前提を疑え。|金沢でネットショップ運営のサポートとアマチュア無線機の中古販売通販を営む北村錬充さん

  • 甲信越・北陸

仕事をする上で、固定概念に縛られていませんか?今回お話を伺ったのは、ニッチな業界のネットショップを手がけつつ、石川県金沢市からネットショップ運営のコンサルティングも行う北村さんです。クライアントやユーザーに真摯に向き合うコンサルタントとして、どのような点を心がけてきたのでしょうか。

北村 錬充(れんみつ)さん

ネットオークションの黎明期に「インターネットは出品したものに対して需要があれば売れる」ことを体験し、インターネットでものを売ることにのめり込む。その後、生まれ育った金沢で株式会社LATERALを創業。

自らネットショップを運営してきた経験を活かし、ネットショップ運営のコンサルティングとアマチュア無線の中古販売通販を行っている。

アナグラム

北村さんは事業を2軸で展開されていますね。それぞれの働き方を教えてください。

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ぼくが重きをおいているのはネットショップ運営のコンサルティングで、ネットショップを運営している方々の悩みを聞いてサポートしています。もうひとつはアマチュア無線機の中古販売通販

会社自体はぼくを入れて10人で、そのうち半分の通販部隊は家族なんですよ。義父が主体となり、義母・ぼくの奥さん・奥さんの姉2人にアマチュア無線機などの中古販売通販をお任せしています。

アナグラム

アマチュア無線の中古となるとかなり専門的な知識が問われそうですね…。お義父さんが詳しかったり?

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義父はアマチュア無線の店舗で店長を25年やっていて、その界隈では有名な人でした。その店舗に勤めている時からネット上で中古販売も取り組んでいて。ぼくはその頃すでにネットショップ運営のコンサルティングを生業にしていたので、(こうしたらもっと良くなるんじゃないかな…)と密かに思ってました。

事業を2軸で展開することになった切っ掛けは、義父との利害の一致が大きいかな。コンサルティングって「もういらない」と言われてしまうと、そこから収入がゼロになるリスクを内包している。もともとぼくは、ネットショップ運営上がりで、ものを売ってビジネスをしていたからビジネスをやる上で日々の売上が立つ大切さは若い頃の経験から痛感していました。

一方、義父は60歳に差し掛かり、必ずしも定年後の雇用が約束されていない中でこの先どうしようと悩んでいて、それならネットショップの運営をするための土台をぼくが揃えるから、その土俵に乗って運営をするのはどう?と話を持ちかけて、とんとんとん…と。

当然、最初はリスクが大きかったけど、有難いことに結果2ヶ月くらいで成果が出てそこからはおかげさまで…。堅調にといったところです。

アナグラム

雇われとは言え、60歳手前にしてインターネットでものを売っていたのって結構スゴイことですよね。ちなみに、中古無線機というニッチな商材で、義理のお父さんは前職と商材がまるっとかぶっていて、しかも金沢で。正直、そのあたり、大丈夫だったんですか…?

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義父が働いていた会社の社長さんとはもともと面識がありましたし、義父が辞めるってなったときにも通販をすると話していたそうなので、娘の旦那、つまり、ぼくのところだろっていうのはバレていたと思います(笑)

こちらサイドとしても店舗を構えるつもりはなく、通販で展開すると決めていたし、0の状態からどうやって立ち上げて集客するかが課題になりましたね。

ただ、この業界すごく面白くて。市場が狭いし、趣味を共有出来るという点で、人にお客さんが付くんですよ。義父は、前職でいい仕事をしていたので、予想以上にお客さんがついてきてくれました。

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アナグラム

結果、抱えていた収益性のリスクを通販がカバーしてくれて、お義父さんはじめご家族の雇用も守られていると。2軸がうまく機能していますね。コンサルティングに至るまではどんなお仕事をやられていたんですか?

