鳥取県のマーケター、濱本さんが鳥取県で働く理由は「地元が好き」だから。

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鳥取砂丘や、最近では宇多田ヒカルが6年ぶりにCM出演ということで話題になった大山など雄大な自然に恵まれた鳥取県。その鳥取で生まれ育ち、現在インフローとリュージョンコンサルティングの2社を経営されている濱本浩二さんにお話を伺ってきました。

濱本さん近影

地方ならではの売り方とは?

アナグラム

今、どんなお仕事をされているのか教えてください。

濱本

インフローとリュージョンコンサルティングという会社、2社を経営しています。2社ともウェブ周りを取り扱っている共通点があります。鳥取県に根ざして企業のお手伝いをする軸としてのインフローと、全国にてセミナーをしたり、アフィリエイト事業をメインとして収益を上げるリュージョンコンサルティングですね。

インフローでは主にSEOやリスティング広告といった集客を行う事業を行っています。鳥取県唯一のYahoo!代理店なので、純広告と組み合わせた柔軟な提案とかもしています。
最近だと、事業主のアフィリエイトのコンサルティングもして、幸いなことに優秀なアフィリエイターさんの知り合いが周りに沢山居るし、動いてもらうこともできるから、そこは強みですかね。

アナグラム

インフローのお客さんはどういう業種が多いですか?

濱本

鳥取県のEC通販系が中心です。地元で店舗を経営しているようなクライアントも多く、経営者や地銀からの紹介が多いですね。

アナグラム

ほとんどが鳥取県のお客さんですか?地元ならではの困ったことなどもあれば教えてください。

濱本

ほとんどが地元のクライアントです。困ったことというか、毎回悩むのは特に地元で店舗を経営しているようなクライアントの場合、同じインターネットといえども、都会と地方では顧客数やターゲティングに絶対的な数で限界があるので、ただ検索連動型広告を出しただけではクリックもされないし、Facebook広告でターゲティングしただけでは見向きもされにくい。つまり、これまでの広告代理店の収益モデル(広告費のパーセンテージで得られる収益構造)自体を変えないといけない。地方ならではの戦い方が必要になってきます。

リスティング広告を例に挙げると、地方の人は、あまりインターネットで検索をしないんです。そうなると、都会と同じ戦い方では通用しません。選択肢の絶対数が少ないから、頭にすでにいくつかの選択肢が浮かんでいて、その中からお店やサービスを選びます。例えば、都会のように「ラーメンが食べたいから近場で評価の高いラーメンを検索」ではなくて、すでに頭の中にある幾つかの選択肢の中から選んでしまうイメージです。こういった事情から、まずはウェブチラシ的にリスティング広告を試してもらって、選択肢に入るところから始めていかなくてはならないんです。

同じように、クライアントへ提案する際には、ネットは難しい、というハードルを下げることが求められます。「リスティング広告やりませんか!」ではなくて、「ウェブで出せるチラシやりませんか!」のほうが、馴染み深い媒体に近いので、受け入れられやすい。

地方は、これまでに無い価値のものを売ることになる。だから、同じリスティング広告だけど違う角度で切り取ってあげるようなビジネスモデルが必要不可欠といえます。相手の土俵やリテラシーに合わせて提案するイメージです。

アナグラム

まさに地方ならではの戦い方ですね。

ちょっと困った人がノックできる仕組みづくり

アナグラム

今後はどういった取り組みをしようかなどあれば教えてください。

濱本

今まではほとんどが、紹介のお客さんだったんですけど、久々に営業をしようかなと考えています。リーチが限られているのもありますが…地方では、ちょっと困っているお客さんへ寄り添うファーストステップとしてメディアを合わせる必要がある。だからこそ、これからは営業が必要になってくるんですよ。

アナグラム

お客さんへ寄り添うためには、営業という手段が合っていると。

濱本

お客さんへ寄り添うというか、そもそもビジネスがカチっと嵌まるためには、以下の3つが全て合わないとだめなんですよ。

①マーケット(儲かるのか?お客さんがいるのか?)
②メッセージ
③メディア(その人たちが普段慣れ親しんでいるもの)

