて3ヶ月めには単月黒字になりました。最初からできなくてごめんねという感じではあったんですけど、失敗があったからこそできたことでもあるよなーと。
そのスピード感でできるのも、西川さんがLP制作だけでなく、商品企画や開発、広告配信などをはじめ全体に携わっているからこそですよね。それはまた別の会社としてやっているのでしょうか?
そうですね。個人的に受けてますが、会社としては設備の会社名義です。LPなどの制作と内部コンサルティングという形でやっています。一応、定款にはWeb制作も書いてあるんですが「ホントは設備の会社ですが大丈夫ですか?」と聞いても割りとみなさんそのへんは気にされないみたいで。
じゃあ半分ぐらいnanairoに工数を割きながら、設備業と動画制作と開発とコンサルで残り半分ということですね。
そうですね。何屋だよっていう(笑)
付き合いの長い身としては、西川さんがどこかの会社に所属するってちょっと違和感なのですが。金髪だし。
あれ?ねぇ、金髪関係ある?(笑)
でも、基本的にどの会社の代表もきちんと理解してくれて本当に自由に遊軍みたいな働き方させてもらえているので助かってます。
特にnanairo代表の西田は無頓着なので基本何してもOK。nanairoの名前を使っていろいろやらせてもらっているのですが、正直自分の担当の代理店系の事業以外はほぼ任せっきり。結構自由にさせてもらっている状態がお互いにメリットなんですよ。nanairoにかぎらず、役員で入ってる会社は全てそうです。各社、僕用の新規事業立ち上げてくれて、そこで自由にやらせてもらってます。nanairoの場合は、西田とお互いの価値観が違いすぎて楽しいんですよね。
西川さんはnanairoに加わって変わった気がしますね。
そうですね。過去いろいろあって僕は人生を一回やりきったと思っているんですね。ホント一回やりきったし、僕はマンガ読んでゲームするくらいしか趣味がないんです。設備業だけに専念して、楽をしようと思えばできるんです。でも人に必要とされる感覚ってすごく良いじゃないですか。あとは新しいことをやるとか、そういう経験ができているのは西田始め、僕を役員で抱える理解ある人たちのおかげですね。
色々あって人生やりきっていると思っているからこそ、リスクを負えるしチャレンジできるってことですよね。今自分自身でやりたいことはないんでしょうか?
……んー、正直ないですね。あまり俗世に対しての興味がそもそも無いというか。今はnanairoを大きくしていきたいのが一番ですね。それで、さっきの話じゃないですが、次にやりたいことが出てきたときのためにお金を貯めていく感じですかね。
マーケティングのためのマーケティングって本当に必要ですか?
西川さんの考えるマーケティングってどういうものでしょうか?
あ、ついにマーケティングの話しちゃいますか?僕もどうしても言いたいことがあって、これを読んでいる人たちに伝えたいのは、今「マーケティングのためのマーケティング」が多すぎませんか?ということ。上司とかクライアントを説得するためにある程度は仕方ないですが、本当にその話や解析って必要ですか?って多々思うんですよね。説得材料としてのマーケティングはいくらかは仕方ないと思うんですが、納得材料となることって少なくない?ってこと。
例えば、今4社ほど会社を見ているんですが、僕は財務は一切見ていないんですね。ただ、広告費と売上だけは把握させてもらってるんですが、細かいところは全く知らないんですよ。極端な話、それでよくないですか?本当に広告を出しているのかすら分からないんですけど、でもしっかり売り上げがついているからいいじゃないですか。広告を出す、売上がでる。以上。みたいな。なんか「そんなにつらい思いをしてまでマーケティングをして、だれが幸せになるの?」と感じることが良くあります。
ぼくはマーケティングの定義はドラッカーが言うように「セールスを不要にすること」だと思ってて、そのためのCPAでありCVRでありといった指標があるわけですよね。例えばトイレのリフォームを取りたいとなった場合に、「ちょっと反響悪いから資料請求を挟みましょう」とか提案されることってまぁあるんですね。でも考えてみてくださいよ。トイレの交換したい人が資料請求必要ですかね?その資料だれが作るの?誰が送るの?そのあとの引き上げの営業はだれがするの?そのコストは?とかもふまえてCPOが合うのかどうかまで考えて提案していますか?ということなんですよね。間接経費とかって概念もってるのかなーとか。だから無駄な会議が増えたりすると思うんですよねー。
