「Web制作会社」と名乗り続けながら、企業の本質的な課題に応えるという挑戦を続けていきたい|ベイジ代表取締役の枌谷力さん

  • 関東

NTTデータ入社後、未経験にしてWebデザイナーへ転身。フリーランスを経てWeb制作会社・株式会社ベイジを創業された枌谷力さん。デザインは勿論、BtoBマーケティング・組織論などTwitterでの示唆深いツイートが魅力的な枌谷さんが考える、デザインに惹かれた切っ掛けやTwitterとBtoBの関係性、色々な言葉が生まれるこの時代に敢えて昔ながらの「Web制作会社」と名乗り続ける理由、ベイジが描く制作会社の理想図とは?

制作会社ながら下請け無し!直取引へ転換した理由とは

アナグラム

枌谷さんはベイジ立ち上げ前から一貫してデザインのお仕事をされていたんでしょうか?

iitaka

いえ、新卒時はNTTデータで営業をしていました。ただその中では自分が小さな歯車の一つに感じてしまい、このままこの会社で一生を終えたくないと2年目辺りで感じ始め、起業したいと思うようになりました。

起業するなら自分が興味があったデザインが良い、でもデザインは未経験だしやり方もわからない、ということで会社に行きながらスクールに2年間通い、丸4年目のタイミングで退職しました。

私は独立する時もそうでしたけど、思い立ったらすぐ行動!ではなく準備期間をもってじっくり行くタイプなんですよね。その時も2年ほど準備期間がありましたね。

アナグラム

会社に大がいい、小がいいというのはないですが、合う合わないは確実にありますよね、わかります。しかし、営業だったのですねー!そこからデザインを志した切っ掛けは何ですか?

iitaka

社会人2年目の時、イントラネット用に部署のホームページを作るプロジェクトにたまたまアサインされたんです。元々絵を描くのが好きだったこともあり、このプロジェクトを通じてwebサイトのデザインって楽しいな、と思い始めました。ただこの頃はwebだけと絞ってたわけではなくて、スクールではグラフィックデザインから一通り学びました。2年間で自分の作品を30作品くらい作って、28歳の未経験デザイナーとして転職しました。

デザイナーとして働き始めてからはひたすら楽しかったです。今ではとんでもない環境なんでしょうけど、会社に4泊、ダンボールで寝て、その間睡眠は1~2時間。夜中の3時ごろ青山ブックセンターでデザイン本を貪るように見て、何かが閃いたらそれが明け方であってもイラストレーターやフォトショップを立ち上げて、デザイン作って…。

でも辛くなかった。ずっとやりたかった仕事だし、妥協をしたくなかった気持ちの方が強くて、労働環境とかには全然目がいきませんでしたね(笑)

アナグラム

うんうん。そういう働き方を推奨するわけではないですが凄くよくわかります。好きなことを仕事にするという感覚ですよね。

その後、フリーランスを経てベイジを創業するに至ったんですね。立ち上げ当初は下請け構造がありつつ今はほぼ直取引だとお聞きしましたが、どうでしょう?

iitaka

はい、下請けのお声はかかりますが、あえてそうする理由が見つけられない限り、お受けしていません。絶対受けない!と決めているわけではありませんが…。

下請けでお仕事をいただいていた頃は、自分たちで交渉や説明ができないが故に、時間と量が釣り合ってない要望が来てしまったり、お客さまの真意を汲み取りきれなかったりしたことも多く、望まない長時間労働や休日出勤に陥ることがしばしばあり、自分たちでプロジェクト管理やディレクションができない仕事の仕方はやめたいな、とずっと思っていたんですね。

私は与えられた指示に対して、作業屋さんとしてただ黙々と手を動かすのではなくて、パートナーとして一緒に議論しながら、最良のものを届けるような仕事がしたかったんです。そのためには、信頼関係を築きやすい直取引で、「ベイジさんと仕事がしたい」と言ってくれる会社と仕事がしたいなと思って。