例えば、鳥取県だと「住宅メーカーの新築を建てましょう!」という広告が新聞に出ている。でも、新聞を一番読んでいるのは50代以上で新築を検討している30代ではない。マーケットやメッセージが合っていても、メディアが合っていないから広告がお客さんへ届かない。
ウェブ業界によくある話で例えると、SEOに自信がある人は、電話営業じゃなくてSEOで集客するべきだと思われることが多いですよね。でも、お客さんが慣れ親しんでいるメディア(電話)で接触できているので、実はメディアが合っているんです。

営業しなくても仕事がある、っていうのは有り難いの一言に尽きます。
じゃあ、本当に困っていてWEB集客を必要としているひとが、検索してわざわざうちに電話してくるかって言うと、県外はあるかもしれないけど県内にはないからね。こちらが寄り添わないと。

あとは、セカンドオピニオンとしてのお手伝いも少しずつ始めています。地方だと都会と比べると昔からのつながりが強かったりするので、「本当は付き合いたいけれど、どうしても今のところは切れないんです!」というところって意外と多いんですよね。そういうところにセカンドオピニオンとして入ることも増えています。顧客満足度は高いですよ。

鳥取の県民性「煮えたらくおうや」

アナグラム

鳥取県ならではというか、ユニークな点ってありますか?

濱本

煮えたらくおうや、っていう県民性ですかね。

アナグラム

「煮えたらくおうや」?

濱本

鍋が煮えたとしても誰も手をつけない。ようやく一人が食べ始めると、我も我もと食べ始める。既にうまく行った事例がなければやらないんですよね。意味的にはファーストペンギンと同じです。
そんな人達を相手にするわけだから、つい八方美人になりがちですよね。ただ、みんなに好かれようと思うと、誰にも好かれません。誰に嫌われるかを決めることが第一歩。その上で、これだけは、という強みを自分から言い続ける必要がある。誰かには嫌われるかもしれないけれど、いい仕事ができていれば、結果覚えてもらえるし、困った時に選択肢に入れてもらえるようになります。

仕事の取り組み方でいうと、インフローが重宝してもらえるのは、インフローができないことがあったとしても、必ず問題と解決策を繋げられる。つまり、何らかの形で解決策を出すことができるからかなと思います。鳥取県には、そういう会社や人自体が存在しないんです。地方でビジネスをしていくためには、地元に根付かないと何も始まらないし、続かない。

今までは専門知識の深掘りだけで良かったかもしれないけれど、これからは縦横無尽に動けるジェネラリスト(T型人材)を目指さないといけないですよね。

アナグラム

ちなみに、改めて濱本さんが鳥取県で仕事を続けている理由ってなんでしょうか?

濱本

地元だし、そもそも都会が好きじゃないから。東京に2日いると帰りたくなっちゃう…。東京をはじめ、都会には情報も人もあるけど、会社自体を大きくしようと思ったことはないので、鳥取から出たことないし、出ようと思ったこともないですね。

地域への貢献って意味では、会社を大きくして地元の雇用を生み出す貢献はありつつ、良い物を売らないっていうのは罪なので。今ある地元の企業のお手伝いをして雇用を守る、って方に重きを置いています。

あとは、サーフィンが好きなので、海が近い方がいい(笑)平たく言うと、地元が好きなんでしょうね。

常に意識していることやお薦めの書籍

アナグラム

常に意識していることやお薦めの書籍があれば教えてください。

濱本

大小いろんなところとお付き合いさせていただいているんですが、いろいろ見させていただいて思うのは「経営は値決め」だと思うんですよ。売るのは簡単なんですけど、売れば売るほど赤字になっていたら意味ないじゃないですか。地方だからこそ売上より利益率を大事にしたいですね。だから売り方やプライシングに関する本は多いです。

あとやっぱりAIとFintechですね。AIはもう人材採用にまで活用されていますし、スマートフォン以上のインパクトが10年後とかに…!だから気になる新聞記事は、こうしてストックしています。

新聞記事のスクラップ帖をめくる濱本さん

新聞記事を定期的にストックして読み返すという

アナグラム

すごい! ここまでやる人、世の中で殆どいないと思いますよ。今、みんなEvernoteですからね。そして、結果的に見なくなってしまう。

濱本

定期的に見返すのは大切ですからね。予測の当たり外れとか。

アナグラム

濱本さんは本もたくさん読まれますよね。こだわりの書籍とかありますか?