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金沢という拠点はずっと変わりませんが、色々やりましたねえ。

最初は、教材の訪問販売をしていました。当時は若かったし、売ることがなにかも理解してなかったから、全然売れずにもれなく挫折。次は、人の紹介で地元の眼鏡屋に転職して、コンタクトレンズの代理店も兼ねていたので、今度はお医者さんへの売り込み。前任者の引継ぎも無く回らされたので、「先生こんにちは!」「おまえ誰や」「ですよね!」と。何とかお手伝いさせてください~と入り込んで患者さんに対してコンタクトレンズを説明して、選んでいただく仕事を3年半ほどやってましたけど、経営者と折り合いつかずに一度離れました。

そこから2年くらいかな、ルート営業をやりましたが、ずいぶん景気が悪くなり退職。また眼鏡屋に出戻りしました。

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訪問販売→お医者さんまわり→ルート販売とどんどん売りやすくなっていますね。

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そうなんですよ。出戻った眼鏡屋がクリニックを作ったのでそこでコンタクトレンズや眼鏡を売るんですが、白衣を着て「こんにちは」って言うと訪問販売よりも売れるんですよね。なぜなら受け手の話の受け止め方が違うから。

アナグラム

インターネットでものを売る体験をしたのも、その頃になるんでしょうか。1997年前後であればヤフオクが台頭してきた頃ですかね?楽天もちょうど始まったくらい?

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まさしくヤフオクで、コンタクトレンズのメーカーさんがくれたある芸能人のノベルティを個人的に出品したことでしょうか。非売品だったのでそもそも問題有りでしたが(笑)当時のコンタクトメーカーって売り出そうとしている若手の芸能人やアイドルの登用も多かったんです。今から約20年前、ノベルティの小さな差し替え式カレンダーがいくらで売れたと思います?

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アナグラム

んー…。1,000円くらいですか?

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それがね、6,000円!そこで、インターネットってものが売れるんだ!と体験した。リアルだと売る立場によって売りやすさが変わってしまうのに、インターネットでは出品したものに対して需要があれば売れてしまう事実が本当に衝撃的でした。

これは面白い、とお店にあるコンタクトのお手入れ用品や、眼鏡屋で取り扱っているサングラスなどをヤフオクや、今はなきeHammer(無料オークションサイト)やDeNAのbiddersなどで売り出したのがはじまりです。当時楽天市場も選択肢としてはあったのですが、会社から月額費用をどうしても捻出してもらえなくて参入出来ませんでした。ホームページは無料のものを使ってオークションサイトへ誘導したり。

「お金は無いけどものがある。その状態でどうものを売るか?」この経験が、自分の根幹にもなっているかなぁ。

目指すコンサルティング像は「かかりつけのお医者さん」

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当時は資金がなくても何とかなりましたよね。本買ってきて、ホームページビルダーを駆使して…。ここからインターネットでものを売ることにのめり込んだのかなと思うんですが、コンサルティングに至った流れをお聞きしたいです。

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当然、ものを売ってるだけじゃコンサルティングは出来なくて。

当時楽天市場などのネットショップモールでは各店の店長同士が共同でイベントを行うことがよくありました(共催といわれていました)。それにならって、biddersにでている出品者が集まって同じようにグループを作ってみようという流れがあり、たまたまお誘いを受けて参加したんです。そのグループの展開として、最初集まった6店舗の取扱商品を紹介するメールマガジンを始めたんですね。当時はメルマガ機能がbiddersになかったので、まぐまぐで。で、なぜかぼくが、3年間6店舗の商品のセールスメールを作ってました(笑)。

ぼくの原点は実はここで、よく知らないけど商品情報を見て、これは何の商品でどんな売れ方をするのか店長に聞いて、テキスト書いて、メルマガを出し続けることで、人の商材を俯瞰的に見て、インターネットでどう売れるかなと予測するスキルが練習できたのかなと思います。

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メルマガを受け取る側からすると、毎回違うジャンルの商品のセールスメールが届くと。

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今日はこのお店のこの商品の紹介です!と触れ込みで。当時はそういったツールがなかったので、ぼちぼち売れました。こういう取り組みをしている団体も少なかったので、bidders側にも興味を示して認知してもらい、最終的にはそれぞれのお店の事情もあり、おのおの卒業して無くなってしまったのですが楽しかったですねえ。昼は仕事で自分の商材を売って、夜は趣味で人の商材を売る。

その後、ネットショップが増えてオークションも絶好調だった2002年頃に眼鏡屋を退職し、ぼくが当時行っていたネットショップ運営に関心をもって無店舗販売をスタートしていた前職の社長のところに合流してオークション販売や、楽天での販売を行うようになりました。

