SNSマーケティングで人気!福井県のとんかつ屋「天膳」を経営する天谷さん

  • 甲信越・北陸

値引きやデフレが常習慣化している飲食業に携わりながら、SNSを活用した集客に注力し始めたきっかけとは何だったのか?福井県にとんかつ屋「天膳」を2店舗構える店主、天谷健二さんにお話を伺ってきました。

天谷さん近影

天谷健二さん
1980年生まれ37歳、福井県出身、在住

高校卒業ともに大手出版会社に就職するも、訪問販売型の下積みに違和感を感じ3ヶ月で退社。学生時代のアルバイト経験を活かし、飲食業界へ就職。大手焼肉チェーンでは全国400店舗での販売コンテストで常に上位にランクインし頭角を表し22歳で店長に!その後地方でソースカツ丼を吉野家風に業態化したチェーン展開する事業に携わり取締役に就任。

3年で11店舗を達成するも経営者との意見別れめにより退社し、独立を決意。

FC店舗の独立より2年前から独自のブランドを「天膳」を立ち上げ現在福井市内に2店舗経営。

店舗運営の魅力は、広告と同じく「どこで何を売るか」を突き詰められること

アナグラム

天谷さんが独立されたきっかけを教えてください。

天谷

新卒でチェーン展開している大手の焼肉屋へ就職したんですが、2000年代に狂牛病が社会問題になり、1度ならず2度も経験しました。それにより売上が前年対比40%まで落ち込む店舗も出て大混乱に。その時、フランチャイズのオーナーがいかに大変なのかを見て来た経験から、自分が責任を取れる直営店を意識するようになりましたね。

独立したきっかけは、取締役を務めた前職(飲食業)の経営方針が直営路線かフランチャイズ加盟路線かで二極化してしまったことです。フランチャイズ派の経営陣と意見を違えてしまったため、これを機に独立しました。

アナグラム

メインの収益構造は店舗だと思いますが、飲食向けのコンサルティングなどはやられていないのでしょうか。

天谷

知り合いからお声掛け頂くことはありますね。とは言え、今のところお金は頂きながら支援する、みたいな形はとっていません。例えば、女子会メインの居酒屋さんでは来客するお客さんの多くがInstagramやTwitterを使っている。では、どうしたら自然に投稿してもらえるだろうか?
実際に来店してお客さまの行動を見ていると、多くが自撮りをするんですよね。では、もしもメニューに「無料自撮り棒」のラインナップが載っていたら…

自撮り棒貸し出しサービスについて記載された居酒屋メニュー画像

天谷さんの支援する居酒屋の実際のメニュー

アナグラム

頼んじゃいますね。自然に投稿もしちゃうかも。。。

天谷

ですよね。デザートサービスとかはよく見かけますが、値引きという導線の元成り立っているため収益を下げてしまい本当の意味でのサービスとは言えませんし、自然に投稿が増えるかというとそうではない。このように、半ば趣味でコンサルティングをしてはいます。僕は現場感覚を失いたくないので、現場から離れてコンサルティングに専念…とかは今後も考えていないです。

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福井に住み、ここでビジネスをすると決めた理由はあるのでしょうか。

天谷

子供を育てる上での教育観や空気の良さ・食べ物の美味しさなど踏まえると地元である福井がいいなあと。過去2回、東京に住んだことがあって実は東京が大好きです。でも、東京で暮らしたからこそ地方の大切さを知ることが出来ました。とは言え、子供が大きくなったら一度は東京に行かせたい気持ちがあります。

あとは地方の方が家賃をはじめ固定費が断然安いので、自分が何かを興したいと考えた時のハードルが低いことが多いです。インターネットのお陰で20年前とくらべて地方で仕事をすることのデメリットは少なくなっています。
あとは、地方だとインターネット上の広告をほとんどやっていないので敵が圧倒的に少ない。地方の人は、SNSが好きじゃなくて専門的な知識が足りないという2つの点で手を出せていない。逆に言うと、地方在住でSNSが好き・性格がまめな人がいれば企業は雇うべきだと思いますね。

