Instagramマーケティングにスタンダードを創る|株式会社ホットリンク アサヤマさん

  • 関東

2021年3月現在、国内の月間アクティブユーザーは3,300万人とfacebookをも超えたInstagram。近年は検索のプラットフォームにもなりつつあり、マーケティングチャネルとしての存在感が増しています。

そこで今回はソーシャルメディアマーケティングに強いホットリンク社より、Instagramの専門家である朝山高至さん(以下アサヤマさん)にお時間をいただきました!目まぐるしく変わる機能やアルゴリズムのなかでも変わらない本質に着目し、Instagramを売上につなげる正攻法をお聞きしました。記事の後半では、若くしてご活躍されているアサヤマさんの原動力にも迫っています。ぜひ、お楽しみください。

「ビジュアルで検索したいものはInstagram」が普通になる

アナグラム

……先日、20代前半の後輩から送られてきたおすすめカフェのURLがInstagramアカウントだったんです。「え!食べログやRettyじゃないの!?」とアラサーの私はすっかり驚いてしまったのですが、アサヤマさん、10〜20代にとってはやはりInstagramでお店やコスメを探すことが一般的なんでしょうか?

asayama

飲食店やアパレル、旅行などビジュアルをチェックしたいものに関しては「Instagramで検索する」というユーザー行動が間違いなく増えています。とくに日本は検索大国で、世界平均の3倍ほどハッシュタグ検索が盛んなんですよ。いまは「#カフェ」といった単一ワードのハッシュタグ検索しかできませんが、「渋谷 カフェ」と検索すると合致する画像がヒットするような高度な検索機能がすでにアメリカでテストされています。これが実装されるとビジュアルの検索はますますInstagramに集約される可能性が高いですね。

アナグラム

そうなるとやはり業種によってはマーケティング活動にInstagramを取り入れることが必須となりそうですね……!本日は書籍『ゼロからわかるビジネスInstagram』の著者であるアサヤマさんに、Instagramを売上につなげる正攻法を教えてもらうべくやってきました!どうぞよろしくお願いいたします!

asayama

お役に立てるよう、がんばります!

Instagramで売上を伸ばす方法を分解して考えよう

アナグラム

アサヤマさん、ずばり単刀直入にお聞きします。Instagramで売上を伸ばす方法を教えてください!!!

asayama

はい、ちょっと分解して考えていきましょうか(笑)大きく分けると、直接売上につなげる方法と、間接的に売上につなげる方法の2種類が存在します。直接売上につなげる方法とはその言葉のとおり、Instagram上の投稿からeコマースへ飛んでダイレクトに購入してもらうやり方です。

正直なところ、買い物をするためにInstagramのアプリを開く人は現状そこまで多くないと感じています。ただ、Instagram自体がコマースのプラットフォームを目指してあらゆる機能を拡充しているんですね。たとえば、ライブコマース機能やチェックアウト機能(=Instagramに登録したお支払い情報で各ブランドのアイテムが購入できる機能)はすでに海外でテストされていて、近い将来使えるようになると思います。今後どんどん買い物がしやすくなっていくでしょうね。

アナグラム

チェックアウト機能が実装されてしまうとバンバン服を買ってしまいそうで私は非常にこわいです(涙)。続いて、間接的な方法についても教えてください!

asayama

間接的に売上につなげる方法として、弊社が提唱しているInstagramの購買行動プロセス「UDSSAS(ウドサス)を紹介します。

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UDSSAS!ホットリンク社が提唱する「ULSSAS(ウルサス)」のInstagram版ですね。

asayama

そうです。UDSSASを簡単に説明しますね。起点は、Instagramユーザーによる投稿(UGC)です。それをフィードやストーリーズ、発見タブ、ハッシュタグ検索などで見つけ(Discover)、興味を持つといったん保存(Save)。必要だと思ったタイミングで詳細情報をGoogleや口コミサイトで検索し(Search)、求める条件に合っていれば店舗やECで購入(Action)、感想をInstagramに投稿する(Share)。そのUGCは他のユーザーが商品を知るきっかけとなり、購買行動がぐるぐる回っていく……という一連の流れをモデル化したものです。ポイントは、Instagramをアテンション(認知)を広げる場所として活用すること。