オールジャンルの商材をひたすら仕入れて、市場の相場を見ながら値頃感のあるプライシングをして、写真は全てオリジナルで撮り直し、即日発送する形で、毎日受注から出荷、顧客メール対応まで全てを行っていました。売れたそばから次の仕入を起こしていくので、最初は小屋みたいなところでやっていたのが、気付けば郊外の倉庫を借りるほどまでになりました。

2005年頃から、まわりの仲間からは、ぼくのことは「ネットでなにか沢山売っている仕事をしている人」という認識になっていたようでノウハウを教えてほしいって人が現れてきて。

簡単な売り方のコツを教えてあげると、売上が伸びた!と喜んでもらえるので、教えるのも仕事の一つの選択肢だなあと思うようになったタイミングでコンサルティングしてみては?とオファーをもらい、会社を辞めて独立しました。早いものでもう11年目になりますね。その案件はわりとはやく頓挫して、あれ?やばい?みたいな事件もありましたが(笑)結果的に地元の行政支援機関のつながりもでき、セミナーをさせてもらったり、専門家派遣などで、地元の企業さんの支援を出来るようになりました。

義父が来て、事業を2軸に構えるまでの3年間は1人でコンサルティングをしてました。この期間でクライアントのご紹介や代理店とのやり取りなんかの土台ができて、通販も事業展開するようになり、ある程度売上がついて融資の面でも余裕が出てきたので、人も増やしてと。収益性の面でも助かりましたが、コンサルティングだけじゃなくて自社で通販やってますよって言葉が地元のお客さんには一番響くので2軸にして良かったなと感じています。

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アナグラム

自社で通販をやっているとなると説得力が違いますよね。言っていることは分かるんだけど、でも、やってないんでしょう?と、反コンサル思想で構えてしまう人もいますし。

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そうそう!

コンサルティングを始める上で一番怖かったのは、伝えているノウハウがただの机上の空論になってしまうんじゃないかということ。ぼくがやりたいコンサルティングは、「何かすごいメソッドがあります!」「こんなにスゴイです!」ではなくて、状況が分かるから悩みに対して寄り添うスタンス。そうじゃないとリアリティーがないですよね。

営業時代に実体験をした「お客さんはどういう立場だと話を聞いてくれるかな?」という思考はここにリンクしてきてますね。社内のメンバーにも「言い分は分かる。でも、お客さんがどんなところを不安に思っていて、どんなことを考えているのかまで汲み取った上で話しをしないと正しく伝わらないよ」と指導しています。

例えば、担当者さんとお話するときも実はバックで社長が圧を掛けてきて悶々としてるんじゃないかな?と予測して「大変ですね」と声をかけると一気にほぐれる。そんな関係が現場で構築できないと、中長期的にお仕事をお付き合いしていくのって難しいんじゃないかなと思うんです。

アナグラム

おっしゃる通り、社長といち担当者では視座が全然違うわけで、それぞれの立場にもとづく行動や思考を受け取り手が理解して話しをしてあげないと正しく伝わらないですよね。

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ぼくは、かかりつけのお医者さんでありたいんです。外科医じゃないから手術は出来ないし、CTスキャンを撮るなら撮れる人を連れてこないといけない。でも、それでいいと思っています。窓口にさえなれれば、お客さんが困っているところの話を聞いてあげられるから。お客さんが思いつかないようなアイデアの種を撒いてあげたことで、新しいマーケットを築けたり、幅が広げられるのは幸せなことで、役立ててもらえればいいなあと。

この考え方がマーケターというポジションに行き着くかは分からないんだけど、コンサルタントとしての自分のポジションはここです。

アナグラム

ネットショップ運営だけではなくて、色々な仕事を渡り歩いてきた経験があるからこそ北村さんの中の受け皿が広がっているんですね。お客さんに対してはどこまでもフラットに、俯瞰的に、相談に乗ってあげると。

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お客さんが考えていない視点をどうやって提供するかを意識します。まずは、「前提」という固定概念を疑ってかかりますね。お客さんが職人気質であればあるほど固定概念を崩しにかかると喧嘩になりますが、そうあるべきだって思い込む前に、まっさらな状態で考えてみるべきだし、そういう視点を投げかけてあげられるのがコンサルティングの良さでもあると思います。