アナグラム

飲食の場合、SNSをやらない理由がないですからね。

天谷

そう、やらない理由がないんです。成功例として、唐揚げ食べ放題キャンペーンの企画をTwitter広告で宣伝したところバズりすぎたことがあります。企画がしっかりしていたことと、投稿をリツイートしてくれればキャベツとご飯のお代わり無料という触れ込みをしたことでとにかくリツイートが伸びまくって、多くのお客さんが来店してくださり、大黒字。ただ、スタッフさんが疲弊してしまうなど、総合的に判断して一回きりで辞めました (笑) そういった意味で、地方はまだまだSNS広告を活用できていないなと実感するに至りましたね。

語る天谷さん

アナグラム

「とんかつ屋」という業態に至った理由をお伺いさせてください。

天谷

提供する商材は、ランチェスター戦略も学んだ上で研究しましたね。福井名物としてどうしても入れたかった「ソースカツ丼」は老舗も含めて群雄割拠だったので、それとは別に戦っていける商材が欲しかった。そこで、自分ができる技術を考慮した「とんかつ」との2軸で勝負しようと決めました。

また、地方はデフレの終わりかけだったので顧客一人あたりの単価がすごく安かった。前職は吉野家のような業態に携わっており、デフレの渦にぐるぐる巻き込まれてしまった経験から低単価で戦う辛さは身に沁みていました。地方は車社会でアルコールの消費量も落ちているし人口も減っている。少子高齢化も進んでいたので、夜にお酒を飲む業態よりもお昼に誰でも来られて単価が取れるような業態にしたかった。

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低価格帯は一時期流行りましたが、全国各地でうまくいかなくなっていく様子を目の当たりにしてきたのですね。

天谷

低単価の商品を一生懸命売って業績を上げても、家賃が高すぎて利益が残らずに撤退せざるを得ない例は驚くほどよくあります。昔流行った「500円ピザ」は倒産しましたし、「チカラめし」辺りは最近ドンドン見かけなくなっていますよね。そんな飲食店をいくつも見てきたからこそ、広告と同じくどこで何を売るかがすごく大事だと実感するようになりました。

アナグラム

店舗で提供されている商品の単価は1,100円前後とやや高めですよね。都内の恵比寿や表参道あたりのランチ価格帯に近い。これは驚きました。

天谷

高いですね。福井県は家族が多く持ち家率も高いし教育に熱心な県なので、支出の分で見ると実際お財布に入っているランチの予算は、他の県と比較しても低いと思います。少なくとも、金沢よりは確実に低いです。
実際、ランチで頼まれる方の半数以上は1,000円以下ですよ。ただ、実際に来店されたお客様へ商品をどうお勧めするのかはこちらの話なのでね。

アナグラム

コンサルティングの件で触れましたが、値引きはあまり使われないのですね。

天谷

収益の部分でいうと値引きはほとんど使いません。スタンプカードとコーヒー無料券だけです。ホットペッパーやLINE@はやらないので、そのコストを教育や求人・人件費に充てられますし、その方が、店舗が拡大していく上でメリットが大きいなと考えています。
ホットペッパーはうまく活かしきれず売上に結びつかなかった例をたくさん見てきましたし、上手に付き合う必要がある媒体ですね。

LINE@は期待値が高かったので、ローンチされて最初の説明会を聞きにヒカリエまで赴きました。すぐに取り掛かって3ヶ月で6,000人集められた上、開封率も高くレスポンスも良く使える媒体だと喜んでいたのですが、次第に大手が参入し始めたことで開封率を上げるために値引き合戦に突入してしまい、半年でスパッと辞めてしまいました。大企業でも苦しんでいるのに地方の零細企業が値引きやデフレに巻き込まれたら、勝つのは困難を極めますから。いかに純利益を残せるか、という観点からすると関係性づくりで勝負していくしかないというのが、SNSを頑張り始めたきっかけでもありますね。

