金沢市内で一棟貸切宿「旅音(TABI-NE)」を中心に20棟以上の宿泊施設を運営する株式会社こみんぐるの代表取締役・林佳奈さんと取締役・林俊伍さんご夫妻。俊伍さんの地元・金沢に戻って地域のためになることがしたいという想いから夫婦で起業をしたそうです。自分たちの会社を宿泊業ではなく”ともだち業”と定義し、金沢、そして北陸のために事業を展開するお二人の話をお伺いしました!
ー地元・金沢のためになることをしたくて起業
こみんぐるは金沢で古民家をリノベーションしてゲストハウスを運営していますが、お話を伺う前にいただいた名刺からすでに金沢愛を感じますね。お二人とも金沢出身なんですか?
私は愛知県出身です。夫が金沢出身。出会った頃はお互い名古屋に住んでいました。
そうだったんですね。そうすると俊伍さんは納得できるんですが、佳奈さんはどうして金沢が大好きになったんですか?
起業の前から夫に金沢にはよく連れてきてもらっていて、ご飯のおいしいお店にもたくさん連れて行ってもらうなかで胃袋を掴まれたのが最初ですね。あとは、金沢の文化もそうですが、地元の人たち自身が金沢のことを大好きなところです。私は愛知への地元愛がそこまで強くなかったんですが、それに比べて金沢の人たちは地元に愛があって素敵だなって、私も金沢が大好きになったんです。
それで金沢で創業したんですね。
はい。当時夫は名古屋で学校の先生をやっていて、ずっと「いつか金沢に戻りたい」と言っていました。金沢に帰って学校の先生を続けると言いながら教員採用試験に3年連続で落ちてしまったので「いい加減に期限を決めてください、金沢に帰るのは来年の春です。」と伝えて退路を断たせました(笑)
私は名古屋ではリクルートで転職支援の仕事をしていて、リクルートという会社も営業という職種もすごく好きだったんですけど、5年くらい働いたなかでやり切ってしまった感が出て来てはいたので、金沢に行くなら次のチャレンジをしたいってなったら私の中では起業という選択肢しかなかったんですよね。
何をしようかは考えていなかったんですが、金沢に帰る年は北陸新幹線が開通して2年目で、金沢に宿泊施設、とくに外国人の方向けの宿が全然足りないというのを聞いて、金沢のためになるならこれだ!ということでこみんぐるを創業したんです。
リクルートの社訓である「自ら機会を創り出し~」って教えを体現したんですね、すごい。
俊伍さんも、最初は学校の先生として金沢に戻る予定が、佳奈さんと一緒に起業したんですよね?
そうです。ぼくはずっと柔道・教育・金沢の3軸どれかに当てはまる仕事をしたいなと思っていて、それで金沢で学校の先生をしながら妻がつくる会社を手伝おうかなと思っていたんです。でもお世話になっていた名古屋の経営者の方に「”手伝う”なんて甘い考えじゃうまく行かない、決断しろ!」と叱られてしまって、ぼくも退路を断ちました。
最初は宿泊施設として創業しましたけど、宿はあくまで手段で、目的は「金沢のためになること」です。金沢の先輩経営者から色々と話を聞くなかで、結局箱だけあってもダメで、人がいてはじめて文化が生まれたり地元特有の雰囲気が生まれたりするんだとあらためて理解して、ぼくらも人をつなぐ商売をして地元のためになること、そこに住んでいる人たちが喜ぶことをしたいなって。だからぼくらは宿泊業ではなく”ともだち業”を名乗って仕事をしています。
実は金沢って消費地で消耗地になっちゃってるんですよ。金沢の文化と人が使われているのに、お金は入ってこない状態。金沢で一番のメイン通りがあるんですけど、そこでは宿泊業で失敗したら高齢者施設にするという想定でホテルを建てるのが流行りになってしまっているんです。県外から来ている会社だと投資が一番の目的なのでそういった想定でホテルを建てるのはある程度仕方ないとは思うんですが、それでも10年後20年後にメイン通りにお年寄りの方しかいないような街にしちゃいけないという想いが強くありますね。
なるほど。ぼくは金沢によく出張で来たりしているんですけど、北陸新幹線は常に満員ですし、人が多いなーという印象をすごく受けていたので、ホテルは儲かってて地元も潤っているものだと思っていました。ただ、実際は外資や金沢外の会社が作ったホテルばかりで地元にお金がなかなか落ちてこなくて、そうなると労働力ばかりが搾取されてしまっているということですね。