具体的な社名は控えますが、商品を買ってくれたお客さんに無料であげていたとあるものを売ってみませんか?と提案したときは大変でした。そんなものを売るなんて!と大反発。でもね、試しにオークションで出してみましょうって出品したら、2,000円くらい値が付いたんですよ。現場からしたら「無料であげるもの」に値段がついたことにびっくり。納得していただき、そこから正式に商品として販売するようになり、一定規模の売上をあげるようになりました。

アナグラム

私たちもコンサルティングの本当の価値は、フラットな外部の目線で見て真実を意見することと、消費者に伝わる言葉に翻訳し、しっかりと伝えてあげることだと考えています。おっしゃる通りですね。

ネットショップなのにカートがない!鉄則は「前提を疑え」

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みなさん、アマチュア無線の免許、持ってますか?

アナグラム

(一同首を振る)

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ですよね。ネットショップ系のセミナーで登壇するときは毎回聞くんだけど50人に1人いればいいくらい。そのくらいの狭い市場なんです。

この免許を取って開局申請すると、コールサインという「J*****」みたいな固定の名前が割り当てられるんですよ。同じコールサインは存在しません。アマチュア無線って、ぼくらがネットでやっているコミュニケーションの走りだなあと思います。アマチュア無線を趣味とする人の多くが固有のコールサインをメールアドレスやハンドルネームに使っていたりするんですよね。

アナグラム

アマチュア無線機のやり取りって何をするんですか…?

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電波を発信して受信できた人と話すのが基本です^^ でも、非常に奥深い世界。1970~80年台に一番流行って、趣味の王様とまで呼ばれてました。家に大きなアンテナを上げたりして、遠くまで電波を発信したらどこまで届くかとか、当時携帯電話も普及してませんでしたので、通信手段としても大ブームになったわけです。通信の際に必要なのが自分の名前の代わりのコールサインになりますので、非常に大切なものなのです。面識のない人ともコミュニケーションがとれて、仲良くなったら、交流が始まる。場合によっては海外にもつながる。無線通信=インターネット、発信する=掲示板など、コールサイン=ハンドルネームっておもうとイメージしやすいかもしれないですね。

うちの会社に義父が来た時、0からどう集客するかが課題だったと言いましたが、「あのコールサインの人が店を開けたよ!」って情報が拡散して、人がどどどっと来てくれました。

他には、Twitter住民という層がいるのは分かっていたので、なんとか呼び込んで初動を作ろうとハンドルネームでコールサインの頭文字を検索してみたら、その数の多いこと。片っ端からフォローして、新しくネットショップやります!っという感じで集客しました。オープン後に素性を明かして、さらに盛り上がると。

アナグラム

疑問なんですが、アマチュア無線機って一度買ったら終わりじゃなくてPCやスマートフォンと同じように買い続けるんですかね?

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はい。色んなニーズのある方がいるんですよ。

最新機種が欲しい人もいれば、コレクションしたい人、純粋に電波を出したい人、古い機械が好きな人、自分で直したい人、などなどさまざまな需要がある。中古車やバイクに近いかもしれないですね。手段としては、話す・つながる・聴くだけのシンプルなものなんですけど、そうじゃない楽しみをみんな持ってます。あのメーカーが好き・この機械はレアだから使わないけど持っていたいとか…。あとね、これも面白いんですが、モールスなどでも使う略符号っていうのがあります。HI=笑い声、とか、GB=さようなら、とか、アマチュア無線家さんからのメールでは略符号入りのものもとどきます。とにかく短縮した単語で表現するという文化の先駆けなんじゃないかなあと思います。

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アナグラム

完全に…インターネットですね。

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そうでしょう。それをアナログでやってたという人たちが、インターネットに入ってきて、現在はインターネットで通信しつつもアマチュア無線やってるもんだから親和性がスゴイ高い。アマチュア無線好きでTwitter住民の人は結構多いですよ。Facebookは媒体の特性というか、長いきちんとした文章を書くというハードルがややあるけれど、Twitterは限られた単語で表現するから馴染み深い。

アナグラム

ユーザー層もだいぶ独特そうですね。50~80歳あたりの団塊と呼ばれる世代が多そう。

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はい。ちょうどリタイアして退職金が入ってきて、当時やりたかったものが中古でまだ買える!と復活する人も多いですね。ターゲットや商材的に独特なので、他店のネットショップ運営のコンサルティングをするときには、無線の売り方のノウハウはあまり参考になりづらいです。

アナグラム

まさにニッチですね!中古に特化しているとのことで、ある程度は買取で仕入れるとして、一定量は業者から卸していますか?