地方が目指すはどう利益を最適化していくべきか

アナグラム

あくまでどう利益を残せるかを注視されていますが、そう考えるようになったのはなぜでしょうか。

天谷

地方は人口がどんどん減っていくので、どう新規のお客さまに来て頂けるかは大切な課題です。ただ、集客のためにインターネットで広告を打つとなると、新規のお客さまを呼び込むために新しいクリエイティブを作らないといけない。ある程度仕方がない部分ではあるものの、商品開発のコストや広告代理店さんへの手数料はいつまでもかかり続ける。そうなると、利益構造を最適化しながら効率を上げていく努力は自ずとしなくてはならないですよね。広告を最適化していくのと同じで、利益を最適化していかないといけないと常に感じています。

アナグラム

天谷さんご本人に相当広告への知見がある中で、広告代理店さんに依頼している特別な理由はあるのでしょうか。

天谷

昔からお世話になっているというのもありますし、福井県の有効求人倍率の高さゆえに人手不足だというのは肌で感じているので、お互いに値引きはしないスタンスで持ちつ持たれつ、良いクリエイティブを作ってもらうことを要望していますね。

時間とコストはなるべく教育や雇用に充てたいのでクリエイティブの制作は社内でやらないという線引きをしています。広告代理店との定例会も、良いクリエイティブを作ってもらうために自分の人となりや考え方を知ってもらう時間として使っています。…あ、実績値も後でこっそり見てはいますよ。

数字が良くて来客数が増えたとしても狙いたいペルソナ像と獲得したお客さまの層と少しズレているなあ…と感じることはしばしばあります。むしろ、数字は勿論狙いたいけど、狙い通りのお客さんがきた方が長い目で見ると断然有難いわけです。
広告代理店側は数字ベースで見るので、前者の方がよく見えますよね。その不一致を埋めていきたいけれど、中々難しいですよね。

アナグラム

求人媒体なんかの集客支援などと近い問題ですね。多くは会員登録をコンバージョンポイントとしてるんですが、ビジネスの本質はその先の実際の転職であることがほとんどです。会員登録が多く安く獲れても、実際の転職に結びつかなければ依頼する側としてはもちろん不満ですよね。でも、通常の広告代理店は数字ベースで見るので何が悪いんだ?とコミュニケーションに軋轢がある。広告代理店のあり方、スタンスにも関わる大事な論点です。

語る天谷さん

天谷

すごくわかります。
とは言え、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSやリスティング広告などと関わるようになって、LTVという考え方を身につけられたのは大きな収穫でした。飲食業だと、昔からの商習慣で短期的な売上しか考えていなかったので自ずと値引き合戦になり長期的な売上、その先の利益まで考えている人がとても少なかったんですよね
デフレの時代も体験してきた中で、いかにリピートしてもらうかを軸に考えると、自然と値引きではなくてファンを作ろうという考え方になりました。他の飲食業は、どうしても短期的な売上を見てしまいがちですが、僕の場合は「粗利率」「リピート率」「客単価」しか見ません。売上の数字が多少ぶれたとしても、これら3軸が達成できていれば大丈夫です。

アナグラム

リピート率はどう見ているのですか?

天谷

SNSでどのくらい投稿があったとか、複数来店で貯まるスタンプカードの回収が何枚あったとか、無料でお出ししているコーヒーが何杯出たかなどで見ています。

アナグラム

コーヒーが出た数=お配りしている次回来店コーヒー無料券を持ってきてくれた数ということですね。集客まわりはほとんど天谷さんご自身で管理されているのでしょうか。

天谷

逆に私と同等の規模の企業などであれば、他の企業さんは集客に人を使いすぎだと思いますね。最終的な決断を決裁者が出すなら最初から決裁者が決めていくべきです。いかに広告費と値引きを減らしていくか考えるとリピート率へ帰結するので、現場に求めるのはどうやってリピート率の高いお客さまを育てるかというただ1点に絞っています。