はい。だから私たちが宿泊業、ともだち業を頑張る意味はそこにもあるのかなと思うと、自分たちの地元を守れるだけのお金とかネットワークとか、影響力を持つのが重要だなとは考えてます。
すごいなあ。最初から社会(=地元)のためになることを目的に事業をはじめられたのは本当に羨ましいというか、ぼくがそこに気づけたのは最近なので嫉妬しかないですね。利益が上がったタイミングでようやく次のステージとして社会課題の解決に向かう経営者が少なくないなかで、最初から視座を高くして動けているのはすごいの一言。やっぱり社会のためになることをしないと、今の時代はとくにですが、ビジネスとして成り立たないですよね。
ぼくはすごく綺麗ごとで生きていきたいんですよ。自分が言っていること・やるべきこと・やっていることが一致しているようになりたいし、実際そう動けているからそこに応援してくれるような人が集まってくれるのかなと思います。
これは、ぼくが教員をやっていたからというのはあるかもしれません。当時、ぼくは理科の先生なのに授業で理科を教えている時間が3割くらいしかなくて、残りは自己啓発みたいなことをずーっと話してたんですよ。自分より下の世代に対してめっちゃかっこいいことを語るわけです。人生一度しかないんだからやりたいことやろうぜみたいな。それが今まさにブーメランのように自分に返ってきていて(笑) 、自分がちゃんとしていないと、当時の生徒たちに合わせる顔がないなとは思いますね。
ー最初の失敗を活かして運営を軌道に乗せた
古民家を改装してのゲストハウス運営は初期投資が結構必要かと思うのですが、その資金はどうやって集めたんですか?
決断しろと言ってくれた名古屋の経営者の先輩にお金を出していただいたのと、貯金でスタートしました。あとはクラウドファンディングで集めましたね。最初はそれで300万円くらいかな。需要があると分かったら少しずつ部屋も増やしていこうと思っていました。
なるほど。スモールスタートという感じですね。集客はどうしたんですか?
最初はBooking.comで集客しました。それで泊まってくれる方もいらっしゃったんですが、実をいうとはじめは自分たちで宿の運営をしてなくて、東京にある民泊代行のような会社に運営を頼んでしまったんです。これが大失敗で、友人の会社だったんですが、やっていくうちになんか違うなっていうのがあって。うちが運営代行を依頼したはずなのに逆に下請けのように扱われて、あの時に絶対に下請けはしないって決めましたね。結局、最後までその会社とはうまく行かず、ここでお話できないようなことも色々あって、お客さん対応はしているのに1年間収入がない状態になってしまいました。
それはツライですね…
ぼくが一番大切にしていた「友達を大切に」という価値観が、まさかいきなり崩れて失敗するとは思いませんでしたね。でも、ビジネスは友だち同士でするもんじゃないなと、実力と価値観が折り合ってはじめて成り立つものだなと良い学びになりました。それで自分たちでやらなきゃいけないっていうのを痛感して、オーナーさんから物件をあずかって宿の運営はすべてこみんぐるが行うビジネスモデルに変えたんです。それで、ちょうど運良くこのタイミングで、今もこみんぐるに物件をあずけてくれているオーナーさんにも出会って、その人が「とりあえずやってみよう」と言ってくれてお付き合いがはじまったんです。そこからその人の紹介でオーナーさんも増えていきましたね。
地主の友達は地主みたいな感じですね。
そこから少しずつ物件も増えて、人も呼べるようになって、収益が上がっていきました?
はい。金沢のために、地道でも誠実にやってきたから多くのオーナーさんを紹介いただけるようになりましたし、宿泊してくださるお客さんも増えたのかなと思います。
金沢のためになるという目的から一切ブレずにやっていて本当にすごいなあ。
金沢に来ると外国人観光客の方も多い印象ですが、宿泊客も外国人の方が多いんですか?