大量の広告を配信してアテンションを広げる方法もありますが、UGCがあれば広告費をかけずにアテンションを広げ続けられます。1対nよりN対nの関係性のほうが情報伝播効率も極めて高いですよね。

さらには、「このチーズケーキ美味しいから食べて」という企業の投稿よりも、「ミスチめっちゃ美味しい!」という友人の投稿のほうがつい購入したくなるじゃないですか。効率面だけではなく信頼面でも、UGCの活用は大切です。

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改めてUGCの重要性を理解しました。ありがとうございます!Instagramはビジュアル中心なのでUGCが出やすい/出にくいと傾向がハッキリ分かれそうですが、自社がInstagramに取り組むべきかどうかはどう見極めるとよいでしょうか?

asayama

ブランド名ですでにUGCが出ているかどうか、ビジュアルを閲覧したいというニーズがあるかどうかという2つの観点で相性を確かめることができます。現時点でUGCが出ていなくても、ビジュアルがチェックされる商品であればアテンションを増やすことでUGCを醸成できる可能性が高いですね。

一方で、たとえば人材紹介や金融商材、BtoB商材などは「ビジュアルを見たい!」と思う人ってほぼいないじゃないですか。この場合UGCを出すことは難しいです。お役立ち情報をまとめた文字中心の画像を投稿してアカウントをフォローしてもらい、その後コンバージョンにつなげていく……というオウンドメディアのような活用は可能ですが、費用対効果で考えると、Instagram広告や別のメディアに投資したほうがよいケースが多いでしょうね。

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文字中心のお役立ち情報画像を最近よく見かけるようになりましたが、たしかにそれらはN対nのアーンドメディアではなく、1対nのオウンドメディアとしての活用に留まるわけですね。Instagramで売上を伸ばす方法、すっかり整理して理解することができました!

テクニック論ではない、本質的なフォロワーの増やし方

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ここからはいざアテンションを広げるべく奮闘するInstagram担当者がリアルに悩みそうな具体的な疑問をぶつけていこうと思います!

結局フォロワーって増やす必要があるのでしょうか?UGCが大事!っていうことだとそこまでフォロワー数にはこだわらなくてもいいのかも、と感じたのですが……。

asayama

フォロワーを増やすことは決して無駄ではないですよ。「新商品が出ました!」と投稿したときに「買いました!」と呼応して投稿してくれるようなフォロワーが多ければ多いほどアテンションは広まりやすいですよね。つまり定期的に自社ブランドの口コミを出してくれるような質の高いフォロワー基盤を作ることが重要です。

正直なところ、ただフォロワー数を増やすだけならプレゼントキャンペーンの連発が一番コスパがいいんです。ただこうしたキャンペーンで得たフォロワーって、ターゲットユーザーと異なる、キャンペーン終了後にどんどん減っていく……みたいなことがほとんどで、質のいいフォロワーとは呼べないですよね。

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なるほど。質のいいフォロワーの増やし方、ぜひ知りたいです!「プロフィール画面に並ぶ画像の統一感が大事」といった小技はよく聞きますが、本来なにをすべきなんでしょうか?

asayama

「美しいビジュアルが見たい」という目的でフォローされているアカウントなのであれば画像の統一感を出すべきですが、フォローする理由ってそれだけじゃないですよね。「時短レシピが知りたい」「ヘアアレンジ方法が知りたい」など、理由はさまざまあるはずです。

質のいいフォロワーを増やすポイントはシンプルで、お客様が求めている、つい保存してあとから見返したくなるようなコンテンツを提供することです。あとは、アカウントが提供する価値を絞ることは大事ですね。投稿を見ていいなと思いプロフィール画面に移動したとき、その他のコンテンツがあまりにバラバラだとフォローしようとは思わないですから。

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「つい保存してあとから見返したくなるコンテンツを作る」って、わかりやすくていいですね!具体的なイメージが湧いてきます。

asayama

「保存」の数って、実はInstagramのアルゴリズム上でも重視されている指標なんですよ。発見タブやハッシュタグ検索結果の上部にあがりやすいのは、よくいいねされるコンテンツよりも、よく保存されるコンテンツです。