一人一人の給与明細に自筆のコメント? 教育に力を入れる理由

アナグラム

数年前に福井にセミナーで来て以降、Facebookで昔からつながっていますが、天谷さんといえば、猛烈に仕事をされているイメージですね。

天谷

イマドキ少ない昭和タイプです(笑)休みの日もFacebook投稿のために過ごしています。女の子たちはInstagram投稿用の写真を撮るためにハワイへ行ったりしますよね。僕もFacebook投稿用の写真を撮るために子どもたちと出かけるとか。とにかく、仕事中心ですね。つねに全力です。
僕がはじめて就職した頃は、バブルが一度弾けたあと再び盛り上がりを見せてきた猛烈な時代だったので、その頃の慣習で長時間働くことに抵抗がないというか、働いていたほうが楽です。趣味は仕事。いろんな方とお会いさせてもらって、吸収して、仕事に活かしていくような時間も含めると、ひたすら仕事をしているのかな。

アナグラム

美容師さんが最たる例ですが、飲食やアパレルは技術を身につけるという点で時間がものを言いますよね。ところが現代の働き方の傾向は、長時間労働が良しとされない。このあたり、どういうお考えでしょうか。

天谷

会社が成長していく中で、その人が何に対して働くかで線引きします。幹部として会社の中心で働くのであれば、なるべく長い時間を一緒に過ごして価値観を共有したいですし、ライフスタイルを大切にしつつ働くのであればその方に合わせた仕事をお願いしたい。どちらかを蔑ろにはしていません。

アナグラム

一対一の人事があるということですね。一人一人の給与明細に自筆のコメントを入れているのには驚きました。

天谷

28人全員にコメントを入れていますね。有難いことに、あの給与明細をもらうために入りたいと言ってくれる人もいます。はじめは土日働けない条件で入ってきたスタッフも、関係性が出来たことで土日の働く時間を作ってくれたこともありました。

もちろん、一人へフォーカスし過ぎても不平不満の種になってしまうので、個別ミーティングのほか定期的に全体会議や飲み会を開催してお互いを知ってもらう場面をたくさん作るようにしています。一緒に仕事しているだけだと、なんであの人たちは仲が良いのだろう?とかどうしてこの投稿をしているのだろう?とか、根深いところは見えてきづらいので、賛否あるのを前提にでもお酒の力を借りて本音を出してもらいたい。
売り手市場の中、うちのお店に来てくれている以上はここで働けてよかったと最後まで思ってもらえるように心がけています。

ろくろ手で語る天谷さん

アナグラム

非常に細かくペルソナを設定している天谷さんですが、店舗で流れている音楽や置いてある漫画も意識して選ばれている気がするのですが…。

天谷

はい。徹底しています。その甲斐もあり、本店はペルソナ通りのお客さんしか来ないですね。マーケティングを勉強して楽しいなと思う部分でもあります。

アナグラム

スタッフさんには早い段階でペルソナを共有するのでしょうか。

天谷

最初の研修で共有しますね。どういうお客さまを狙って、どういう集客をしていくかをお伝えしています。飲食店の離職理由1位は教育不足なので、最初にしっかりと教育してあげたい。その上で、再来店に繋がるような声掛けをしてもらいつつ、差別化としてSNSを組み合わせてファン作りに勤しんでいます。

アナグラム

ファン作りという点で感銘を受けたのは、店舗のFacebookページにいいね!してくれた人を、天谷さん個人のFacebookアカウントから友達申請していますよね。

天谷

実来店の見込みがありそうな方には一人一人やっていますね。1週間以内のコンバージョン率は70%を超えるので恐ろしく費用対効果がいい施策の一つです。店舗のFacebookページ・僕のFacebook投稿・更にはスタッフのFacebook投稿まで見るようになるので、さまざまな面で接触ができるようになります。

リスティング広告やTrueViewなどの動画広告も配信しているのであらゆるタッチポイントが増して、少ない予算でブランディングが出来ます。更には、月~火に記事広告で商品の提案をして、忘れられないように木~金でTrueViewを打つような月曜から日曜までの流れを作っています。

アナグラム

最早広告代理店顔負けですね。。。
今取り組んでいる試みはありますか?