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いえ、全部お客さまが売ってくれます。それを義父がメンテナンスして、販売して、別の人に買ってもらい、また売ってもらう、のサイクルがうまく回っている。本当おもしろいです。

アナグラム

すごい。これだけ独特な中、中古無線機通販としては後発なんじゃないかなと思うのですが、今日に至るまで堅調に運営が続いている秘訣とかあるんでしょうか。

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まず、売れなくても5年辞めないって約束しました。義父は業界内では名の知れた人でしたが、「あのコールサインの人がお店を開いた」ってブランドの賞味期限は3年だと思っていて。5年続くと、「あのコールサインの人」じゃなくて屋号が業界に認知されていきます。おかげさまで8年は経ったので、お客さんの選択肢の一つにはなれているんじゃないかなと思います。

あと、家族経営ならではの良さもあるし難しさもあるけど、意外と当たってる後付けの理由がありますね。まず、Google アナリティクスで見たうちのお客さんって、新規率が19%くらいで非常に少ない。ほぼリピーターなんです。1日6回くらい、TOPに書いてある入荷状況を覗きに来てる。TwitterやFacebookにも入荷情報は流してるけど、もー毎日見るからって人も多くてダイレクトの流入も超高い。さらにほぼ男性。

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そんなユーザーの多くは電話をかけてくるんですが、うちに電話すると、うちの奥さんが電話に出るんですよ。で、雑談するんです、女性が。実は一番ハマってるのこれじゃないか…?と思っています。他のアマチュア無線のお店は電話したらだいたい男性が出ますからね。

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面白い。でも、ありえないとは言い切れないですよね。ちなみにサイトを回遊してもカートが見つからないんですが、これにも秘密が…?

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ターゲットに合わせた作り込みをしていて、一応ネットショップなんですけど、カートは設置していません。申込方法は全部で4種類で、電話・FAX・フォーム・メール。メーラーが立ち上がったときに使える、コピーして入力するだけの雛形を置いています。

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中古で全部1点ものなので早い者勝ちなんですよね。タイピングに慣れていない人も多い世代なので、メールなんぞ打ってられないと電話してくる人も多い。元々すぐ通信して繋がりたい人たちなので、連絡も簡素。メールだとしても、コールサインと商品番号しか送ってこない猛者の常連様もいます。

カートを設置しないもうひとつの理由は、メインユーザーの60代以上の人は感覚的にショッピングカートがめんどくさく感じている方が多いような傾向があります。常連さんからするといちいちボタン押すのも億劫だし、簡単に買い物したい。それを加味するとカートにしたら離脱者が増えると思うんです。これが欲しい、ポチ、決済方法、ポチ、じゃなくて、欲しいって手を挙げたら購入完了。そうした方が彼らにとっては正解なんだなって最初のサイト設計時に決めていました。

その分、電話は鳴るんですけど、回線一つなので、やっぱり早い者勝ち。このご時世にカートが無い。何となくそんなお店があってもいいでしょ(笑)

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TOPで毎日30~40個新商品を出し、即完売する商品も多い。

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ユーザー視点で考えると、在庫があるかどうか、わかりやすいかどうかが見られれば十分ですもんね。商品がくるくる動くなんてもってのほか。ユーザーに寄り添えてさえいれば、サイトはかっこよく作る必要ないと。

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程よく揃える、というのがポイントですね。なので、商材によってはこういうのも手の一つですよと提案することはあります。必要以上に接客はしなくて、彼らとの共通言語を入れてあげればいい。うちのお店の場合はメーカー・型番・価格・状態の4つ。

カートを経由してくれた方がGoogle アナリティクスで読み取れるけど、読み取れないお客さんの頭の部分まで考えると、売れれば問題ないわけです。通販はネットショップでならなければならない、カートで勝負しなければならない、みたいな前提に、みんなこだわりすぎていますよね。

正直、なんでもいいなあと。ビジネスが良ければお客さんは来ますからね。勿論サイトを良くするのがベストだけど、本当にその人が欲しいものだったらハードル乗り越えて来るでしょう?みんながやりたがる方向とはずれるけど、こっちが本質ですよね。

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間違いないですね。いやあ、すごいなあ。北村さんの中で、コンサルティングと無線通販の時間配分はどのくらいなんでしょうか?