アナグラム

いやぁ、驚きました!私も前職制作会社上がりなので、制作会社がクライアントと直取引を行うことって並大抵では出来ないのは理解してます。それを実現してしまっているとは…。

そして烏滸がましいのですが、弊社も全く同じ構造です。近しい理由から下請け無しで直接お仕事をいただくケースが殆どです。我々の仕事は数あるマーケティングの手法のうち運用型広告をフックにお客さまのビジネスをどう伸ばしていくか戦略立案していく知識労働で、直接やり取りできないとどうしても関係構築が難しいですし、コミュニケーションミスも避けられません。お客さまと実運用者の間に代理店さんがいることで形骸化しているけれどなんとなくやり続けないといけない作業も起こりやすい。

一緒にお取り組みするからには、全力でビジネス拡大に向けたお手伝いをしたいですし、そのためには直取引がやりやすかった。勿論、それには試行錯誤をするわけですが。

iitaka

似てますね。クライアント側からしても、代理店さんの下にいる実態がよくわからない制作会社が自分たちのサイトを作ってくれるって言われても、関係を築きにくいですよね。

実はベイジの直取引体制が軌道に乗った後、一度だけ代理店さん経由の仕事に取り組んだことがありましたが、いきなりハードワークになってしまって。改めて「下請けでの仕事に関しては、うちは下手すぎる」と思いましたね。

かつての私がそうだったように、制作会社って「マネジメントとか交渉とかグダグダ言ってないで気合と根性で良いもの作れ」みたいな価値観が強かった部分もあったと思うんですが、もうそういうのは時代に合ってないなって思っています。既存の働き方にベイジを当てはめる気もないし、過去自分がやってきた働き方を今の子たちに無理強いしたいともまったく思いません。

今は当時の私たちより手に入る情報も多いですし、働く時間が少なくても素晴らしいアウトプットを出してくれる優秀な若者が沢山います。あの頃とは違う方法で、優秀な彼ら彼女らのフォローをすべきだと感じています。優秀な若者が活躍できる組織を作るためには、仕事の取り方、会社の仕組み、そして自分の価値観や考え方を変えていかないと、ってある時から自然に思うようになりました。

アナグラム

わー、分かります…!そのためにも、下請けからの脱却に向けてかなり集客を工夫されてきたんだと思います。コーポレートサイトを作られてから、具体的にどんな取り組みをされてきましたか?

iitaka

やっぱり、担当者さんが「ベイジを前から気に入ってたんです」と言ってくれて直でやれた方がうまく行く可能性が高いと考えていて、オウンドメディアとSNSを使った情報発信にはかなり力を入れてきました。事前に私たちの考え方や価値観を知ってからお声がけいただいた方が、結果コミュニケーションミスや思い違いが起こりづらい。

コーポレートサイトのお問い合わせに関していうと、最初の接点の10~20%はブログですね。それと私のTwitterやFacebookで存在を知ってもらってるのがおそらく30%。それと単純なクチコミや紹介が30%。これらはアクセス解析上では指名検索からの流入になっていると思います。残りがいわゆるSEOというか、一般検索での流入でしょうか。割合を大雑把にお伝えするとこんな感じです。

アナグラム

枌谷さんのTwitterはもちろん、ベイジさんのブログはコンテンツが充実していますよね!ベイジの社長ブログはよくTwitterでリツイートされているのをお見かけしますし、スタッフの方が書くベイジの日報も面白いなと思っていて、実務寄りのお話からスプラトゥーンのコラムまで多岐に渡るジャンルについて日々楽しく読ませてもらっています。

iitaka

日報はとても大事にしているベイジの文化とも言えます。ベイジのメンバーひとりひとりがもっと発信力を持つことで、組織にいい影響を与えると考えています。私は組織論やマーケティングの話題を提供することが多いですが、現場のスタッフだと、デザインやクライアントワークの話題が必然的に多くなる。

制作会社を探している意思決定者の方には、どの切り口のコンテンツが刺さるかは読めないので、書く人を増やし、テーマを増やすことは接点を増やすことに繋がるな、と思って意識しています。ただ日報サイトは、実は集客に関する期待はしてなくて、どちらかというと採用、あとは社員教育やナレッジ共有、文化作りのための活動という性質が強いですけどね。

アナグラム

アナグラムでも社員全員が更新するブログを運営していて、まさに近しい考え方です。インプットしたことをアウトプットする習慣があることで個人にも良い影響が及びますし、広告媒体のアップデート情報からコラム、アナグラムの評価制度まで幅広く発信することはメリットしかないです。組織づくりについてお話したことが無いのに、驚くほど似てますねぇ!