天谷

求人です。福井県は有効求人倍率が東京を抜いて全国1位になるくらい、どの業界も人手不足。関係性づくりは僕の強みなので、来てもらえれば離職率はすごく低いですが、絶対的な応募数が少ないので、どうやって増やすかが悩みです。大手が参入してくると、膨大な求人コストと戦わないといけないのでどのように求人をしていくかは常に切磋琢磨していますね。

アナグラム

求人ページのコンテンツが豊富で驚きました。

天谷

地方の2店舗しかないとんかつ屋が、求人専用のランディングページを持つのは中々ないですよね。今年の春は、他の媒体をすべて捨ててTwitterだけで求人をしてみました。その時は、たまたまタイミングとペルソナが綺麗にはまって20,000円で20人くらい応募が来ました。今後も試行錯誤は続けていきます。

アナグラム

試みというと、関係性づくりも重要視されていますよね。

天谷

スタッフのみんなにもSNSの投稿を積極的にやってもらいたい一方、人のライフスタイルや価値観はそれぞれだからSNSの投稿を強要することはすごく難しいですよね。
なので、スタッフがSNSに投稿しやすくなるような普段からの関係性づくりは心がけています。投稿が習慣化してくれると、僕が求人の投稿をしたときも、抵抗感無く気軽にシェアしてくれるようになります。

「好きこそものの上手なれ」もっと広告を愛してほしい

天谷

今日、どうしても言いたいことがあります。

アナグラム

広告についてですね。お聞きしたいです。

天谷

最近、心躍る広告が少ない!僕は広告マニアなのでたくさん広告を見るのですが、これクリックしたい、とドキドキする機会が減りました。コンバージョン数を獲るため・結果を出すためのセーフティな広告が増えたのかなと思います。

勿論、それは大切ですが、まだ接触したことがない新しいお客さん・新しい何かを切り開くためのチャレンジ的な広告が昔と比べて断然減ってしまっている。

広告について熱く語る天谷さん

アナグラム

私たちも感じるところですが、昨今だと、クライアントも広告代理店も守りに行っている傾向があるかもしれませんね。逆に小さな広告代理店の方がエッジの効いたクリエイティブをチャレンジしていたりしますが、どうしてもCPAのみでジャッジされることが多い。勿論、それが決して悪いことではないのですが、守るところはしっかり守りつつ、チャレンジ予算を定めて、攻めに行く。この使い分けが求められるのではないかなと思いますし、そういった要望もどんどん増えてきてます。

天谷

クライアント側の立場として言うと、もっと違う角度で攻めてみませんか?という提案が欲しいです。広告業界ならではの時間の無さなどもあるとは言え、フォントを少し変えてみました程度のA/Bテストでしかジャッジが進んでいないなと感じます。

例えば、注文を待っているお客さんはスマホでゲームアプリをしている確率がスゴイ高いです。そこに広告が打てたら面白い。しかし、広告代理店からは、誤クリックの問題があるのでパフォーマンスは…と当たり前の提案しかしてもらえない。現実問題、自分の目の前でペルソナに当てはまる人たちがゲームアプリをしているのだから、その人達に対して何かしらできる施策を提案してほしいです。

アナグラム

そうやってクライアントと広告代理店の関係性が深まったり、新しい施策が打ち出せたりしますよね。

天谷

僕の持論ですが「好きこそものの上手なれ」で、広告代理店の人はもっと広告を愛するべきだと思います。広告は、打ち出した施策に対するレスポンスが一番ダイレクトに返ってくるので、すごいやり甲斐を感じるのですが、広告代理店の人は業務に追われているのか楽しむ心を失ってしまっているように見える。もっと楽しんで仕事をしてほしいし、楽しむことでクライアントにもチャレンジングな提案ができるようになって、結果パフォーマンスが良くなっていくのではないでしょうか。