外国人の方は半分くらいですね。今は日本人の方が少し多いかもしれないです。創業した時は7割くらいが外国人だったんですけど、外国人ばっかりだと極端な話、富士山が噴火したら終わりじゃないですか。どこか一つに依存してるのはリスクだなと思い、意図的に日本人の方の割合も増やしてきました。
あとは、外国人の方向けのゲストハウスも増えてきて、金沢全体で外国人を受け入れやすくなったので、私たちがそこで頑張らなくても大丈夫になってきたんじゃないかとは思っています。北陸新幹線が開通したばかりの頃は金沢でも、外国人の方は言語の対応が大変なのであまり歓迎されていなくて、宿泊できないホテルも多かったんですけどね。
地元の方々も徐々に外国人を自然と受け入れるようになってきたのですね。外国人の方とゲストハウスで夕飯を作ってみんなでワイワイ食べる、みたいなイベントがあったと思うんですが、それは今も継続されてるんですか?
今もやってますよ!刺身が苦手な外国人もいるので、餃子とかを一緒に作ってますね。金沢っぽい料理っていうのも重要だなとは思うんですが、たとえばフランスのニースとリヨンの違いを気にしない日本人って多いと思うんですが、それと同じでフランス人にとっては「日本」を楽しめれば十分みたいです。「寿司はどこで食べてもおいしい!」みたいな。それに対して、外国に行ってその国の人と3時間も話せる機会ってなかなかないと思うんですよね。
なるほど。その時の言語は英語が多いんですかね。
英語が多いですね。でも、夫は元商社マンなんですけどまったく英語が話せなくて、「This is おいしい!」とかそういうので押し通してますね(笑)
(笑) ボディーランゲージと片言の英語でなんとかなるもんですよね。
お二人以外も参加されることはあるんですか?
ありますよ。うちの社員だけじゃなくて、パートの方とか副業している方も参加してます。あとは地元の大学生とかも参加してくれていて、LINEを使って「明日どこどこで開催します」みたいな募集をしています。地元の人は500円で夕飯が食べられるのでお得ですし、ゲストの外国人も近所に住んでます!みたいな地元の人がいると喜んでくれるのでこみんぐる、地元の方、宿泊客の三方良しですね。
ー宿泊サイトをハックして集客を拡大、次は直接予約100%を目指す
短期間のうちに20棟以上を運営されるようになりましたが、部屋数も増えて呼べるお客さんが増えると、Booking.comだけじゃ予約が埋まらないと思うんですが、今はどんな集客状況なんでしょうか。
口コミだったりホームページにアクセスして直接予約してくれる割合が3割から4割。業界平均は1割にも満たないくらいなので高い方だと思います。あとは創業時から使っているBooking.comも直接予約と同じくらいの割合を占めていますね。そして残りを埋めてくれるのが楽天トラベルやじゃらんなどのOTA(Online Travel Agent)です。
OTAに依存せず、直接予約の比率が本当に高いですね。直接予約の比率がここまで高い理由って何なんでしょうか?
満足度が高いからかもしれません。1年前くらいから NPS(顧客満足度)アンケートをしっかりとっているんですが満足度は本当に高いんですよ。みんなで「リッツカールトンを超えるぞ!」って言ってサービスを提供しています。
リッツカールトンを超える…良いですね。たしかに、満足度が高くてリピーターの方の直接予約が増えるのは理解できたんですが、リピーターだけで毎日の予約を埋めるというのは現実的に難しいですよね。新規への対策などがあれば知りたいです。
一番になれる狭いカテゴリーをたくさん作っていくという方針で動いていて、それが功を奏して宿泊サイトで「ペットと泊まれる宿」とか「6人で泊まれる宿」とかを探すと旅音の部屋がいっぱい出てくるんですよ。それを見て旅音ってなんかすごい大きなブランドなんじゃないかって感じていただくケースは意外と多いかもしれません。「なんか部屋がいっぱいありますよね、どこがいいですか?」って宿泊サイトを見ている方から直接電話がかかってきてそのまま予約につながることも少なくないです。
大型のプラットフォームで認知を獲得している可能性がありそうですね。ニッチなセグメントに対して大量に部屋を用意して宿泊サイトの掲載結果を占領する、これは新しい考え方かも。
そうかもしれません。ニッチなセグメントでいうと、ぼくらはホテルが嫌う人・ホテルを嫌う人をターゲットと考えています。
ホテルが嫌う人というのは、 ファミリー層とか海外の方ですね。ファミリー層はお子さんの予測不能な動きと、海外の方は外国語での対応が大変だからです。あとはペットも禁止のホテルが多い。
ホテルを嫌う人というのも中心はやはりファミリー層です。乳幼児のいるご家族の方とかだとホテルのあの狭い空間が苦手だったりしますし、アレルギーがあるお子さん連れの方だとキッチン付きは自分たちで調理ができるので喜んでもらえていますね。
考え抜かれていますね。
はい。集客も、価格を下げたら当然稼働率は上がりますが利益は出せなくなる。宿泊ビジネスってどうしても宿泊サイトのプラットフォームに依存してしまうところはあるんですが、そこへの投資金額を増やしたところで必ず上位に掲載してもらえるわけじゃないし掲載基準もコロコロ変わるので、コンテンツの投稿頻度とかテクニック的な施策のPDCAと市場が狭くても一番になれるお客さんのニーズに応える努力を続けてきたんです。
まさにプラットフォームのハックですね。楽天市場のSEOみたいな感じ。
ただ、プラットフォームに依存するのって怖いじゃないですか。それこそおっしゃっていたように仕様がコロコロ変わったり突然値上げをされたりとかの可能性もあるわけですし。今後は直接予約を増やしていこうといったりはあるんですか?