Twitterを通じてお問い合わせが増加。BtoBにおける活用法とTwitterのメリット

アナグラム

枌谷さんといえば、Twitterで25,000フォロワー超え、組織論からデザインまで幅広いジャンルの発信をされていますね。Twitterを本格的に着手された切っ掛けはベイジの集客を狙ってでしょうか?

iitaka

いえいえ、切っ掛けは「あ、なんか楽しそう」です。Twitterで読んだ本をアウトプットしていた社員がいて、面白そうだし、自分も続けられそうだからやろうと思っただけです。始めは戦略的ではありませんでした。そうやって試しに初めて、うまく行きだしてからビジネスに組み込んで戦略化していくのが私のいつものやり方です。

アナグラム

Twitterで枌谷さんが発信することで枌谷さんやベイジが指名検索されて、結果コーポレートサイトへの流入数が増えたと推察しますが、副次的に指名検索を狙っていましたか?

iitaka

実はですね、うちはずっとSEOに強い制作会社だと思ってたんですよ。Google アナリティクスを見てても、CVの経路として自然検索が圧倒的でしたし。

立ち上げ当初の話をしますと、フリーランスを経て起業してしばらくは大手の制作会社さんからお仕事をいただいたりしていましたが、先ほどもお話ししたように、本当はクライアントと直取引したかったんです。でも大手の制作会社さんの下にいる限り、直取引の仕事が増える可能性は低いじゃないですか。この商流を変えるにはSEOだなと思って、テキストを重視したコーポレートサイトを作りました。

iitaka

ご存知の通り、当時はお金を出して外部リンクを購入するようなブラックハットSEOがまだ主流だったのと、うちは台所事情もあってブラックハットSEOはしていませんでした。

当然最初は鳴かず飛ばずだったのですが、2012年にペンギンアップデートと呼ばれる、ブラックハットSEOを締め出すためのアルゴリズム変更が実施されるようになってから、「ウェブ制作会社」などのいくつかの主要ワードで検索すると上位表示されるようになりました。そこから直接企業からお問い合わせをいただく機会が増えて、今に至ります。…Googleのおかげですね!

アナグラム

当時はブラックハットSEOが蔓延していましたよね。アルゴリズム変更した直後から上位表示されていたということは、Googleが推奨するSEOにしっかり取り組まれていた証拠ですね。その頃からユーザーに誠実なコンテンツを用意したい思想が強かったのだと伺えて嬉しいです^^ 立ち上げ当初のコーポレートサイトにはどのようなコンテンツを設けていましたか?

iitaka

今のサイトと比較して量は1/3もありませんが、例えばネットショップのサイト構築プロセスを書いてたりしました。いわゆるノウハウ集ですね。

ブログの記事数もそこまで多くありませんでしたが、当時のweb制作業界として、ポートフォリオ中心で、SEOは考慮していない自社サイトを用意している制作会社が多かったこともあり、相対的に私たちの会社が検索結果で上位表示される機会が多かったのだと思います。

ただ、昨年からお問い合わせフォームに「ベイジを知った理由」の項目を入れるようにしたところ、「検索で知った」ではなく「Twitterで知った」と回答される機会が増えてきたんですよね。「純粋に自然検索で偶発的に発見するのではなく、SNSで認知してから検索する流れに変わってきてるな」と気付きました。

アナグラム

Twitter上のどの発信から検索が生まれたのかまでは、Google アナリティクスでは追えないですからね。

Twitterでの発信を強化されたことで他に変わったことはありましたか?