濱本

王道だけど「ハイパワーマーケティング」「影響力の武器(実践編)」ですかね。「戦略がすべて」の著者が出している「武器としての決断思考」もおすすめです。あとは、マーケティングから逸れますが、君主論関連は一時期はまりましたね。「よいこの君主論」は面白かったです。クラス内でマキャヴェリの教えに沿って派閥を作る…

アナグラム

現代版マキャヴェリですね。

濱本

そうそう。最近だと「ブロックバスター戦略」がロングテールについて論じていて興味深かった。色んなジャンルの本を読むようにしています。

本のぎっしり詰まった本棚の前で1冊を手に取る濱本さん

色んな本を読みますが、読み返したい本は10%にも満たないという濱本さん

文中でお勧めした本の写真

推薦いただいた書籍

ホームランを打つ必要はない。ヒットを量産し続けたい

アナグラム

人生の転機ってありますか?

濱本

ふつーの人生だからなあ…

アナグラム

いやいや(笑)

濱本

そうですね、2005年頃のサラリーマン時代に、買ったばかりのインターネットで副業何かないかなって。そこでたまたま出会ったのがSEOにアドセンス。これ田舎でもいけるのでは?と、会社辞めて一年間しっかり取り組もうと。そこからずっとこの業界ですね。

アナグラム

憧れの人とか、尊敬している人とかっていますか。また、これを読んでいるマーケターに伝えたいことなどあれば。

濱本

誰みたいになりたいとか、そういう憧れもないんですよね。
歴史は勝者しか語れないし、エピソードは後付されるもの。でも、現実ってそうじゃない。成功するときって、知識とかじゃなくて、運とタイミングだと思うんですよ。アクセルを踏むべきときにしっかり踏めるかどうか。
勝つ要因って大体、相手の気の緩みとかですからね。負ける要因は自分の中にしかない。だから、勝てるやり方よりも負けないやり方が好き。

先行者利益ってテクノロジーの企業以外で言えばたかが知れてて、僕は残存者利益の方が大きいと思っているんですよね。居続けることが大事。でも踏み間違えると大変なんだろうな、みたいな(笑)みんなはホームランを打ちたがるけど、バントでいいんですよね。ヒットを量産して、塁を埋めていきたいし、そういう企業をこれからも支え続けていきたい。

アナグラム編集後記

本メディアを立ち上げるに当たって、まず最初にインタビューしたいと思ったのが数年前に鳥取で出会った濱本さんでした。濱本さんは鳥取にいながら、トップアフィリエイターとしてだけではなく、売り方を工夫しながら地元にも密着したビジネスを成り立たせています。濱本さんの生き方は地方で活躍する、もしくはいつか地方に戻りたい…と考えているさまざまなマーケターの参考になるはずです。

また、濱本さんはマーケターであると同時にやはり優れた経営者でもあるなと感じました。企業には収益性と社会性の2つが重要だと言われています。収益性が無ければ企業は雇用や事業を維持できなくなってしまいますし、社会性が無ければ存在自体が認められません。そんな中、濱本さんは2つの会社を媒介として、リュージョンコンサルティング(収益性)とインフロー(社会性)の2つを行き来しながら成り立たせています。

地域でビジネスをしていくためには、一匹狼にならず、お客さんに「寄り添う」ことが非常に重要だと言い、売上よりも利益率にこだわる姿勢。そしてその先に見据えるのは継続性です。それを体現されている濱本さんの優しくも厳しくもある鳥取への愛がすごく伝わりました。「地元でビジネスをしていくためには、地元に根付かないと何も始まらないし、続かない」、というメッセージの通り、取材後一緒に鳥取市内を歩くと道行くたくさんの人にあいさつをする濱本さんの顔の広さには驚きました。

鳥取県の牡蠣、夏輝の写真

それにしても鳥取県の牡蠣、夏輝は最高でした

文:高梨和歌子
編集:阿部圭司/賀来重宏
写真:賀来重宏