いいねは相手に通知されるので、好意を示すコミュニケーションの一環として使われることが多いんですよ。一方で保存は相手に通知がいくわけではないので、純粋に自分にとって有益だと感じたときにしか発生しない。発見タブやハッシュタグ検索結果は自分にとって有益なコンテンツを発見することが目的なので、保存数が重視されているんです。

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いいねと保存、同じエンゲージメントなのに使われ方が違っておもしろいですね!……保存されるようなコンテンツを目指すとして、「お客様がなにを求めているのか」って、どうやってリサーチしたらよいでしょうか?

asayama

実際にいろいろと画像を投稿してみてどれが多く保存されるのかを見ていくのはもちろんのこと、ストーリーズのアンケート機能を使って「どんなコンテンツを見たいですか?」と直接フォロワーに聞いちゃうのもアリだと思います。あとはInstagram内に留まらず、店舗でよく聞かれることやWebサイトでよく閲覧されているものなんかもヒントになりますね。

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アンケート機能!フォロワーとコミュニケーションをとるきっかけにもなっていいですね。ちなみに、DMやコメント返信といったコミュニケーションってとったほうがよい……ですよね?

asayama

そうですね、基本的にはコミュニケーションはとるほうがよいです。DMやいいねなど、コミュニケーション量が多いアカウントはフィードやストーリーズの上部にあがる傾向があります。

そもそもInstagramが掲げているミッションが「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」なんですよ。アカウント同士の親密度をあげる、関係性を築いていくことを大事にしているプラットフォームなので、コミュニケーションが大事なのは今後もずっと変わらないでしょうね。

アナグラム

お客様が求めているコンテンツを提供し、コミュニケーションをとること、ですね。質のいいフォロワーを増やすためにコツコツとやるべきことが非常にクリアになりました。ありがとうございます!

asayama

少し補足すると、コンテンツの質とコミュニケーションは大前提で、さらにそのコンテンツが少しでも新しい潜在顧客の目に触れるよう仕掛けることは大切です。Instagramのアルゴリズム上、アカウント開設初期は発見タブで露出を増やすのは難しいため、まずは難易度の低いハッシュタグ検索の上位掲載を狙うことをおすすめします。

ハッシュタグの選定はSEOにおけるキーワード選定と考え方が近いですね。まずは潜在顧客がInstagram内で検索しそうなキーワードをリストアップする。実際にそのキーワードでハッシュタグ検索してみて、上位の投稿、すなわちユーザーの検索意図とこれから自分が投稿する内容がマッチしているか確認しつつ、関連するハッシュタグも洗い出す……といった流れです。

アナグラム

ハッシュタグって思いつくものをとにかく大量につけがちでしたが、SEO同様に考えるとわかりやすいですね!

asayama

あとは、プラットフォーム側が推している機能に乗っかったほうがコンテンツがリーチしやすい、ということは実際に起き得ます。たとえば少し前はIGTVでしたし、現在はReelsですね。これはアプリ内の配置を見ても明らかで、こういったプラットフォーム側の意図を汲んでうまく活用するとより効率的にアテンションを広げることができます。ビッグウェーブには乗っておこう!みたいな感じですね(笑)

アナグラム

なるほど、たしかにTikTokへ追いつけ追い越せと、Reelsへの力の入れ具合はすごいですよね。ビッグウェーブ、しっかり乗っていこうと思います!(笑)(Instagramのお話は以上ですが、まだまだノウハウを知りたい方はアサヤマさんの著書をチェックしてみてくださいね!)

Instagramマーケティングにスタンダードを

アナグラム

……ここからは、書籍出版やMVP受賞など大活躍中のアサヤマさんご自身についてお話をお聞きしたいと思います。数あるソーシャルメディアのなかでもInstagramを極めようと思ったのはどうしてですか?

asayama

Instagramって、個人情報保護の観点から途中でAPIの仕様が大きく変わってしまったこともあり、他のSNSに比べてデータドリブンに活用しきれていないところがあるんです。誰もやってない領域だからこそおもしろそうだと思い、興味をもって取り組むようになりました。そうこうしているうちにノウハウが溜まり、クライアントにメソッドを提供できるレベルになっちゃった。そんな経緯です(笑)

アナグラム

おもしろそうだと取り組んでいるうちに価値提供できるようになっちゃったのすごすぎます(笑)アサヤマさんはプログラミングや分析にも長けていますが、そのマルチなスキルはどうやって身につけていったのでしょうか?