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無線通販はほぼノータッチです。こういうページを作って欲しいとか要望があれば作るけど、新たなものを積極的には試しに行かない。家族の目的は、現状の中古無線機のビジネスを通じて自分たちの生活を営むことなので。

アナグラム

事業によって最適なサイズ感はありますよね。成功のモデルはいっぱいあっていい。ぐーんと伸ばすのも正解の一つだし、ゆるやかに伸ばすのも正解の一つ。横ばいも実は正解の一つかもしれない。

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KPI=売上はたったひとつの正解ではなくて、例えば幸福度なんてKPIもいいんじゃないかなってぼくは思います。自分たちが幸せでいられるキャパを越えない売上が見えたら、そこに対して最大化していけばいい。そこを超えると組織が破綻しはじめるので、このサイズ感で最大化できるポイントはどこだろう?と模索しています。

ニッチな業界は市場が狭いので売上の壁はどうしても存在する。大手からすると全体の売上に対して少ないからあまり参入してこない。中小はそういうところを拾ってかないといけないしアイデアで見せ方変えないと。切り口をどう変えるのかを必死に考えないといけないですよね。

6年くらいやってるネットショップは一通り一巡してると思うので、そのままでよかったんだっけ?と考えてみなければいけない。最近では、別の業種からやってきた後発のサービスがさらっと抜いていくケースってすごい多いです。

アナグラム

なまじ儲かっているからドラスティックに変えづらくて判断が鈍るケースもありそうですね…。ニッチな業界で立ち上げて成功を続けている企業って、その次もニッチにいくことが非常に多いですよね。例えばとある企業さんは、お肉を売りながら日本古来の武術品を通販しています。とあるお肉のカテゴリーでは国内ナンバーワン。しかも飲食店からの卸してくれって問い合わせが一番多い。

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ニッチを渡り歩くのは、売上の壁がある一方で競争が少ないという美味しさを知っているからでしょう。さっきから何回か言っていますが、ぼくが好きな言葉は、前提を疑え、です。いま、例にされたお肉屋さんも、既存の精肉屋さんよりも固定概念が無いので、すぐ解凍できるものをポップとともに売る手法で、お客さんがどうしたら使いやすいか、便利かという点で商品を売っているので、うまいなあと思います。お肉を売る王道のまま後追いしたって勝てないかもしれないので、飲食店向けにパッケージ化するという、今まで誰もやったことがない、前提を壊す行為はニッチもそうだし新しいマーケットを取る時はすごく重要ですよね。

表に出てうまくいっている時点で、もうそのノウハウは使えない場合もあります。あくまでその人が成功しただけで、ノウハウだけ集めても意味ないんでね。だから、どっかで必死に変えようと努力しなくてはいけないんじゃないかなと思います。

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アナグラム編集後記

そうあるべきだと思い込む前に、前提を疑うべきだと繰り返しお話されていた北村さん。登る方向はバラバラで、価値観が違うと反発することも勿論あるけど、固定概念にとらわれてしまわず多角的に見ることが大切だと熱弁されていました。

社名(株式会社LATERAL)をエゴサーチ(!)して知ったラテラルシンキング(前提を疑って想像の幅を広げる思考法)が、前提を疑うという思想とあまりに似通って驚いたとのこと。ロジカルシンキングしかできない人ではなかなか出てこないやわらかい着想が思い浮かぶのは間違いなく強いので、ロジカルとラテラルの両軸をバランスよく持ち合わせて考える癖をつけるべきというお話しは納得の一言です。

NLP(Neuro Linguistic Programming,人間心理に関する学問)や占い師の話し方、実演販売士の売り方など多彩な観点からも学びを得ており、人に寄り添いたいという気持ちが強く伝わってきました。人によって悩みや立場は違っていて、それを理解してあげたいと究極のユーザー目線を追求する姿は、紛れもなくマーケターだと感じますし、わたしたちも運用型広告の運用者だけでなく、企業の翻訳者としてクライアントにもユーザーにも寄り添うような存在を目指していきたいと思いました。

文:高梨和歌子
編集:阿部圭司/賀来重宏
写真:賀来重宏