実は、今後は直接予約を100%にするという目標があります。夫もどこかに依存するのが好きじゃないという話をしていましたが、宿泊サイトに依存しないようにしたいし、半年前からそういう話を社内でもしていて、あと2年以内に100%にしようと。
そのなかの一つの施策としてホームページを作り直しました。デザインの刷新だけじゃなくて、金沢関連のワードで検索結果の上位に上がってくるような記事を増やしています。
あとは個人的にnoteをはじめました。私たちは人をつなぐ商売をしているので、それじゃあこみんぐるの宿に行くと誰に会えるのか事前に知っていただいた方が良いなと。
そうですね。この人に会いたいから泊まりに行くっていうのは必ずあると思うので、こみんぐるの中の人を出していくのはすごく良いと思います。
ー金沢から北陸全体を元気にしていきたい
2年以内に直接予約100%という目標があるとおっしゃっていましたが、それが達成できれば結果的に利益率が上がるじゃないですか。空室率も改善すればさらに利益が上がって、またそれで新しい部屋に投資してっていう好循環が生まれる。いかにこの好循環を作り続けるかの勝負ですよね。一体どこまで目指してるんですか?
実は決めていて、増やしても80部屋くらいかなと考えています。オープンしかかっている部屋を入れると60部屋に達したので、あと20部屋ってところですね。100部屋を超えるのは全然いけるんですが、最近社員も増やしていて、研修もしっかりやっているので今は社内の強化に時間を使っていきたいなとは思っています。
80部屋が今の社員数で運営のクオリティを保てるギリギリのラインということですかね。
ですです。100部屋になっちゃうと清掃に回るのが結構大変なんです。あと市場的にもそれ以上の需要があるのか疑問ですね。金沢は宿の競争がどんどん厳しくなっていて、実際ゲストハウス系は空室が目立ってきています。
まったくそんなイメージはなかったですが、金沢に来る人が減っているということですかね?