iitaka

イベント登壇や取材などの依頼を受ける機会が格段に増えましたね。Twitterがハブとなり、新しい方々と知り合えるようになったことは、私個人としても会社としても嬉しい変化ですね。

アナグラム

おお…素晴らしいですね!

iitaka

Twitterのメリットを享受する身として、最近ベイジでは「Twitter道場」なるプロジェクトを始めたんですよ。

アナグラム

こちらですね。

アナグラム

社内限定の取り組みでしょうか?枌谷さんの見解が気になります。

iitaka

今のところ社内だけですね。私はTwitterに代表されるSNSは、ここ日本でもBtoBビジネスで大いに活かせるという仮説をずっと持っていました。そしてビジネスインフルエンサーを意図的に作ることができれば、マーケティング的にも組織的にも面白い変化が起こるのではないかと思って始めました。

アナグラム

少し前に、枌谷さんはBtoBとSNSの可能性を示唆するnoteを執筆されていましたね。読みました!Twitter道場もこの一環だったんですね。

iitaka

そうです。それと、Twitterを利用することは「気付く力」を磨く訓練だとも思うんですよ。だからもし、フォロワー数を増やすということに失敗したとしても、やって損はないと思ったんです。

Twitter道場にはその他に裏の目的もあります。例えば私は今25,000人近くのフォロワーがいるに関わらず、ツイートがバスる法則性を完全には分かっていないんですよね。バズってもそれは自分だからなのか、再現性があるパターンがそこに含まれているのかよく分からない。それを探求したい気持ちもあって、メンバーを巻き込みました。バズる人を人為的に生み出すという野望を叶えたいんです(笑)

その法則の発見はまだまだ遠いですが、比較的バズった私のツイートの解説や意図を道場の中で公開したり、フォロワー構成を見て1週間に2回くらい100いいね!もらえるようなツイートを目指しましょうとアドバイスしたり、話題になった特定のツイートをピックアップして良し悪しを議論したり、といった活動をしています。ビジネスパーソンとしても成長してほしいから、Twitterから離れて働き方の話をする時もありますね。

ベイジが目指す、組織としてのあり方

iitaka

私は会社の成長にあまり固執してないというか、例えば自分たちが向いてない仕事もガツガツ取りに行かないといけなくなるくらいなら、組織の成長を止めた方が良い、とすら考えています。

アナグラム

いちデザイナーというポジションからの目線だとおっしゃる通りで、一方、経営者としては組織の成長を止めることは怖くないですか?

iitaka

もちろんできれば成長したいですが、売上を無理に追い求めて人を増やすこと・仕事を増やすことの方がむしろ怖かったりします。

例えば、人を増やさないとと焦って会社に合わない人まで受け入れてしまうと、アウトプットの質やチーム力が下がり人が辞めて会社の力が弱まる、ということにもなりかねません。

たとえ今見た目上の売上が踊り場に見えても、売上や成長には固執せず、自分たちが信じる方法で結果を出していれば自然と売上も成長もついてくるものだと思い経営してきました。成長を止めるというのは極論で、ガリガリと強引に成長させるのではなく自然に無理なく成長させたい、という方が近いかもしれませんね。

アナグラム

わかります。ちなみに社員の皆さんには売上の目標値を伝えていないのでしょうか?

iitaka

聞かれれば答えますが、特に伝えていません。特にデザイナーやエンジニアにはアウトプットに意識を集中してほしいので売上のような経営指標と日々の仕事を結びつけることは意図的に避けています。彼らは営業のように自分の力で仕事を獲得できる職種じゃないし、「目標売上に到達してないからがんばってくれ」と言われても困りますよね。正直自分がデザイナーだった時も会社の売上とかあまり興味がなかったですし。

そういえば、アナグラムさんと近しいといえば評価制度の設計も似ているなと思いました。

ベイジでは「チームとしての役職」「エキスパートとしての役職」の2軸でロードマップを設けて、この職位を目指すにはこの位のスキルセットを持っていて欲しい、この社員は今どのポジションだろう?と数名で話し合います。