天谷さんの記事で「自撮り棒を無料で貸し出したら、みんな勝手に自撮りをするだろう」という内容があったと思うんですが、あれこそマーケティングですよね。あれはすごい。あれは機械が出すことじゃなくて、人が考えてこそしかできないことだと思うんです。広告に関していえば、代理店側ももっと面白いことをやればいいんですよ。そう言うと、みんなできないって言うんです。だったら、やらせてもらえる関係性を広告主の方と作るとか、そういうお客さんを見つければいいんです。もし代理店勤務の若い人がそういうことをやりたいというなら、上司はやらせるべきですよね。だってそっちのほうが楽しいし。
ぼくもめちゃくちゃいいと思っていたアイデアを若い女性に相談してみたらめちゃくちゃダサいとか言われたことがあって、もう若い子の考え方には勝てないですよね。そういうもんなんです。時代は変わる。しょうがないんです。
あと、ぼくは今後何かやるときには機械に依存するか人に依存するかの2択、その中間はないと思っていて、機械に依存するべきところを頑張って人がやってもしょうがない、と思うんですね。逆に人がやったほうがいいところを無理して機械にやらせようとするのも違う。おそらくそこを勘違いしている人が多いですよね。無駄なことばかり時間割いて、本当にやるべきことをやってないというか。
自分の役割を奪われそうだからこそ抵抗するんですよね。薄々気づいているのかも。
僕自身、エンジニア的なポジションで動くことが多いんですが、時々テクノロジーって本当に人を幸せにするのかな?って考えることがあります。例えばタグマネージャーってすごく良いものなのに、タグマネージャー使えませんっていう人多いじゃないですか。結果、タグマネージャーでラクになるはずだったのに、その設定のせいで全然家に帰れないとか。本末転倒もいいところじゃないですか。それって結局テクノロジーに人が追い付いていないと思うんです。だから、本当はテクノロジーには罪はなくて、使う人の問題なんですけどね。
テクノロジーを間違えて使って不幸になっている人はいますよね。ぼくはマーケターはビジネスマンである必要があると思っていて、だからこそ物事の裏側を知らないといけなかったり、手段だけを最適化しても意味がないですよね。なのでここからは意味がないという線引きができるということは非常に重要だと思います。だからこそLP制作から商品の企画開発など本当に一人でなんでもやっちゃう西川さんは強い。
だからこそ、僕は若い人に「今後どうすればいい?」って聞かれたら、プログラミングでもなんでもいいのでとにかく技術を身につけるべきだと言っています。うちの職人の子も、「いろんな工事をできるようになりなさい」って言って他の会社に修行に出すこともあります。目の前の小銭を稼ぐことは大切なんです。大切なんですけど、そこだけに固執するよりももっと技術を磨いて自分の武器を持つべき。スポーツでも同じですよね。結局地盤が無いとなんにもできないんです。特に若い人はこれからは技術がないと何もできないので、とにかく技術を身につけなさいということだけは最後に伝えたいです。
・・・って、これは僕の言葉じゃなくて、フリーランスのときにある方に言われた言葉ですが、これは本当に今でもありがたかった言葉なので伝えたいと思います。
テクノロジーとどのように共存するかについてはマーケターに限らず多くの方がこれから考えていかなければいけない課題ですね。記事中にもあるようにテクノロジーを自分たちの仕事を奪う敵だとみなして、それに抗うのはおそらく間違いでしょう。テクノロジーに任せる部分と人がやるべき部分をしっかりと線引きして、うまく共存できるような仕組みや方法を考えていきたいですね。テクノロジーの流れは不可逆なのですから。
そのためにも西川さんがおっしゃるように技術を身につけて仕組みの裏側を知っておくことの重要性はますます大きくなる。住宅設備、コンサルティング、メディア運営、動画制作など様々な事業に携わり、その中でもあらゆる業務を行う西川さんが言う「若者はなんでもいいからとにかく技術を身につけるべき」という言葉は非常に説得力があり、重みを感じました。
西川さんの取材後には株式会社nanairo代表の西田さんも加わってお話をさせていただき、新たに西川さんの加わった株式会社nanairoが今後どのように成長していくのか、すごく楽しみになる取材でした。
文:賀来重宏
編集:阿部圭司/高梨和歌子
写真:賀来重宏