asayama

きっかけは大学生のときに始めたインターンですね。職場にエンジニア兼マーケターの先輩がいて、カッコいいなと憧れを感じたんですよ。そこでマーケティングの仕事をしながらフロントエンドの勉強を始めました。新卒で入社したスタートアップ企業でも、企画からコーディングまで全部自分一人でやってWebサービスのUI/UXを改善していく……みたいなことをやっていまして。SEO周りのバックエンドの知識も多少あります。

アナグラム

現場で実践しながら身につけていったんですね。アサヤマさんのそのエネルギーって、いったいどこから湧いてきているのでしょう?

asayama

「この目標を達成したい」「スキルを身につけたい」「他の人より仕事ができるようになりたい」みたいなものって、本当に持っていないんですよ。ぼくはただ自分が楽しいと思えることをやりたい。誰にやれと言われなくても心や体が動き出してしまうものを、調べ尽くしたり考え尽くしたりしているだけなんです。努力をしているという感覚もありません。興味を持てば人の30倍速ぐらいで勝手にやっちゃうんですよね。ただ、興味がないものは人の100分の1倍速くらいでしかやれません。職場からも追放されると思います(笑)

アナグラム

なるほど……。アサヤマさんの強さの根源が垣間見れた気がします。勝手に体が動いてしまうようなお仕事ができているって、すばらしいことですね!興味を持つ対象になにか共通点はありますか?

asayama

一つは、自分の取り組みが回り回って誰かの助けになるかどうかですね。人助けというとちょっと大げさに聞こえますが、たとえば一杯の美味しいコーヒーの力でほっと安心したり、誰かと過ごす空間がパッと華やかになったりするじゃないですか。よい商品を口コミを通じて広げることで、そんなささいな幸せをより多くの方に届けられることにやりがいを感じます。

もう一つは、いろんなパーツを組み合わせて一つのものを作り上げているかどうか。昔から自分でボーカルもギターもベースもやって一つの音楽を作る、みたいなことをやっていたんですが、いまはデータやクリエイティブを活かしてさまざまな施策を打ち、最終的にInstagramをグロースさせて売上という成果を作り上げていくことにおもしろさを感じますね。

アナグラム

アサヤマさんはクリエイター気質なところもありますよね。調べて考えて設計し、自分の手でカタチまで作ってしまう。純粋に尊敬します!

さいごに、これからチャレンジしていきたいことをぜひ教えてください。

asayama

ホットリンクでInstagramマーケティングのスタンダートを創り、クライアントの売上を伸ばしながら、その先にいるエンドユーザーにまで価値を提供していきたい……というのが直近の野望です。

あと将来的には、プロダクトを作るのもおもしろそうだと思っています。いまってどんどん新しいSNSが出てきているじゃないですか。『Clubhouse』は空いていた耳の可処分時間を取りにいっていたり、『Dispo』は気軽に投稿できなくなったInstagramの課題を解決しにいっていたり。みんながいろんな観点でプロダクトを考え生み出していることに、めちゃめちゃワクワクしますね。

アナグラム

楽しそうな顔してますね(笑)アサヤマさんならいつか新しいSNSを創る側になっていそうです!本日は貴重なお話をありがとうございました!

アナグラム編集後記

「成果を出すために必要なのはやり抜く力(GRIT)だ」……とはよく言ったものですが、自分のエネルギーが爆発的に注げることを仕事にしているアサヤマさんは、まさにやり抜く力をもった人だと感じました。語りはじめると溢れ出る知識量がなによりの証拠です。夜な夜な海外の情報まで読み漁っている姿が目に浮かんでくるようでした。

「目標をもとう」「スキルアップしよう」といったそれらしいキャリア論をぶっ飛ばし、興味があるものを仕事にすることで大活躍しているアサヤマさんの姿は、きっと同じようにエネルギーを秘めた方にとってロールモデルになるのではないでしょうか。

……あぁ、同世代の人間としてつい嫉妬してしまいます(笑)。

取材:賀来重宏/森弘繁/まこりーぬ(ライター)
文 :まこりーぬ(ライター)
編集:賀来重宏
写真:賀来重宏