評価については創業以来手探りで、失敗もしていますが、思いとして評価面談をダメ出し会にしたくないというのはあって。「去年と比べてここが良くなっている」「あなたはこうしたらさらに評価が上がるかも」というやる気に繋げるための認識合わせが目的です。評価も一人ではなく数名の意見を集約します。個人対個人の構図にして変な軋轢を生まない設計にしています。

アナグラム

わー、似てます似てます。うちは自分の職位より上のレイヤーの社員全員で議論した結果を半期に一回フィードバックしています。ただ、社員によって課題点が1~2つの子もいれば、3つ超えの子も出てくると思うのですが、そこは余すこと無く伝えますか?

参考:アナグラムの一風変わった評価制度のすべて

iitaka

そのあたりの仕組みは今年作り替えたのですが、フィードバックする課題点は重要度を加味して最大3つまでに絞っていますね。「あなたの課題点は10個あります!」と言われても、「どうしたらええねん!」と困惑しちゃいますし。

アナグラム

間違いないですね!枌谷さんが組織として質やチーム力、そして何より「人」を大切にされていることがひしひしと伝わってきます。人にフォーカスしますと、ベイジさんでは枌谷さんが掲げられていた4タイプのデザイナー像がバランスよく在籍されているのでしょうか?

参考:デザイナーと働くなら知っておきたい4タイプのデザイナー像

iitaka

そうですね、この中だと共同作業型(感覚的✕保守的)が多いかもしれません。特に最近のうちはチームワークを重視する文化なので、メンバーはあまりエゴイスティックじゃない。ただ、それがよくないと感じる場面もあります。デザイナーって、「自分はこうだ」と美学を貫いていくことも時には必要なんですが、最近は軟着陸を目指して丸く収まる方を選ぶ傾向があるかもです。

チームワークの面では共同作業型の人たちはとても良い一方で、ブランドや哲学、ポリシーを固めていくシチュエーションでは、理想実現型の性質だって必要だと感じます。そんなこともあり、いま『ベイジのデザイン哲学』というスライドを作ってて、デザインの価値観や思考法、デザインの歴史など、会社としてこういう考え方を推奨していきたいんだ、というのを私主導でまとめています。会社の中では、私が一番理想実現型の性質が強いからですね…^^

アナグラム

今後来て欲しい理想のデザイナー像はありますか?

iitaka

私としてはデザイナーに限らず、マーケティング思考の人は一緒に働きたいですね。先ほどの4タイプのデザイナー像だと成果追求型がここに該当するんですが、制作会社って目の前の成果を追ってゴリゴリ事業をグロースさせていくぞ!みたいな仕事は少なくて、もっと中長期的な目標にコミットしていくことが多いから、分かりやすく成果をあげたい!って考えの方からの応募は少ないですね。

理想の制作会社を目指し、アンチテーゼでありたい

アナグラム

業界構造上、お客さまと中長期的なお付き合いになりづらいのが制作会社の印象ですが、ベイジさんもその点は同じですか?

iitaka

運用をあまりやってないのでどちらかといえばそうですね。ただ、中長期的に付き合う=良い会社、というのも違う気がして、いろんな形があっていいかなと思っています。お客さま側で保守・運用する体制があるなら、ベイジは箱を用意し、自走できるようにお手伝いはするが基本的にはお客さまが主体となる、という関わり方も全然ありですよね。

ただ、そういう関わり方だと、納品すれば自分たちはOK、となりがちだと思うので、自分がその会社の経営者だったらどういうホームページが欲しいだろう?って視点は常に持ち、お客さまのビジネスにとって価値がある提案を一つでもする、という意識は忘れないようにしています。

例えば経営者だったら、見た目は良いけどキャッチコピーは抽象的でお洒落だけど伝えたいメッセージが情報の受け手に届かないのは望まないですよね。私たちはWeb制作会社なので、必然的に提案できる範囲が限られるのですが、だからといって自分の役割を矮小化するのではなく、web制作という切り口を通じてお客さまのビジネス全体で良い影響を与える本質的なモノづくりをしていきたいのです。