減ってはいませんが増えてもいないんですよ。北陸新幹線の開通直後に一気に人は増えましたが、それ以降新幹線の乗客数は全然伸びていないんです。なのにドミトリーやゲストハウスは始めやすいのもあって数が増えすぎている。今年の夏が顕著で、最初一部屋3,500円くらいで売っていたあるゲストハウスが、繁忙期に一部屋1,800円まで価格を下げないと空室が埋まらなくなったんです。他にも大きなホテルがポンポン建ったことであきらかに金沢市内の稼働率が下がりました。
でもそれはずっとわかっていた話で、ゲストハウスの競争が厳しくなってみんなやめていくから、こみんぐるにとっては逆にチャンスだなと思っているんです。あと3年ぐらい我慢したらみんな撤退して、良い物件を安く買えたり運営できたりするかなと。
もう一つ追い風があって、金沢市が一棟貸しの宿に規制をかけようとしているんです。チェックインは必ず面会しないとダメとか、フロントにスタッフが常駐していないとダメとかですね。これは個人経営ではなかなか厳しい条件なので、こみんぐるにとってはすごくプラスな動きだなと見ています。だから今のうちに社内の体制をしっかり作っておきたいんですよ。
なるほどー!では、宿はひとまず80部屋まで増やすとして、ともだち業を名乗るなかで宿以外に今後予定しているビジネスもあれば教えて下さい。
あります。金沢って北陸のハブ的な役割も持っているので、私たちは金沢のためになることをやっているんですけど、金沢だけが良くなることばかりやっていたらダメだと思っているので、宿とか観光だけじゃなくて、たとえば地方での働き方とか住み方とか北陸全体で人とのつながりを広げていきたいなと思って動いてます。点と点をつなげて面にして、少しずつ面積を広げて北陸が全体的に盛り上がれば嬉しいです。
ー夫婦での経営について
最後に、夫婦お二人でのインタビューは初だと思うので、夫婦で一緒に経営をしていくうえでの良さや難しさみたいなところがあったら教えてほしいです。
良いところはやっぱり寂しくないところですね。創業者の方は孤独だって言われることも少なくないと思うんですが、私たちはパートナーと一緒にやってこれたので孤独は感じにくかった。しかも、お互いの強みが違うからというのもあって明確に役割を決めてきたので、あらゆることがものすごいスピードで進められています。
役割分担をきちんとしているんですね。
ぼくが拡散で、妻が収束(笑) お互いで補完し合ってやっています。
拡散と収束、このインタビューだけでもなんとなくわかります(笑)
仕事をするうえで夫婦で気をつけていることってありますか?
会社の中では喧嘩をしないとか、公私を切り分けるってことですかね。ぼくは会社に来たら「かなさん」って呼ぶんですけど、「かな」とか「かなちゃん」って呼ぶとプライベートと仕事を切り離せないし、自分の中でも切り替わらないし、それはすごく意識してやっています。
今後どうやっていくかみたいな経営の方針を考えるときに、夫婦でどうしても意見が合わないことはありますが、そういうときはファシリテーターとしてこみんぐるにジョインしてくれてる丸山さんに入っていただいてまとめてもらっています。
折り合うポイントを二人できちんと見つけているのはすごいですね。
ぼく自身が圧倒的に自分じゃ何もできないなって思っているのが大きいかもしれません。
そう、別のインタビュー記事で俊伍さんが同じようなことを答えていて、これを言える人ってなかなかいない、すごいなと思って印象的だったんですよ。
いつも近くにいる妻は頭が良いですし、ぼくは尊敬しているので、それが根底にあって自分は何もできないと考えているのかなと今なんとなく思いました。
パートナーに対しての尊敬があるから意見の食い違いがあってもバランスがとれるんですね。理想的な夫婦だ…
運命共同体感はすごいですね。創業当初に無収入でも一緒にやってこれたのも大きいかな。泥臭い気合と根性でやってきました。
いや本当に、最近どこでも言っているんですが、最後は気合と根性ですよね。アナグラムだと情報発信のコツとかよく聞かれるんですが、答えても実行する人はほとんどいなくて。時間がないなら寝ないでやればいいじゃんとまでは言いませんが、結局最後は気合と根性でやるしかないんだよとは話すようにしています。
うんうん。ぼくらも決断して気合と根性でやってきました。決断って、文字通り「決めて断つ」という意味ですけど、金沢に戻って起業する以外の選択肢を残していたら辛いときに逃げてしまったかもしれません。そう考えると、決断しろ!って言ってくれた名古屋の経営者の方には本当に感謝しかないです。
今回はこみんぐるが運営するcrasco旅音で取材と宿泊をさせていただきました。終始お二人の金沢愛が伝わってくる取材。創業時の失敗やプラットフォームのハックなど試行錯誤の賜物ではもちろんありつつも、やはり世の中のためになることを真っ当に続けている会社や人には、それだけ応援してくれるファンが集まるんだなあと改めて感じました。いくら社会のために何かしたい、恥ずかしくない生き方をしたいと心がけても、なかなかそこからブレずに会社を続けていけるものではありませんよね。まして創業時からそれを一貫しているお二人には本当に尊敬しかありません。今後は金沢に限らず、北陸全体を元気にしたいという展望もお伺いして、ますますこみんぐるを、林さんご夫妻を応援したくなりました。
文:秋山侑太朗
編集:阿部圭司/賀来重宏
写真:賀来重宏