それともう一つ。IT業界はじめ、インターネットに携わる業界にいる人が、SNSをあまりアクティブにやらないという不満があります。
FacebookやInstagramで投稿を検索する動機と、GoogleやYahoo!で自然検索する動機は違いますよね。広告代理店の多くはGoogleの話から始めるが、そこにたどり着くまでの過程を考えようよと。同じ1つの流入にしても質が違うので、実際に触れてみないと違いを把握することは難しい。だから、企業に携わる営業の方や企画の方は、ぜひSNSをアクティブに活用するべきだと思っています。

アナグラム

おっしゃる通りで、自分が事業主側だとしたらFacebookを使っていない人にFacebook広告を出してもらいたくない。とは言え、見る専もいるのも事実ですし、特にFacebookなんかは現実社会をインターネット上に移したSNSですから強要は難しい。

しかし昨今で面接を通して感じるのはSNSそのものに興味が無い人も実際に多いなぁと思います。

天谷

実際にSNSをやらない人に、良いSNS広告は打てないですよね。例えばTwitterはスルーの文化なので、どう立ち止まってもらえるかが重要です。僕は仮にウザいと思われても3連発でツイートします。でも、これって実際にやっていないと気付けないしわからない。Facebookも新機能が出たらとにかく使います。新機能って、Facebook側が使ってほしい機能とも言えるので、使うと関連度は上がりやすいですね。媒体側の気持ちになって色々やってみるという考え方を大切にしています。

広告も同じで、自分が配信した広告の受け手になってみたり、商材やサービスを実際に体感するようにします。そうすることで、背景はこの色に変えようとか日中にこの広告を受け取った場合どうしたらコンバージョンまで到達してもらえるかとか気付きを得られます。これは、リアルで体験しないとわからない部分ですよね。

アナグラム

最後に、地方に住んでいるマーケター、同業者に対して伝えたいことはありますか?

天谷

SNSやろうよ!ブログ書こうよ!に尽きます。同業者になると、殆ど使っていない。もしも、料理が上手くてSNSを一生懸命やっていてもアウトプットが下手でうまく集客できないのであれば、それこそ相談に乗ってあげたい。

農産物や伝統工業も同じことが言えますね。みんなが楽天、EC、メルカリ…ってツールを使いこなせるはずではないので、ブランディングがうまくされずに地方に埋もれてしまっている食材は本当にもったいないし、なんとか伸ばしてあげたい。同時に、インターネットに携わる人達は、こういうものを表舞台に広める手助けが使命なんじゃないかと思いますよ。

アナグラム編集後記

飲食業に関する知見はさることながら、広告やマーケティングに関する知識も豊富で、かつその実行力も兼ね備えている天谷さんを「とんかつ屋さん」と呼ぶには違和感を覚えるほど。店内に置く漫画や、流す音楽まで自分で作ったペルソナ通りに設計し、集客をしている天谷さん。さらにスタッフの教育に力を入れ、全員の給与明細にコメントを入れるなどスタッフとの良い関係づくりまで行う天谷さんは素晴らしいマーケターであり、経営者であり、とんかつ屋の店主であると感じました。

Facebook広告の恩恵をすごく受けているはずの広告代理店が、Facebookを盛り上げようという意識を持てていない。もっと、業界全体でFacebookを盛り上げていきましょうよ!と愛を熱く語り、それを自ら実行し続ける天谷さん。正直に申し上げると、広告業界の多くの方よりも「広告」そのものを愛していると感じました。

天膳のFacebookページを見てみると、福井という土地でそのファンの多さや、ポジティブなレビューの数に驚かされます。一度いいね!をしようものなら、福井県までとんかつを食べに行きたくなること間違いないでしょう。

お店にお伺いしたのは14時頃でしたが、駐車場は埋まっており、その時間でも多くのお客さんがいらっしゃいました。取材前にとんかつを頂き、そのおいしさはもちろん、スタッフの方の接客も素晴らしく人気の理由を、身をもって感じました。
すべての飲食店のオーナーが天谷さんのようなマーケターになるのは正直難しいでしょう。しかし、天谷さんから学べることは少なくないはずです。

とんかつ定食の写真

文:高梨和歌子
編集:阿部圭司/賀来重宏
写真:賀来重宏