アナグラム

昔の話をすると、手段としてとりあえずホームページ新しくしたらなんとかなると思っている企業も多かった。成果が伴ってこそ、この思考はまさにマーケティング的な思考回路ですね。

iitaka

今は大分変わってきてますが、昔はデータの見方がよく分かっていない制作会社も多かったですよね。サイトリニューアルの成果をとりあえずPVで評価していたりとか。いやいや、PVは事業の成果と相関しないから、みたいな。

アナグラム

お手伝いして成果が上がる自信がある・ないでお仕事をお断りする機会もありそうですが、成果視点がないと、とりあえず全て案件を受けて結果現場が疲弊してしまいそう…。

iitaka

私も業界全てが見えているわけでもないですが、自分たちの向き・不向きを考えて案件を選ぶって発想が薄い会社もまだ多いかもしれません。特に売上ノルマを現場が強く課せられていたりする制作会社だと。

あと、仕事を請ける・請けないを考える際に、会社の組織全体を考えて受注判断できる人というのは、経営者でもない限りなかなかいないですよね。

例えば、運用案件は安定したキャッシュが入るから経営的にはありがたいんです。でも、デザイナーは単調な仕事を強いられがちで、結果的に優秀なデザイナーのモチベーションが下がって離職し、組織としてのアウトプットの質が下がり、競争力がなくなり、新規案件を取りにくくなり、保守の契約が完了した頃に経営的にはピンチになる、ということが起こるかもしれない。いや実際起こりがちだと思います。

短期的な「安定」を求めた結果、長い時間をかけて悪い方向に向かう。そういう事態は避けたいですよね。学びになるもの・会社を支えるもの、その全体が見れるのはうちでは今は私だけなので、そのバランスを常に意識しています。

アナグラム

素晴らしい。今後デザイナーが活躍し続ける上で、どんな組織でありたいですか?

iitaka

トレンドかどうか、カッコいいかどうかの議論は本質的ではなくて、ビジネスの枠組みの中で本当に求められることにどう応えられるか。ただそこに目を向けて、たとえ派手さはなくても、実直に取り組んでいく会社。そしてそんな会社の中での仕事を通じて、生き方を学べる会社でありたいですね。

Web制作会社って不思議と「Web制作会社」って名乗らない会社が多いんです。それは端的に言えば言葉のイメージがあまり良くないからだと思うのですが、ベイジが「Web制作会社」と名乗り続けているのはその方が市場の皆さんにとって分かりやすいからです。

古いとかダサいとかは業界側の感性であって、あくまでweb制作を求めている企業にとって一番分かりやすい方法や表現を選択する。それが「例え派手さはなくても実直に取り組む」の一例だと思います。Web制作会社というカテゴリにいながらも、ベイジは凄いよね、あそこは違うよね、って言われたいし、そう評価していただけるような組織を、これからも目指していくつもりです。

アナグラム編集後記

28歳未経験でデザイナーの道へ。その覚悟は、年収が半分近く激減しても、楽しさから寝食を忘れがむしゃらで働いたという日々からも伺い知れます。今はデザイナーとして、経営者として、与えられたルールの中で最適解をどう見出すか模索しているとのこと。

自社プロダクトの構想も練っているとのことで、BtoBの企業を支援して得た知見がどう活かされていくのかが楽しみでなりません。

枌谷さんは話題の引き出しがとにかく多く、Twitter道場の取り組みもさることながら物事を自分ごと化し言語化していく力が素晴らしいなと改めて感銘の意を抱き、とても面白い取材でした。

マーケティング、デザイン、組織論、採用、BtoB……と幅広い分野で示唆深いお話を提供くださる枌谷さんのTwitterやブログは、すべてのビジネスマン必見です!

文:高梨和歌子
編集:阿部圭司/齋藤彩可
写真:齋藤彩可